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演説
杉浦副大臣演説

第58回国連ESCAP総会 日本政府首席代表演説

(英語版はこちら)

平成14年5月21日

1.冒頭

 議長、キム事務局長、代表各位並びにご列席の皆様

 私は、日本国政府及び日本国民を代表して、フセイン・バングラデシュ人民共和国財務・計画担当国務大臣が議長としての大役を果たされていることに対し、心からの敬意を表明いたします。
 また、今次総会の場を提供されたタイ王国政府並びに同国国民に対し、深甚なる感謝の意を表明するものであります。

 議長

 まず最初に私は、昨日、東チモールのディリにて行われた独立式典に参加したことをご報告したいと思います。私は、東チモール人の国造りに向けた努力を国際社会が支援していくことが必要であると信じています。また、アジア太平洋地域の一国として、日本が国際社会とともに(国造りに)協力できることも数多くあるでしょう。

2.アジア太平洋地域と日本の経済

 議長、

(1) 2001年のESCAP地域の経済は、急速に悪化しました。特にそれは、情報通信技術(IT)産業で顕著でした。しかしながら、中国のWTO加入といった、地域の経済にとって好ましい要素も見受けられます。

(2) 日本経済については、依然厳しい状況にありますが、底入れに向けた動きがみられています。

 日本政府としましては、不良債権問題の抜本的解決等、各般の構造改革への取組みを継続することにより、民需主導の持続的経済成長の達成が可能であると考えています。

 また今年1月にASEAN諸国を訪問した小泉総理は、「日・ASEAN包括的経済連携構想」を含む、5つの未来のための日・ASEAN協力に関するイニシアティブを提案しました。私はこのような新たな動きが日本経済のみならず、地域経済をも活性化することを期待しています。


3.グローバル化の時代の持続可能な社会開発

 議長、

 持続可能な社会開発を実現するためには、会議文書にあるように、貧困を削減し、雇用を拡大し、社会統合を進め、また情報通信技術を活用することが不可欠です。そこで今日は、グローバル化にも留意しつつ、「貧困削減」、「雇用拡大」、「社会統合」及び「情報通信技術」という4つの分野における我が国の取り組みにつき話したいと思います。

(1)「貧困削減」

(イ) 「貧困削減」のためには、先進国の支援と途上国のオーナーシップによるグローバルな取り組みが必要です。我が国は特に、教育、保健、環境といった分野で、重点的な協力を行っています。例えば、保健の分野において我が国は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の創設とその運営にあたって、2億ドルの拠出を表明するとともに、中心的な役割を果たしてきています。

(ロ) また、我が国は、1999年3月に国連に「人間の安全保障基金」を設置し、これまで約189億円を拠出してきました。その第一号案件が、地域住民の主体的取り組みによる貧困削減を目指す、ESCAPの人間の尊厳イニシアティブ・プロジェクトでした。

(ハ) 我が国は、貧困軽減には持続的な経済成長も重要であると考えます。ESCAP傘下のCGPRTセンターは、農業分野で、またアジア太平洋統計研修所(SIAP)は、その研修コースを通して、途上国による経済成長に向けた努力を効果的に支援しています。



(2)「雇用拡大」

(イ) 「雇用の拡大」に関しては、「観光」は雇用を創出する効果的な手段の一つです。我が国は、本分野でのESCAPの活動を高く評価すると共に、ESCAPが今後も、インフラ開発の観点も踏まえつつ、域内諸国の持続可能な観光開発を支援していくことを期待します。

(ロ) また、途上国が、WTOの枠組みに参加することにより、貿易・投資が拡大することも、「雇用の拡大」につながるでしょう。この点、我が国は、ESCAPが実施する、WTO加盟に向けた途上国政府担当職員の研修プロジェクトを支援してきました。


(3)「社会統合」

(イ) 障害のある人々による社会参加を促進することは、「社会統合」の重要な側面であり、それは結局、社会開発を持続可能なものとします。

(ロ) 日本政府は、「アジア太平洋障害者の十年」以前もまたその開始以来、国の内外で、障害のある方々の福祉を推進してきました。その一環として、我が国は、本年10月に、西日本に位置する滋賀県大津市にて(ESCAPの)「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合をホストします。また、その直前に、第6回障害者インターナショナル(DPI)世界会議札幌大会、「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議、及び第12回リハビリテーション・インターナショナル(RI)アジア太平洋地域会議も日本で開催されます。
 私は、多くの代表に、これらの会議にぜひ参加していただきたいと思います。また、これら一連の会議の連携が実を結ぶことを期待します。

(ハ) また我が国は、思うように推進できなかった分野に引き続き取り組むため、「十年」の延長を提案する決議案を今次総会に提出しています。私は、皆様のご理解・ご協力の下、本決議案が全会一致で採択されることを望む次第です。

(ニ) さらに我が国は、今次「十年」の成果として、広くアジア太平洋諸国の障害者のため、「アジア太平洋障害者センター」を2004年を目標にこのバンコクに設立すべく様々な支援を進めてきています。


(4)情報通信技術(IT)

 議長、

(イ) 今日のグローバル化の急激な進展の背景には、情報通信技術(IT)の急速な発展が有りました。しかしながら、国際社会は、デジタル・ディバイド(情報の格差)による経済格差の拡大といった課題に直面しています。

(ロ) 我が国は、この分野でもイニシアティブを取っており、昨年10月に、国連開発計画(UNDP)の情報通信技術基金に500万ドルを拠出しました。また2003年12月及び2005年には、国連世界情報社会サミットが開催され、格差の無い理想的な情報社会に向けた宣言及び行動計画につき議論される予定です。我が国は、本サミットの重要性に鑑み、その準備段階から積極的な役割を果たしていく所存です。


4.持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)に向けた準備

 議長、

 環境問題は、今日の世界経済を持続可能なものとするために対処すべき最も重要な問題の一つです。

 我が国は、本年夏に南アフリカ共和国で開催予定のWSSDに向けた地域準備プロセスにおいて、ESCAPの果たしてきた役割を評価します。我が国は、引き続き、WSSDに向けた準備プロセスに積極的に参加していく所存です。

 わが国はまた、公害を克服した経験・技術を、北九州イニシアティブ・ネットワークや北東アジア環境協力プログラム(NEASPEC)の活動を通じて、域内各国・都市と共有・移転していきたいと考えます。我が国は、ESCAPが、これらの活動を当該地域からWSSDへのインプットとしてアピールしていくべきと考えています。

5.グローバル化とESCAPの再活性化

 議長、

 私は、ESCAPを「再活性化」するためには、ESCAP事業の焦点を絞り、そのインパクトを強めることが肝要とする、キム事務局長のビジョンを支持します。また、同事務局長が、事務局の比較優位と地域諸国のニーズを考慮し、その3つの優先事業分野の一つとして「グローバル化対策」を挙げたことは、真に時宜に適った判断であり、評価したいと思います。

 我が国は、今次総会にて、上記3つの優先事業分野に対応した新会議構造案に関する決議が採択されるべきと考えています。

 我が国は、今後ともESCAPに対し、できる限りの支援を行っていく所存ですので、ESCAP事務局に対しては、限られた資源の更なる有効活用及び透明性の高い運用を要望する次第です。

6.おわりに

 議長、最後に、私個人の経験についてお話しさせて下さい。

 私は、今から40年以上も前、東京大学の生徒であった時、留学生、特にアジアの留学生の方々のお世話を始めました。戦争で荒廃した日本に何故アジアの若者が勉強しに来る気になったのか興味を持ったからでした。このアジアの友人との長いつきあいを通じ、私は、日本はアジアの真の一員であり、真に平等なパートナーシップに基づきアジアと共に生き、考えることが大切だということを体得しました。

 今年1月、シンガポールにて演説した小泉総理は、東アジア地域における「共に歩みともに進むコミュニティ」の構築を強調しました。また先月のボアオ・アジア・フォーラムで小泉総理は、西アジア、中央アジアを含む広いアジアの協力を呼びかけました。

 このように、日本政府としても私が体得したのとまったく同じ考えであり続けることをここに改めて表明し、私の演説を終えたいと思います。私はまた、この点で、ESCAPが重要な役割を果たすよう強く希望する次第です。

 ありがとうございました。


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