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演説
植竹副大臣演説

第2回G8ハイテク犯罪対策・官民合同ハイレベル会合(東京会合)
植竹繁雄外務副大臣基調演説

平成13年5月24日
於:東京

(はじめに)

 議長、G8各国の政府代表、諸国際機関の代表、G8各国産業界の代表、及びご列席の皆様、

 今般、ここ東京に皆様をお迎えし、国際社会の現下の重要な課題となっているハイテク犯罪について討議する機会を持つことができましたことは、我が国にとり大きな喜びであります。

(ハイテク犯罪問題についての現状認識)

 ITの有用性・将来性には疑問の余地はありません。ITの発展が人類にとり明るい未来をもたらすものと我が国は確信しており、昨年の九州・沖縄サミットにおいて我が国が採択に尽力した「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」では、ITは21世紀を形作る最強の力の一つであると高らかに宣言されました。
 また、先般の小泉総理の所信表明演説におきましても、我が国として更にIT振興に努力することを明らかにしました。

 他方、光ある所には、必ず陰が存在します。ITの「陰」とは、皆様方が日夜対策に腐心しておられるハイテク犯罪の存在であります。  ハイテク犯罪は個々の犯罪被害者に損失を与えるのみならず、IT自体の信頼性・可能性を損ない、人類の未来に大きな損失を生み出すものです。

 しかも、ハイテク犯罪は、ITを用いての旧来型犯罪、例えばインターネットを通じた詐欺や有害情報の頒布、著作権等の知的財産権侵害のみならず、ハッカーによる不正アクセス、ウィルス等を用いたデータ破壊、システム自体への攻撃・破壊、といった具合に、広範にわたっています。
 そして、ITの発達は、ITの悪用の危険をも増大させており、今後、新たな問題が生まれてくる可能性は否定できません。従いまして、ハイテク犯罪に対しましては、不断にこれらの問題についての認識を深めるとともに、広範な議論に立脚した上で、対策をとることが求められていると考えます。

 こうしたハイテク犯罪の脅威が、ITの有用性・将来性を無にする前に、早急な対応・対策をとることは、各国政府、産業界、そして、ITの主役ともいえるユーザーを含む全ての関係者の共通した利益であります。
 そして、効果的な対応のためには、これら全ての関係者の協力と連帯が不可欠であります。こうした認識に基づき、昨年のG8沖縄コミュニケにおいて、G8首脳がハイテク犯罪に関する政府と産業界との対話の重要性を強調し、今回の東京会合に対する期待を表明した次第です。

 もちろん、ITの信頼性を高め、その可能性を最大限に引き出すためのハイテク犯罪対策が、かえってITの使い心地を悪くし、ITの発展の芽をつぶすことにならないよう留意する必要は大きいと言えます。
 この点で、ハイテク犯罪の「取締り」とともに、ハイテク犯罪自体が起こることを未然に防ぐ「予防策」も併せて重要であると強調したいと考えます。

 また、いかなる対策を選択するについても、関連するあらゆる社会的価値・諸要素、例えば、公共の安全、プライバシー、通信の秘密、基本的な法原則との整合性、産業界・社会全体に対するありうべきコスト等との間で、適正なバランスを確保することが重要です。そのバランスを図るためには、官民対話は極めて有効な手段であり、ここに、今回の会議の意義があると考えます。

(これまでの国際的な取り組み、殊に産業界との協力の展開)

 ハイテク犯罪対策の重要性については、つとに指摘されているところであります。

 その文脈の中で、政府と産業界との協力の重要性も指摘されてまいりました。97年にワシントンで開催されたG8司法・内務閣僚級会合のコミュニケに続き、98年には、バーミンガム・サミットにおいて、首脳レベルで初めて、政府と産業界の協力の重要性が言及されるに至りました。
 99年10月のモスクワG8司法・内務閣僚級会合でも、官民協力の重要性は、引き続き強調されております。この流れは、2000年5月のパリでの第1回のハイテク犯罪対策官民合同ハイレベル会合、10月のベルリン官民合同ワークショップ会合へと受け継がれ、今回の東京会合へとつながっております。
 今までのこれらの会合の議論の上に、今次会合での議論が、新たな展開を生み出すよう期待したいと思います。

(日本の具体的努力・展開)

 我が国は、昨年7月の九州沖縄サミットで、ITに更に力を入れることを表明いたしました。これを受け、我が国は、昨年「電子署名法」を、本年1月には「IT基本法」を制定し、IT社会に向けての法整備を進めております。IT基本法では、国際協調・国際協力も、重要な柱の一つとして位置づけられております。
 九州沖縄サミットでは、国際的なデジタル・ディバイドの解消を目指す組織である「ドット・フォース」の設立も決まりましたが、その「ドット・フォース」の第一回会合を、昨年11月に東京にて開催することができましたことは、我が国の喜びとするところであります。

 また、今月初頭には、小泉総理が、その所信表明演説において、「e-Japan重点計画」を着実に実行し、併せて、「IT2002プログラム」を作成する旨を明らかにいたしました。この総理自らの主導に従い、我が国は、今後ともますますIT振興に力を入れていく考えであります。

 ハイテク犯罪対策の面でも、我が国は、法整備、法執行体制の整備に努めております。
 法整備に関しましては、99年には「不正アクセス禁止法」を制定いたしました。更に、現在開会されております国会では、個人情報保護法とともに、支払いカード偽造などの犯罪に関する刑法の改正に関する審議が予定されております。
 また、警察内部にサイバーポリスと呼ばれる体制が整備されました。各都道府県警察には、プロバイダ連絡協議会が設けられるなど、産業界との協力関係も構築されております。

 日本は、実効性のあるハイテク対策を着実に進めるべく、努力しております。

(今回の会合に期待すること)

 ハイテク犯罪対策には、政府と民間の協力と意志疎通が重要であります。今回の東京会合におきまして、官民双方の忌憚のない意見交換の結果、官民相互の信頼と理解が更に深まるものと期待しております。

 ハイテク犯罪は、複数の国を経由して行われる可能性があります。このような犯罪を防止し、取り締まるには、国際社会が協調して対策を講じなければなりません。G8諸国には、そのような国際協調の先陣を切ることが求められていると考えます。

 他方で、G8諸国は、それぞれ異なる国内法制や様々な慣行を有しており、議論を進めるにあたりこれに十分考慮を払う必要があると考えます。
 また、現在及び将来の技術水準に立脚した議論を進めることも必要です。これらの法的・技術的な側面についての相互理解を深めつつ、国際的な協調を強化すべく議論を深めていくことが強く望まれます。

 こうした機会を通じて、有益な議論を展開し、それをG8内、更にはその他の諸国にまで広めていくことは、ハイテク分野でも先進国である我々G8の連帯事業であると考えます。

 今次会合の成果を踏まえ、G8各国内で、更には国際的なフォーラムで、できる限り多くの機会をとらえて、官民で協力しつつハイテク犯罪対策が進められていくことを強く祈念したいと思います。

(終わりに)

 この2日間、有益な議論がここ東京で行われましたことは、我が国にとり大きな喜びであります。
 そして、その議論が本日の全体会合によって更に深められ、成果を生み出されることを、日本政府として心より願っております。

 ご清聴、ありがとうございました。



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