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第三部 核拡散の阻止と巻き返し

21世紀における拡散課題

  1. 核兵器のグローバルな拡散を阻止し、元に戻すため、国際社会は、協調して核拡散の危険の程度を認識し、包括的な戦略に基づいた是正措置を取る必要がある。NPTは、こうした協調行動の基盤となるものであるが、核兵器国も非核兵器国も、NPT体制のほころびを修復するだけの十分な行動をとっていない。NPTは再確認され、再活性化されなければならない。

  2. 包括的戦略は、非核地帯や効果的で公正な輸出管理を含む、地域的或は国際的な不拡散制度や取り決めを活用する。広範な透明性の確保と監視により、世界にある膨大な量の兵器用核分裂性物質の規制を強化することは、核兵器の更なる拡大を阻止する上で不可欠である。弾道ミサイルも核拡散の危険を高めており、いかなる包括的不拡散戦略であろうとも、弾道ミサイルの拡散抑制を含む必要がある。

  3. 21世紀を目前にして、冷戦終結により生まれた、普遍的で効果的な地球規模の核不拡散体制を目指す勢いは失われかねない状況にある。多方面から新たな核拡散の挑戦がなされている。管理の不十分な物質・技術・武器が国境を越えて不正に流出しかねない。NPTや地域的取り決めを遵守しているとする国にも秘密計画があるかもしれない。テロリストが核の技術や物質を取得するかもしれない。核兵器の材料はますます安価で容易に入手可能となるかもしれない。技術先進国が通常兵器面で軍事的優位にあるとの認識により、他の国がますます大量破壊兵器に価値を見出すかもしれない。ある国や地域での拡散が他にも伝播していくかもしれない。こうした挑戦に、いかに対処すればよいか。

NPTの強化

  1. NPTはグローバルな核不拡散の礎石である。 NPTは核兵器国と非核兵器国間の中核的なパートナーシップと、核兵器を持たずこれを廃絶するという厳粛な盟約に依っている。この条約が存続し、あらたな拡散の脅威に効果的に対処していくには、このパートナーシップが再確認される必要がある。 NPTは、67年1月以前に核装置を爆発させた国として定義される5つの核兵器国以外への核拡散防止を目的としている。従って、98年5月に核実験を行ったインド、パキスタン両国を核兵器国と認識することは、核拡散を容認する危険な前例をつくることになる。一方、単に両国の行為と能力を無視すれば、地域の軍備競争と核危機の可能性を増大させ、核兵器技術が当該地域から非核兵器国へ移転される可能性を残すことになりかねない。それ故、NPT加盟国は、核拡散を容認することなく、国際的な不拡散努力に対するインドとパキスタンの協力をどのように確保していくかという重大な課題に直面している。

  2. このジレンマからの出口は、拡散を容認することではなく、不拡散措置を強化し、核兵器の漸進的な削減、廃絶により、NPTの基本的要請を満たすことである。前者の緊急対策としては、NPT保障措置協定に対する国際原子力機関追加議定書の受入と実施を促進させ、これを新たな不拡散の基準とすることである。後者は、核兵器の数やその過大な評価を低減し、核兵器の保有量と兵器用核分裂性物質の在庫を透明にすることである。NPT体制が差別的であっても、核兵器国、非核兵器国が各々の約束を遵守すれば、条約は道義的、実際的な欠陥を伴うことはない。しかしながら、約束が遵守されなければ、体制は確実に弱体化し、条約に忠実な加盟国が条約を強化することはおろか、それを維持することすら益々難しくなろう。

  3. NPT再検討会議でしばしば表面化したようにNPTに規定されている不拡散、軍縮、原子力エネルギーの平和利用という一連の項目は、どれが最優先されるべきかをめぐり、意見が分かれてきた。 「再検討プロセスと原則の強化」と「核不拡散・軍縮のための目標」および「中東に関する決議」といった決定文書の文脈で達成された95年の無期限延長の際、条約の再検討プロセスも改訂された。これによって、2000年の再検討会議までの期間、実質的事項を審議する権限が準備委員会に与えられた。しかし、この強化されたプロセスは、加盟国間の長期にわたる緊張関係と改訂されたプロセスのあり方についてのコンセンサスの欠如により実現していない。一部の国は、準備委員会は加盟国の会合ではなく、再検討会議の下部機関なので、常設の執行機関や他の常設機関に代わるものではないとしている。NPTには、条約の運用を再検討する会議を5年ごとに開催する規定はあるが、常設機関あるいは執行機関を規定してはいない。その上、条約には、不遵守への対抗措置を決定するメカニズムがない。

  4. 東京フォーラムは拡散を防止し、これに効果的に対抗するNPT加盟国の能力を高める措置がとられるべきと確信する。われわれは、条約の恒久的な執行・諮問機関の創設を求める。これは、不拡散・軍縮を追求していく全締約国の目的に奉仕する後見機関となろう。こうした執行機関を設ける提案は至急検討されるべきである。加えて、東京フォーラムは、NPT体制の維持、強化のため2000年のNPT再検討会議が重要であり、全参加国が建設的なアプローチをとって、NPT体制の強化を共通の関心事項とすることが必要である点を強調する。

その他の多国間の不拡散手段の強化

  1. NPTの効果をさらに高め、核不拡散体制に関連する他の多国間制度が強化されなければならない。これには、地域的要素として、とりわけ非核地帯や、非核兵器国に対する安全保証が含まれる。

化学兵器禁止条約(CWC)及び生物兵器禁止条約(BWC)の強化

  1. CWCの検証制度は国内の実施規定により弱められ、条約不遵守を見つけることが益々困難になっている。加えて、生物兵器の能力が高まり、新しい科学の進展により将来生物兵器がより容易に入手し得る状況下で、BWCの検証議定書交渉が依然課題となっている。さらに、国際社会は1925年のジュネーブ毒ガス議定書、CWC及びBWCに対する重大な違反やその他の条約不遵守を適切に取り扱う方法を有していない。国際社会がこれらの条約のための強化された検証手段や、不遵守を取り扱うための効果的な措置を採用しなければ、化学・生物兵器の脅威は、国際社会にとって重大な懸念となろう。

  2. 非核地帯の地理的範囲および不拡散面での意義は、核の危険が増している中、ますます重要となった。非核地帯条約の核心は、締約国は核兵器を取得せず、その領域への核兵器の持ち込みを認めない点にある。これらの条約は核兵器国は非核地帯条約締約国に脅威を与えず、核兵器を使用しないという、いわゆる消極的安全保証の約束を無条件に行うことを核兵器国に義務づけている。このような無条件の消極的安全保証と非核地帯条約締約国による約束は、国際的な不拡散合意におけるものよりも踏み込んだものとなっている。

  3. これらの地域的協定は、国際的な体制に比べ、より広範な不拡散・軍縮の目標を設定している。これらは、多数の国、とりわけ開発途上国が軍縮と不拡散に取り組んでいることを示す意味でも、特別な意味がある。地域的な非核地帯は、周辺諸国間で高度な信頼関係を築き上げることができる。効果的かつ国際的な体制に替わるものではなく、双方がそれぞれを補完し合うものである。

  4. 非核地帯を創設する条約は67年にラテン・アメリカで、85年に南太平洋で、95年には東南アジアで、96年にはアフリカで調印された。いずれの条約も特定地域内での核兵器を禁止し、国際原子力機関に検証責任を負わせ、恒久的な条約機関を設置している。95年のバンコク条約は、疑惑に対する明確化や、実情調査団及び原状回復の手続の要請など、条約不履行の疑惑に対する制度をもっている。96年のペリンダバ条約は、遵守規定、現存の核爆発装置破壊のメカニズム、非核兵器国への輸出条件に関する合意、核物質や施設の核防護要件、及び地域内の平和目的原子力施設に対する攻撃禁止規定を有している。

  5. 核兵器を特定地域から排除することを目的とした協定として、91年に朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国によって調印された朝鮮半島非核化共同宣言がある。これに引き続き92年に、南北共同核管理委員会の設立と運営に関する協定が結ばれた。94年の米国と朝鮮民主主義人民共和国の枠組合意は、朝鮮半島を非核化する目標を再確認した。

  6. 中央アジア非核地帯創設の動きは相当進んでおり、五か国が条約案に同意し、現在5核兵器国と協議している。こうした地帯の創設は、国際的な不拡散を追求していく上で益々重要となりつつある。こうした地域を、中東、中欧、南アジアで創設する意欲は長年にわたって存在している。南半球の非核地帯の連携を正式なものとする提案もなされている。これが実現されれば、南半球のほとんど全ての国が非核地帯内にはいり、100か国以上が、核兵器国から無条件の消極的安全保障を受けることとなる。

  7. 東京フォーラムは全関係国に対し朝鮮半島の非核化をできるだけ早急に実現するため一層の努力を行なうよう求める。バンコク条約、ペリンダバ条約及びこれらの議定書を全面的に発効させ、それぞれの地域機関を設立するために多くの努力が必要である。さらに、東京フォーラムは、中央アジア非核地帯条約の早期締結と発効を強く支持する。新たな非核地帯の創設を促進し、既存の非核地帯とリンクさせる努力が必要である。

安全保証の強化

  1. 核兵器が非核兵器国に対して使用しないという保証は、多数の非核兵器国が国際的不拡散体制への支持を維持し強化するために安全保障上の強いインセンティブを与える。しかしながら、核兵器国は、一方的な消極的安全保証を法制化するための共通形式にまだ合意しておらず、そうした保証を、多国間の法的枠組みにすることができない。問題は、それぞれの核兵器国が消極的安全保証の実施の前提とする条件が異なることにある。すなわち、そうした保証がNPT加盟の非核兵器国にのみ与えられるべきか、普遍的に与えられるべきか、そのための交渉がNPTの場或いは軍縮会議で行われるべきかといった点である。東京フォーラムは、核兵器国に対し、NPT加盟の非核兵器国に対する消極的安全保証の共通形式につき積極的に合意を図り、法的拘束力を持つ協定を目指して交渉する可能性を探求するよう要請する。

  2. 東京フォーラムは、核兵器により威嚇され或いは攻撃を受けた国に対する支援の保証を含む積極的安全保証が、非核兵器国にとり不拡散を支持するための更なるインセンティブとなり得ることに留意する。

  3. 92年1月、国連安全保障理事会の議長は安保理メンバーの名において、全ての大量破壊兵器の拡散は、国際の平和と安全の維持に対する脅威であると宣言した。東京フォーラムは、国際社会がこの宣言を安保理決議により再確認するよう求める。拡散がこのように定義されれば、拡散国に対する制裁は安保理を通じより容易に行われよう。東京フォーラムは、国連安保理の常任理事国に対し、大量破壊兵器の使用や使用の脅威にさらされている国連加盟国を支援或いは防衛する努力に逆行する形での拒否権行使を控えることを表明するよう求める。東京フォーラムは、現在及び将来の全ての安保理常任理事国が不拡散に関する模範的な信任を有するべきと考える。

兵器用核分裂性物質の管理強化

  1. 世界が直面している最も緊急の核拡散問題の一つは、貯蔵されている兵器用核分裂性物質を安全に保管し、安全かつ不可逆的に処分することである。問題が最も深刻なのは、ロシア及びその他の旧ソ連地域である。世界に約3000トンのプルトニウムと高濃縮ウランが存在しているが、IAEAの保障措置の下に置かれているのは1パーセント以下である。世界のプルトニウムと高濃縮ウランの3分の2は軍事目的で生産された。更に、その3分2に該当する約1300トンは、軍事的な必要量を越えた余剰であるとみられている。米国とロシアは、それぞれ数百トンという世界最大の兵器用核分裂性物質を貯蔵している。仏、英、それに伝えられるところでは中国もそれぞれ、おおよそ数十トンずつを保有し、インド、パキスタン、イスラエルはそれぞれ数百キロを貯蔵しているといわれている。しかし、それぞれの国の貯蔵量だけで脅威の度合が測れるわけではない。

核分裂性物質生産中止宣言

  1. 仏、ロ、英、米はもはや核兵器に使用する核分裂性物質を製造しないことを公式に表明している。中国も兵器目的の核分裂性物質の製造を止めたことを非公式ながら示唆している。もし、中国が公式表明により、この非公式な保証を確認すれば、兵器用核分裂性物質の管理は大きく進展するだろう。インドとパキスタンは積極的な生産計画を有し、両国の兵器級核物質の貯蔵量は増加していると見られる。イスラエルが兵器目的の核分裂性物質の生産を続けているかどうかは不明である。インド、パキスタン、イスラエルは、カットオフ条約が締結される前に、可及的速やかに兵器目的の核分裂性物質生産のモラトリアムを宣言すべきである。

カットオフ条約交渉の促進

  1. カットオフ条約は、核不拡散の成功の前提条件であり、また核軍縮のための礎石である。この条約は、核拡散の抑止に寄与し、秘密裡の生産、取得を探知し、監視することを可能とする。東京フォーラムは、95年のシャノン・マンデートを基に軍縮会議がカットオフ条約交渉を行うことを要求する。軍縮会議は、条約交渉のための特別委員会の設立を98年8月まで延期させ、その再設立を本年も挫折させた政治的停滞を克服しなければならない。同条約は可能な限り早急に締結されなければならない。しかしながら、貯蔵された核分裂性物質の問題は重要である。東京フォーラムは、この貯蔵問題はカットオフ条約交渉を促進させるために、公式の条約交渉とは別に、並行して議論されるよう求める。同条約の下での検証方法については、NPT/IAEAの追加議定書を含む保障措置を強めるべきである。

透明性の向上

  1. NPTの下、非核兵器国は核分裂性物質をIAEAの保障措置の下に委ねる義務を負っているが、核兵器国やNPT未加入国の兵器用核分裂性物質を規制する条約はない。しかし、核兵器国の一部は、その計量管理を支援する措置を行ってきている。核兵器国、非核兵器国とも、兵器用核分裂性物質は国家管理の下にあるが、外部の監視の対象となっていない。また、国内の責任ある機関が、常に完全に立法機関に対して説明することともなっていない。

  2. 核兵器計画を持つ国は、兵器用核分裂性物質の詳細を長い間機密扱いしてきたが、冷戦終了後、部分的な透明性を自ら受け入れた国もある。米国はプルトニウムと高濃縮ウランの保有量を公表するプロセスをとり始め、93年、軍事目的で製造、使用された核分裂性物質に関する情報を開示する「公開イニシアティブ」を開始した。94年6月と96年2月には、プルトニウムについての詳細が公表され、高濃縮ウランについても同様に明らかにされた。98年、英国は兵器用核分裂性物質の貯蔵量を発表し、また、より広範な監査の結果も公表する旨約した。

  3. 東京フォーラムは、保障措置の対象となっていない核分裂性物質をもつ全ての国、すなわち全ての核兵器国及びNPT未加入国が、自発的にこれら貯蔵物質の透明性を高めるよう求める。まだそうした措置をとっていない国は、貯蔵に関して国内監査を始めるべきであり、その結果は毎年公表されるべきである。こうした透明性措置は、信頼醸成に大いに役立ち、カットオフ条約交渉を促進するであろう。核分裂性物質の透明性措置は、地域レベルのものも含めIAEAと連携協力して、核物質計量管理に関する完全な透明性が確保するものとして作られるべきである。

核テロの防止

  1. 管理が不十分な核分裂性物質は、核兵器を求めている国家のみならず新しいタイプの潜在的な拡散者、即ち核テロリストにとっても魅力あるものである。過激な政治的集団、狂信的集団あるいは犯罪集団など、敵対的目的をもった非国家的勢力が初歩的な核兵器に必要な材料と技術を取得する可能性が、現実のものとなっている。核テロ行為が生じれば破局を招くが、こうしたテロから安全な国はなく、最も強大な国が標的となる可能性が一番高いかもしれない。各国政府は情報交換等によりテロの発見・対応能力の向上を図るだろうが、テロリストは常に発見が難しく、これを抑止するのは難しい。東京フォーラムは大量破壊兵器が、過激集団や狂信的集団や犯罪集団の手に渡らないように地域的・国際的な協調体制が取られるよう求める。ロシアによって提唱され、現在国連で交渉されている核テロ国際条約等の新たな法規範が、核テロと戦う努力を支援していくであろう。この条約が効果的であるためには、既存の法的手段と一体化される必要がある。国際規範と現存の法的手段を強化するいかなる措置も、支持に値する。

核物質の防護・管理の改善

  1. 兵器用核分裂性物質の盗難や秘密裏の転用の防止を目的とした物理的防護のための国際基準を改めることが急がれる。これら物質は、施設の中でも輸送中でも適切に管理されていなければならない。このためには、正式な警察力を持つ、武装警備員、册や監視設備、特別貯蔵施設、容器や車両が必要である。87年に発効した核物質防護条約は、全ての関係国により締結され、完全に実施されなければならない。現在、主として輸送中の物質防護に関係している条約の対象の拡大も早急に検討すべきである。照射済核燃料、プルトニウム、高レベル放射性廃棄物の安全な海上輸送のための94年の核防護条約、使用済み核燃料管理と放射性廃棄物の安全に関する97年の合同条約も、核物質の盗難や兵器使用への転用防止に役立つ。

ロシアにおける管理と脅威削減計画の強化

  1. ソ連の消滅以来、旧ソ連地域における膨大な量の兵器用核分裂性物質の安全性が大いに危惧されてきた。ソ連における物質計量手法はさほど厳密でなかったため、問題はかなり広範に亘っている。ロシアでは、経済的危機により、解体核から出たものを含む兵器用核分裂性物質が貯蔵所から運び出され、違法に移転される危険が高まっている。こうした事態を防止するため重要なイニシアチブが取られてきてはいるが、核物質の量からみて一層の努力が必要である。廃棄物として貯蔵するにせよ、または燃料として燃焼するにせよ、処理された量はきわめて少ない。保安要員の給与が未払いとなっている中、拡散者の工作員達が兵器用核分裂性物質を捜し求めており、そのわずかな量でも、初歩的な核兵器計画に大きく役立つ。東京フォーラムは、核の不法取引と戦うための国際協力を緊急に求め、警察、情報当局、関税当局及びIAEAが相互補完的な役割を果たすことを要請する。

  2. ロシアの核物質の防護、管理、計量を改善していくために更なる国際協力が必要である。94年以来、米国、日本、EUを含む多数の国が資金や専門知識を供与してきた。ナン・ルーガー協調的脅威削減計画(CTR)の下、米国は18のプロジェクトに対し約18億ドルを供与した。他のG7各国もこれよりもかなり額は少ないが資金供与をしてきた。こうした支援は、引き続き核兵器の廃棄、強化された容器の提供、兵器用核分裂性物質の貯蔵施設や運搬、MOX燃料リサイクルの研究などの面で強化される必要がある。国際科学技術センター(ISTC)が旧ソ連科学者のための民間プロジェクトに資金を提供し続けるためには継続的支援が必要である。国際社会は、緊急事項としてロシアにおける脅威削減計画を拡大する必要がある。最近、米国は、ロシアの財政危機によりプルトニウム管理弱体化等の拡散の脅威に取り組むため、「拡大脅威削減イニシアチブ」に45億ドルを支出することを発表した。東京フォーラムは他のG7諸国に対し、脅威削減計画に追加的支援を行うよう求めるとともに、国際社会のメンバーに対しても米の例に倣うよう求める。

  3. 東京フォーラムは、ロシアやその他の旧ソ連諸国における高濃縮ウランやプルトニウムの管理と処理のペースが極めて遅く、これらの物質が流出する危険が極めて高いことを大変懸念している。旧ソ連諸国における、プルトニウムや高濃縮ウランの物理的管理と早急な処理を確実なものとするため、より多くの国による一層の努力が必要である。処分計画は、完了の期限を明示したより厳しいスケジュールの下で行なわれるべきである。余剰高濃縮ウランは、民間の発電用に供すべく、早急に低濃縮ウランに転換されるべきである。こうした課題に係る費用は高いが、最短時間で問題に対処するため民間及び政府資金を含むできるだけ多くの資金を確保すべきである。

核分裂性物質の検証と保障措置の拡大

  1. 民生用・軍用の核物質につき、登録制の導入を含め、監視・管理を強化していくことは、技術的な障壁はあるが、克服不可能なものではない。非核兵器国における原子力産業は、以前からIAEAの国際査察の対象となっており、査察の範囲も拡大されつつある。その他の国においても、軍事用、民生用の核分裂性物質の生産について広範な記録が残されているものと考えられる。とりわけ核兵器国の政府にその貯蔵を申告する用意があれば、国際的検証は実施可能である。

  2. カットオフ条約の検証は、核兵器国における現存の兵器用核分裂性物質の初期貯蔵量がどの位かを合理的に定義することなしには困難であろう。カットオフ条約が交渉され、妥結すれば、データの透明性と利用可能性が高まることが期待される。これは、保障措置の普遍化に向けた重要な一歩となろう。

  3. 東京フォーラムは、全NPT加盟国が現存の保障措置協定の追加議定書を発効させることにより、IAEAに保障措置実施のための追加権限を与えるよう求める。東京フォーラムは、意図的な違反への対処に保証措置ができるだけ効果的であるためには、同措置が常に改善されていく必要がある点にも留意する。保障措置の査察活動を拡大させるには、もちろん追加的な資金が必要となろうが、IAEAの保障措置の査察の方法と手続に以前から求められてきた変更を加えることができれば、コスト増は最小限にとどめられよう。

  4. 貯蔵されている兵器用核分裂性物質の余剰分をIAEAの検証に係らしめるための技術的、法律的、財政的問題を調査するため、96年、IAEA、米国、ロシアの三者によりイニシアチブが出された。米ロ両国は申告した余剰物質を、IAEAとの自主的な保障措置協定の下で「現実的に最も早い時点で」検証に委ねる旨発表した。英国も、欧州原子力共同体の保障措置に委ねる軍用の「余剰」物質があると表明している。東京フォーラムは、こうしたイニシアチブが広がり加速化していくことを強く求め、他の核兵器国が同様の措置をとるよう奨励する。核兵器計画を持つすべての国は、軍縮諸条約の結果解体される核弾頭から出る物質を含め、余剰の軍事用核分裂性物質に対して、IAEAの保障措置が適用され、早期かつ不可逆的に処分されることに同意すべきである。

  5. 東京フォーラムは、全ての核兵器国が民生用の核分裂性物質の在庫を、自主的合意に基づき全てIAEAの保障措置に委ねるよう求める。NPT非加盟国は、一部在庫を、一定の割合でIAEA保障措置の下におくべきであり、また、IAEAと自主的な合意につき交渉すべきである。民生用のプルトニウムや高濃縮ウランを持つ全ての国は、その保有量を毎年申告すべきである。

  6. 東京フォーラムは、NPT加盟国、未加盟国の双方が、核爆発装置用核分裂性物質の生産に使われていた施設をIAEAの保障措置の下におくよう、一方的な形でコミットメントを行い、また、同目的のために用いた施設を廃棄し、解体するよう求める。

核の輸出管理の強化およびその透明性の改善

  1. 原子力供給国グループ(NSG)及びミサイル輸出管理レジーム(MTCR)の下に調整された各国の輸出管理政策は、核兵器とその運搬手段の拡散を抑制するのに役立っている。しかし、これら管理の効率性と透明性は更に改善できるし、改善すべきである。

  2. 輸出管理取決め参加国は、こうした取決めが合法的取引を妨害しないと明言しているが、他方で、これら取り決めは排他的であり、差別的かつ透明性を欠くものだとの反対意見も根強い。輸出管理体制に係る見解の相違は、拡散抑制を強化する上で大きな障害となりうる。輸出管理取決めの参加国は、管理の効率性を維持しつつ、体制への批判には建設的に対応していくべきである。東京フォーラムは、95年のNPTの無期限延長に伴う「原則と目標」に照らし、輸出管理体制の加盟国と非加盟国間の対話と協力を通じ、核関連輸出管理の透明性が一層高まることを求める。

  3. 機微な品目を現に供給している国又は今後供給する可能性のある国の中には、現在輸出管理体制に参加していない国がいくつかある。東京フォーラムは、輸出管理の効果を損なうことなく、現在参加していないこれらの国々を取り込み、輸出管理体制を拡大するよう呼びかける。このような努力は既に行われている。ロシアのNSG及びMTCRへの参加は前向きな一歩であった。次は、中国がMTCRへの参加を前向きに検討する旨公にしているが、この政策を進めるよう中国に対し奨励することが特に重要である。新しい参加国は、不拡散に積極的な結果をもたらすよう、輸出管理体制の厳格な管理基準に従わねばならない。

  4. 輸出管理体制に参加していない供給国へのもう一つの対処方法は、参加国と同様、厳格かつ実効性ある輸出管理政策をとるよう奨励することである。これは、参加国数を拡大する努力と並行して行いうる。未加入国との二国間協議や技術支援を含む力強い働きかけをすることは、透明性向上のための努力と共に、これらの諸国が効果的な輸出管理システムを確立する上で大きく役立つであろう。

  5. 機微な核物質及び技術を供給する際の条件を強化することが緊要である。東京フォーラムは、すべての供給国に対し、核関連品目の輸出の新たな条件として、輸入国とIAEAの間で保障措置に関する追加議定書が結ばれることを規定するよう求める。しかしながら、NSGの参加国は、たとえ仕向け地国が追加議定書を締結していても、管理品目表に掲げられる全品目の輸出が当該国に対して自由に流れ込んでも差し支えないことを肝に銘じる必要がある。仕向け地国が拡散懸念を払拭させているか否かを決めるのは、あくまでもNSG各参加国の責任である。

  6. 東京フォーラムは、ザンガー委員会にのみ参加している国に対し、NSGに参加し、核関連輸出管理をより効果的にするよう求める。東京フォーラムは、輸出許可手続を強めることによりMTCRを強化するよう求める。

  7. 東京フォーラムは、MTCR輸出ガイドラインの厳格な実施の必要性を再度訴え、ロシアがミサイルと核兵器関連技術、物資の管理を強化するよう求める。この点で、東京フォーラムは国際社会がロシアと緊密に協力し、核兵器やその他の大量破壊兵器物質とミサイル技術が他の国家や非国家の拡散者に渡ることのないよう努力すべきであることを強調したい。

ミサイル拡散の抑制

  1. 弾道ミサイルの拡散問題に取り組まなければ、核拡散に包括的に対応したことにはならない。化学、生物兵器禁止条約、核兵器の拡散と実験を禁止する条約はあるが、特にミサイルを規制する多国間条約はない。99年4月にインド、パキスタン両国が中距離ミサイルの発射実験を行った後、国連事務総長は、軍事用弾道ミサイルの開発を規制する国際的な協定が作成されれば、軍備管理軍縮条約の今後の見通しは相当明るくなる旨述べた。

  2. 戦略兵器制限交渉(SALT)やINF、STARTといった核兵器の管理に係る過去の米・ソ(ロシア)間協定は、弾道ミサイルの管理、削減、廃絶を実現した。このように、核兵器国にとっては、弾道ミサイルは核兵器の運搬手段と密接に関連づけられてきた。一方、核開発計画や核武装の意図を有していると疑われている国については、弾道ミサイルと同時に、他の大量破壊兵器を入手しようとしているとの疑惑がある。東京フォーラムは、弾道ミサイルの開発、取得、発射実験、生産及び配備は地域の平和と安全保障にとって脅威であると信じる。

  3. 東京フォーラムは、核搭載可能な弾道ミサイルの取得や配備を防止する現実的方法を模索するよう、国際社会に求める。ミサイルの拡散に対処するためMTCRの枠外でミサイル関連技術の国外移転に懸念を有する国々の特別会合を開催すべきである。87年のINF条約の規定に基づく、国際的或いは地域的なミサイル協定につき交渉することは真剣な検討に値しよう。INF条約の多国化は、特定の国を差別することなく、南アジアにおける脅威認識を軽減させる為特に効果的であろう。別の方途は、中東、南アジア、北東アジアにおいて二国間あるいは地域的な枠組を作ることである。関係国のもつ安全保障上の関心には適正な考慮を払う必要がある。安全保障対話の強化がミサイル拡散に対抗する地域的取組みを検討する環境を醸成するであろう。


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