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第四部 核軍縮の達成

  1. 核兵器の使用のもたらす結果は壊滅的であり、その影響は長期間に及ぶ。広島と長崎が被った壊滅的影響とその回復のための苦闘を、他の如何なる都市も経験することがあってはならない。大量破壊兵器の廃絶は、国際社会の長年の目標である。96年のキャンベラ委員会報告書の公表以降、多くの変化があり、核廃絶に向けた見通しは暗くなっている。国際社会は、核拡散の危険と核軍縮に向けた挑戦のいずれを選ぶかの分岐点に立っている。しかし、我々はそこにたたずんでいることはできない。

  2. 今後の核軍縮に向けた展望は、核不拡散の取組の成否に分かち難く結びついている。核軍縮に向けた動きがなければ、不拡散の規範は弱まらざるを得ない。他方、不拡散における成功がなければ、核兵器廃絶という目標の達成もおぼつかない。NPTにおける核兵器国と非核兵器国間の中核的合意は強化されなければならない。さもなければ、21世紀において更なる核拡散が進み、核兵器の価値が再び見直されてしまうであろう。

  3. 核兵器国は、条約上、核弾頭の削減及び廃棄を段階的に進める重大な義務を負う。同時に、非核兵器国もNPT体制をより強固に堅持する義務を負っている。具体的には、CTBTの速やかなる発効のための措置を講ずること、FMCT締結に向け至急取り組むべきこと、強化されたIAEA保障措置の受入れ等が、NPT体制強化に貢献し得る。このように、東京フォーラムは、すべてのNPT加盟国に対して、NPT上で核兵器国と非核兵器国が行った基本的な約束に関して、改めて忠誠を誓い、実行していくよう求める。

  4. 核軍縮の中心的な問題は、核抑止或いは核廃絶が国家や地域、或いは国際社会の安全保障を増進させるのか否かである。核兵器国は自国の安全保障が核兵器保有により強化されると主張する。しかし、かかる核兵器国の姿勢が、対立する国々の大量破壊兵器保有に走らせ、核兵器国や周辺非核兵器国の安全保障の悪化を招いてきたのかもしれない。国家、地域、国際社会の安全保障は核兵器の保有によって強化されることはなかった。

  5. 核兵器維持論者の一部は、核兵器が、核及び生物・化学兵器の使用或いは通常兵器による大規模な侵略を抑止すると主張する。東京フォーラムは、核兵器が廃絶されるまでの間、核兵器の持つ唯一の機能は、核の使用を抑止することに限られると信ずる。しかし、この中核的機能も暫定的なものであり、国際司法裁判所が全員一致で確認したように、「核軍縮に向けた交渉を誠実に追求し、これに結論をもたらすための」取組みが同時になされなければならない。

米・ロ核兵器削減の再活性化

  1. 東京フォーラムは、93年以降、米ロ間で正式な核兵器削減交渉が進んでおらず、また非公式協議も限定的かつ散発的にしか開かれていない事態を憂慮する。東京フォーラムは、米ロ両国に対し、国際安全保障、軍備管理・軍縮に関して新たな定期的かつ包括的な協議を開始するよう要求する。この協議は、戦略・非戦略の別を問わず、全ての核兵器、ミサイル防衛、更には、以下に述べる核の危険を低減するための諸措置を対象とすべきである。

  2. 米ロ間の戦略核兵器削減を再活性化するための創造的な方法が求められている。両国が批准したSTARTIは、更なる戦略核弾頭の削減にも適用可能な監視取極めが含まれている。しかし、6年以上前の93年1月に調印されたSTART IIは未だ発効していない。START IIに続くSTART IIIに係る二国間交渉に関しては、一連の意欲的な協議目標の概略はとりあえずまとまってはいるものの、米ロの正式交渉は開始されていない。条約締結・実施は、両国による付帯条件、両国間の政治的対立により阻害されている。仮に、ロシア国家院がSTART IIを批准したとしても、同国による条約の履行は、米国上院が現行ABM条約の維持に同意することが条件となる可能性があり、これは決して保証されていない。

  3. START IIが未批准のまま時間が経過すればするほど、本条約の意義は減ずる。今後10年乃至15年間にロシアの配備済み戦略核弾頭数は減少すると広く予想されており、その水準はSTART IIで合意した水準以下になるばかりか、START IIIの目標水準の半分以下になるであろうと言われている。80年代にロシアが大量に製造した核軍備は全体的に老朽化しており、ロシアにはかかる大規模な核軍備を展開しておく資金はない。老朽化による減少数にはるかに及ばない削減数を規定している条約の批准・発効を待つことは、増大した核の危機への対応としては不適切である。

  4. 米ロは、START IIとSTART IIIの一体化、START IIIの削減目標を野心的に高めるよう検討することが有益とも考えられる。これら条約の正式な批准を待ちつつも、東京フォーラムは、米ロ首脳に対して、同時並行的な配備核兵器の解体を通じて、核兵器削減を即座に始めることを求める。フォーラムは、両国がこのようなプロセスを以て、戦略核兵器用運搬手段に搭載された核弾頭数を1000発迄削減する旨表明することを求める。正式な条約により、この表明を追認することも考えられる。現状は、条約そのものが核の危険削減の進展を遅らせているのであって、問題解決に資するどころか問題そのものの一部になってしまっている。フォーラムの提案するプロセスは、核の大幅削減の障害である条約批准問題を解決するものとなろう。

即時警戒態勢の解除

  1. 核兵器肯定論は、殆どが時代遅れであり、いたずらに核の危険を高めている。冷戦終結にも拘らず、米ロの核目標に関する政策や警戒態勢がほとんど変わっていないのには驚かされる。両国とも数千基とは言わない迄も数百基の核兵器が即時発射態勢にあり、広範な目標に対し多数の核兵器を以て攻撃する態勢を維持している。これら目標の必要性及び高度な警戒態勢は、核抑止および拡大抑止の理論では十分な説明ができず、国際社会の大きな懸念材料となっている。

  2. 警戒態勢の見直しは特に喫緊の課題である。それは、両国において、多くの核兵器が警戒態勢にあるのみならず、国内に困難な問題を抱えるロシアにとり、核兵器に関する指揮・命令系統が今後数年間で更に大きな問題となるためと考えられる。米ロの警戒態勢の水準は相関関係にあることから、より安全な核態勢を取るためには協調的なアプローチが必要である。東京フォーラムは、米国が早期警戒システムをロシアに供給するとの提案を改めて行い、ロシアがこの支援を受けるよう求める。また、フォーラムは、両国が緊密に協力し核兵器の警戒態勢の水準を劇的に低減するよう求める。

  3. 核兵器の即応態勢の全面解除は、核兵器全廃という目標実現に不可欠な一歩である。この10年間にある程度の進展がみられた。米国は全爆撃機の警戒態勢を解除しており、英仏は各々弾道ミサイル搭載潜水艦を一隻のみとし、加えて、発射態勢も大幅に緩和した。中国は、即応態勢よりやや低い状態で核兵器を維持しているという。しかし、なすべきことはまだまだ多い。

  4. 米ロ両国は、複数核弾頭を搭載した地上発射ミサイルを全廃するSTART IIに調印した。東京フォーラムは、両国首脳に対して、同条約発効迄の間、可能な限り速やかに当該核戦力の警戒態勢を解除することを検討し実施するよう求める。東京フォーラムは、仮に、START IIに基づく警戒態勢解除がロシア側に不利であるならば、両国首脳に対して潜水艦搭載核弾頭を含めた警戒態勢解除により右目標を達成するよう求める。なお、その際、潜水艦搭載核弾頭の削減が米国に不利に働くことに留意する必要がある。また、警戒態勢解除の検証措置をどのようにするかにつき議論がなされ実施されるべきである。

  5. コンピューターの2000年問題で偶発的な核兵器の発射事故が発生し悲惨な結果が発生しないよう、東京フォーラムは、核兵器の指揮・管理・警戒システムに関するリスクが起こり得る期間は、核兵器の警戒態勢を全面解除するよう緊急提言する。

先制不使用

  1. 核兵器先制不使用の誓約は、それが核兵器の突出した役割を低減し、他の大量破壊兵器の使用を促すことにならない限り有益であろう。しかし、米国の同盟関係とロシアの軍事的難局、とりわけNATOとロシアが核ドクトリンにおいて先制使用のオプションを維持している限り、その誓約に関する交渉は複雑なものとなろう。さらに、過去行われた先制不使用の誓約の中には信頼できないものがあった。核ドクトリンが変更され、透明性の一層の向上と警戒態勢の緩和を確認しうる検証可能性が強化されなければ、誓約のみでは信頼性を欠くであろう。NATOは先制不使用のオプションを見直す体制をとりつつあるが、効果的な先制不使用のコミットメントを実現させるためには、詳細な協議と更なる努力が必要となろう。東京フォーラムはそのような努力を賞賛する。

その他の核兵器

  1. 英仏は配備されていない核兵器を貯蔵してはおらず、他方、中国の未配備核兵器の貯蔵量に関する情報は入手できないでいる。米ロは未配備核兵器を大量に貯蔵している。米国政府は、この大規模な予備軍備を、敵対的なロシアの復活に備えるための「保険」であると説明している。他方ロシア政府も、膨大な戦術核兵器の保有を、通常兵器の弱点とNATOの復活に対する保険政策だと説明している。配備戦力を補完する膨大な軍備の維持は冷戦の遺物である。何故膨大な数の核兵器が必要かにつき、辻褄のあう合理的な説明をするのは難しい。たとえ、米・ロ関係が、新しい冷戦状態にまで悪化したとしても、数千発の核弾頭を両国はどのように使うのであろうか。東京フォーラムは、米ロが、未配備核兵器の「保険」量を検証可能な方法で、漸進的に削減し、廃絶するための協議を可能なかぎり早期に始めるよう求める。

  2. これ迄長きに亘り、無視されてきた戦術核兵器の問題がより多くの関心を集めつつある。99年のNPT準備委員会においては、多数の国が戦術核兵器の軍縮が喫緊の課題である旨表明した。こうした傾向は戦術核兵器に関する関心が高まっていることを如実に示している。戦術核はロシアの核ドクトリンにおいて再評価されており、このことは99年4月29日のロシア安全保障評議会における決定、West99として知られる軍事演習等、最近のロシアの動向に反映されている。99年7月の中国による中性子爆弾の保有宣言もまた注目される。米ロにより91年10月に発表され、92年1月に確認された一方的かつ相互的な戦術核の削減政策は、透明性を保ちつつ、逆戻りしないよう実施されなければならない。中国が戦術核兵器について更なる情報を提供すればそれは歓迎されるであろう。より一般的には、検証可能な削減と廃絶が戦略核にとどまらず戦術核にまで速やかに拡大されるべきである。

  3. 戦術核に伴うテロや核拡散の危険は高い。戦術核は比較的盗み易く、旧型戦術核は、指令に基づかない使用を防ぐ措置も十分厳重ではない。現在世界に貯蔵されている核の半分以上が旧型戦術核兵器である。これらの貯蔵を減少させるプロセスは、米ロ間において、検証はされないが、実質的な削減から始まった。仏も戦術核保有量を削減したし、英国は廃絶を決定している。東京フォーラムは、戦術核の削減・廃棄は戦略核と並行して進められることが可能だし、それを確保すべく緊急の措置がとられるべきであると信じる。

多国間による核軍縮

  1. 米ロの戦略核を1000基の配備弾頭迄段階的かつ、不可逆的に削減するには、10年、或いは恐らくそれ以上かかる。未配備核兵器の廃絶は更に時間がかかる。米ロは二国間での削減を加速化するべきであるが、他の国はいかなる責務を負うのであろうか。東京フォーラムは非核兵器国に対し、核兵器を取得しない義務を引き続き尊重すると共に、核不拡散体制を支えるためのイニシアチブをとるよう求める。NPTで認められているその他の3つの核兵器国も、「核軍縮につながる交渉を誠実に行い、終結させる」という重要な義務を負っている。東京フォーラムは最初のステップとして米ロが核を削減している間、英・仏・中が核を増大しないことを求める。NPTではイスラエル、インド、パキスタンは核兵器国とは認められていないが、これらの国も、核能力を増強し、核兵器の漸進的削減と廃絶を困難にすることのないよう義務を国際社会に負っている。

  2. 英仏はそれぞれの核戦力を削減し、警戒態勢を緩和してきた。両国のとった透明性措置により、両国が公表した配備兵力削減が既に実施済みであることが再確認された。公表されている報告書によれば、英仏の核保有量は核兵器国の中で最も少ない。5核兵器国の中では、中国の透明性がもっとも低く、核軍縮についての情報は西側情報筋から流れてくる。東京フォーラムは、中国を始め、米・ロ・英・仏に対して、それぞれの核政策やドクトリン及び核軍備の規模を透明にするよう求める。

  3. 近年の重要な核軍縮研究の多くは、米ロ間の配備核弾頭が1000のレベル迄削減した時点から、二国間だけではなく、多国間で核保有量を漸進的に削減していくことを提唱している。核軍備の構築に大変な作業と資源を必要とするように、核兵器を削減し、その役割に関する政策を変更し、また最終的にそれを廃絶するのにも同様の努力が必要である。五核兵器国によるハイレベルの政治協力が、あらゆるレベルの核軍縮に欠かせないことは明確である。これを進める一つの方法として、5か国が各段階で、同時に核保有数を半減させるか、あるいは比例的に削減していくという原則に基づいて条約交渉を行なうことが考えられる。この原則は、五か国全てが、一斉にゼロに削減する最終段階までは、各国とも残りの核兵器を保有し、基本的には各国の相対的な核能力を変更しないという点で公平なものであろう。また、もう一つの方法としては、核戦力が技術的に意味を失う水準以下の最小限の数に合意し、この水準まで削減し、その後全ての国がゼロにするということが考えられる。全ての核兵器国による核廃絶の一歩手前までの検証可能な段階的削減のプロセスは、核廃絶論者も核抑止論者も共に認めることができ、全ての国が共通の安全保障上の利益を得ることができる目標である。

軍縮努力の再活性化

  1. 東京フォーラムは、CTBTに署名し、批准していない全ての国に対して、緊急に署名し、批准することを求める。米国、ロシア、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮など条約の発効にその批准が要件となっている国は、批准を速やかに行う特別な義務を負っている。核実験の停止が、条約発効が確保されるまで維持されるかどうかはわからない。一国による新たな核実験は、別の国による核実験の連鎖につながり、核の危険性を大幅に増大させる。全ての国は核実験の停止を尊重しなければならない。CTBTの発効迄の間、東京フォーラムは、全ての国に対して、核実験監視制度のための十分な資金拠出とその実施を行なうよう要請する。

  2. 東京フォーラムは、未臨界実験がCTBTの目標と目的を損なうか否かという点について存在する懸念に留意する。この懸念を緩和する方策が探られるべきである。例えば暫定的な措置として、未臨界実験が条約の目標と目的に抵触していないかどうか確認するための実行可能な監視・透明性確保のメカニズムを導入することが考えられる。これは、このような実験を実施している国の間で相互に監視することによって、実施することができるかもしれない。

  3. カットオフ条約は、50年代以来、核問題の交渉議題となっている。この条約は核軍縮には不十分であり、核不拡散には重要ではないと考え、その有用性に疑問を持つ向きもいる。東京フォーラムはこの懐疑主義に同調しない。核問題の交渉の進展は、一歩一歩着実に進める仕方で達成されてきた。カットオフ条約は、核分裂性物質がもたらす危険に対処するために欠かせない一歩であるとともに、核分裂性物質主導による軍縮プロセス推進のため重要な要素である。他方、兵器用核分裂性物質の漸進的削減と廃絶を進めるためには、フォロー・アップも必要となろう。東京フォーラムは、95年のNPT再検討・延長会議によって付託されたカットオフ条約の速やかな締結を強く求める。

  4. 核軍備および核弾頭から取り出された核分裂性物質の透明性を向上させる為に、国際社会が果たすべき役割もある。この関連で提案されているのは、検証可能な核兵器登録制度がある。核兵器の数と種類、運搬手段に装着されているのか、貯蔵されているのかなど、登録制度に含める項目を決定するため、専門家グループに委託するのが良いかもしれない。戦術核や予備の核弾頭も、これに含められるかもしれない。登録により、新規削減数の計算のため基準となる初期値が明らかとなろう。国連軍備登録制度同様、参加国が毎年、変更数を申告するのも有益であろう。東京フォーラムは国連総会が、核兵器登録制度の実現可能性を調査する権限を事務総長に与えることを求める。

  5. 東京フォーラムは、民生用、軍事用に生産された全ての核物質の検証可能な登録制度も重要と考える。我々は解体された核弾頭から出るすべての兵器級プルトニウムおよびウランをIAEAの保障措置のもとに置くことを強く求める。核兵器開発能力を持つ国がそれぞれの保有量を公表することによってのみ、核分裂性物質の効果的な監視が可能である。効果的な管理のためには、組織的かつ秘密裡の違反を探知するための徹底的な査察を実行する権限をIAEAに付与することが必要である。

  6. 米ロ関係、米中関係の悪化、NPTにおける新たな緊張、CTBT採択以来の軍縮会議の非効率性に直面し、核不拡散・軍縮努力を再活性化するために全ての国が更なる努力をすることが必要である。東京フォーラムは「新アジェンダ連合」による最近の努力が、核抑止論と期限付き核廃絶論の二つの神学論争にはまり動きがとれなくなっている多国間の議論の場に新たな刺激を与えたことを評価する。東京フォーラムは核不拡散・軍縮を促進させるための非政府組織(NGO)の努力についても評価する。「中規模国家勢力」とNGO間の創造的な連携は、核軍縮において現在欠如しているリーダーシップを提供しよう。

  7. 核不拡散・軍縮の努力は、多国間機構、とくに軍縮会議の再活性化によって大きく実るであろう。軍縮会議は、その手続規則を改訂し、その作業計画を一新し、目的ある活動を実行すべきであり、さもなければその活動を中止すべきである。軍縮会議は時代遅れの議題に固執しているが、コンセンサスが得られないため、これらを変更できないでいる。些細な手続き事項にまで適用されるコンセンサスルールが、長引く行き詰まりの原因となっている。多国間条約の協議開始、あるいはその終了のために、軍縮会議参加国の全会一致は必要ではない。もし条約に納得できない国があれば、その国は調印しなければ良い。冷戦時代の同盟関係を反映した時代遅れのグループ分けも、現在の世界情勢をより良く反映すべく変更される必要がある。

  8. 東京フォーラムは、一部の国が核兵器廃絶条約の早期交渉を重視していることに留意する。この条約の有用性は、その内容である核軍縮実施の誓約が果たして核軍縮を加速させるかどうかにかかっている。NPTは核軍縮の誓約を含んでいる。しかし、その実施は順調だったとは言わず、最近は満足できないものである。東京フォーラムは核の危険が増大する時代にあっては、行動が言葉や誓約よりもはるかに重要であると考える。このように、東京フォーラムは、この時点において、核の危険を漸進的に低減させ、廃絶するための具体的な一歩を特に強調する。

ミサイル防衛

  1. 今後配備が見込まれるミサイル防衛は、核不拡散・軍縮に重要な意味をもっている。米国におけるミサイル防衛は、国際関係及び軍備管理努力を複雑なものにしている。中国及びロシアもミサイル防衛システムに否定的に反応している。英仏も、それぞれの核抑止戦力の価値を低下させるミサイル防衛を懸念している。確かに一方で核拡散はミサイル防衛が必要であるとの認識を高め、ミサイル防衛が不在であれば拡散が促進されるかもしれない一方で、ミサイル防衛は拡散の危険性を一層高める可能性もある。

  2. 東京フォーラムは、如何なる将来のミサイル防衛も、これらの複雑な要素に敏感であるべしと考える。同時に、大量破壊兵器の使用能力を有する国は、他国の持つ固有の自衛権を否定する権利を与えられるべきではない。さらに、ミサイルを拡散した国は、ミサイル防衛に反対する資格はない。ミサイル防衛が、ある国家からの強制への対抗及び同盟関係の強化に一定の役割を果たす時期があるかもしれない。同時に、ミサイル防衛の開発と将来の配備は、核の価値を漸進的に減少する政策と調和を図りつつ進めるのが良い。

  3. 東京フォーラムは、一方的措置では、核の危険を全面的に低減させることはできないことを十分に認識している。米国の一方的なミサイル防衛への取り組みは、「アメリカ要塞」を形成するとのメッセージとして受け取られ、同盟関係を弱体化しかねない。ミサイル防衛は、核不拡散・軍縮規範に代わるものとして捉えられるべきではない。したがって、協調的脅威削減の努力は、強力に追求されるべきである。この努力に成功すれば、攻撃的ミサイルやあらゆる種類のミサイル防衛の開発・配備に向けた誘因を漸進的に減少させることができよう。輸出規制が強化され、或いはミサイル発射実験や配備が抑制されれば、国家ミサイル防衛が必要だとの認識が低下すことにもなろう。

  4. 北朝鮮がミサイル計画を破棄し、ミサイル輸出を中止すれば、大変良い影響が出てこよう。さらに、ミサイル防衛が、偶発的或いは指令に基かないミサイル発射への対抗を意図している限りでは、ロシアの核戦力の警戒態勢の緩和、および指揮・命令の確実性を高めることが、ロシアにとっても重要であるばかりか、米国においても国家ミサイル防衛の必要性を低下させることになろう。

  5. 協調的脅威削減努力が成功しなければ、また弾道ミサイルによって運搬される大量破壊兵器が引き続き各国の脅威であれば、その対応策としてミサイル防衛を除外することはできない。もしこのような状況でミサイル防衛が配備されるのであれば、その配備は、核の危険性を削減するための他のイニシアチブとともに、極めて慎重に行われなければならない。もし懸念の原因が緩和乃至除去された場合は、防御的配備の規模を縮小、あるいは全廃し得る可能性を残しておくのが賢明であろう。

検証

  1. 核軍縮が効果的に進むためには、全ての核兵器の生産から廃棄に到るプロセスの監視と透明性が確保される必要がある。米ロの核弾頭の削減は重要な進展をみせているが、これが後戻りしないために不可欠な透明性を確保する上で必要な施策が未だに取られていない。東京フォーラムは核兵器能力を有する全ての国が核監視措置、透明性確保、信頼醸成措置を受け入れることを求める。他国の軍備規制違反が探知されず、自国の安全保障が危機にさらされていると考える国は、核兵器の大幅削減に同意しないであろう。これは、核廃絶の最終段階においてはなおさらであろう。

  2. 核兵器計画は多くの点で高度な機密を含んでいる為、核軍備の規模や廃棄に関する宣言の検証は困難である。検証方法を効果的にするためには、兵器用に製造された核物質の総量についての機密性、不確実性に配慮せねばならない。従って、安全保障上の懸念、秘密性、不確実性は、核兵器削減・軍縮の検証の精度の高さが最重要課題であることを意味する。

  3. 一点に絞った、或いは狭い範囲に焦点を当てた検証システムは十分なものではない。包括的な検証システムが必要であり、それが違反行為の発生について早期の警告を発したり欺瞞行為の探知に役立つであろう。最も効果的な検証システムは様々な技術の組み合わせ、国際機関の役割、国家の技術的手段、透明性や信頼醸成措置を統合して相乗効果を生み出すものであろう。このような検証システムは、弾頭、運搬手段から核分裂性物質にいたるまでを検証対象とするものである。

  4. 探知・査察技術の開発により検証システムを改善する一方で、政治的要因が厳格な検証を脅かし、弱めようとしている。これはUNSCOM及び化学兵器禁止機関(OPCW)との関連で明らかである。米国や他のCWC加盟国による国内の実施取り決めの中にはCWCの実施規定を弱めるものがあり、これは将来の世界的な軍縮合意にとって懸念材料である。CWCとBWCの検証強化は全ての大量破壊兵器廃絶に向けた世界的な努力の為に不可欠である。欺瞞行為を探り、核の危険の漸進的な低減と廃絶を可能にするために、監視と政治的な意志が相携えていく必要がある。この二つが政府と国際機関の協力も含む形で一貫した方法で適用される必要がある。

  5. 米ロ間の核兵器削減或いは制限条約とその検証システムは、将来核軍縮を検証する際価値ある教訓を含んでいる。それによれば配備された大量の核兵器を信頼のおける仕方で検証することが可能であるが、その為に政治的・技術的な努力と資源が必要である。但しこれらの検証措置は、核弾頭より運搬手段に焦点を当てたものであった。

  6. 配備された核兵器の検証・監視措置は核弾頭の管理にまで及ばねばならない。核兵器は軍事的、政治的に極めて機微なものであり、核弾頭の貯蔵数の数量管理を政府が綿密に行っていると考えるのが自然であろう。したがって、政府が全ての核弾頭の所在地や状況を公表するのを妨げる技術的障害はないはずである。同様にこのような公表内容の検証に当たって問題となる技術的障壁もない。唯一の基本的問題は政治的なものである。

  7. 査察規定は、あらゆる軍備管理・軍縮合意の検証上重要である。軍縮条約の遵守は、条約を調印した政治的意思にかかっている。しかし、信頼関係のみでは十分ではない。主要軍縮協定はすべて、厳格で信頼性の高い検証体制を含んでいる。米ロ間の核関連条約は、現地査察の多用を柱とした二国間体制の下で検証が行なわれてきた。査察規定は、CWCの信頼性にとって不可欠であり、BWCを強化するための検証議定書交渉でも主な関心事となっている。各国政府は抜き打ち査察や短期通告査察を含む査察を許容しなければならない。

  8. 検証・監視システムの質と能力は、探知・監視技術のたゆまぬ改善により、これまで想像できなかった高水準に達する可能性がある。近代技術により、不審な建設計画、銀行取引、輸出入の形態、輸送、生産などの核兵器計画の疑いの兆候について、依然と比べ格段と良く知ることができるようになった。大気、土壌、水質の採取技術も高度化され、重要な情報を獲得できるようになった。政府のものであれ、民間のものであれ衛星写真は、核兵器開発計画の秘匿を益々、困難なものにしている。コンピュータによるデータ処理は、公表内容やその他の検証プロセスで入手するデータ分析を改善しうる。これらの技術の全てが、核軍縮を検証するために用いられるべきである。

  9. 各国独自の技術も、核削減・軍縮の検証にとって不可欠なものである。しかし、この種の技術手段は、その性格に由来して、有用性に限界があり、その限界は特に多国間の文脈で顕著である。欺瞞行為をなるべく多く探知する機会を得る為、監視用機材が、政府および国際機関の努力を統合する方法で、使われるべきである。IAEAやCTBT暫定技術事務局(CTBTO)などの国際機関、各国独自の技術手段、各国による透明性向上・信頼醸成措置を統合し、これらの相乗効果を引きだす取り組みが必要である。検証のために相乗効果をもたらす取り組みの対象を拡大するために、有用な国際機関を形成していかなければならない。

  10. 核条約不履行の抑止のためには、違反国は捕捉されるのみならず、そのような場合重大な結果に直面するということが、全ての国に対し周知されなければならない。国際社会は広範なコンセンサスに基づき、違反国への対応について、国連憲章第7章の利用の可能性を含め、一致し、決然とした態度を取らなければならない。効果的な条約遵守に対する国際社会の支持を構築し、維持するためには、改革されて権威を持つ安保理を有する再活性化された国連が不可欠である。東京フォーラムは、核不拡散と核軍縮を求める全ての国に対して、このような仕組みを構築することを積極的に支持するよう求める。



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