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紛争予防シンポジウム
予防の文化-国連から市民社会まで-
第一分科会報告
(小型武器)
1.問題の背景「予防の文化」を推進していくためには紛争を暴力や銃口によって解決しようとするのではなく、民主的な話し合いとか法的手続きによって公正に解決できる国家、社会を築いていく必要がある。今日の世界で頻発している地域紛争、国内紛争の道具、そして紛争終了後も激増する犯罪の道具として過剰に出回っている小型武器、特に軍用の自動小銃などの小型武器を如何にして削減するか、また、その供給を抑制していくかは、全ての国にとっての緊急課題であり、本年7月に開催される「小型武器非合法取引のあらゆる側面に関する国連会議」も、まさにこのような問題意識によるものである。
2.基調報告
第一分科会においては、小型武器の過剰氾濫の問題、より具体的には長年の内戦が収束するに至ったカンボディアにおける小型武器の回収、廃棄の問題を取り上げた。なぜなら小型武器の過剰氾濫が国内治安、経済・社会開発を深刻に脅かしているからである。
分科会に先立ち、昨日午前の全体会合においてカンボディアのホック・ランディ国家警察長官が基調演説を行い、武器の回収・廃棄に向けてカンボディア政府が行なってきている努力全般についての説明がなされた。既に10万以上の武器が回収され、その約3分の1が廃棄されたとのことであり、周辺国への拡散防止の努力も行われているとのことであった。また、このような勇気あるカンボディア政府の努力に呼応して国際社会および地元の「武器削減のためのワーキング・グループ(WGWR)」等のNGOを含む非政府組織も、これに協力しつつあるとのことであるが、問題解決のためには一層、かつ長期的な努力を必要とするという観点から、更なる支援と協力をお願いしたいとのことであった。
これに引き続き、第一分科会ではさらに三人の方から基調報告を聴取した。最初はウン・サミー・プルサット州知事の報告で、同州における小型武器問題の現状と課題について説明が行なわれた。二人目は欧州連合(EU)のカンボディア小型武器削減にむけた支援プロジェクト(ASAC)のプロジェクト・マネジャーであるヴァン・デア・グラーフ氏からその活動状況、特に具体的プロジェクトについて説明が行われた。三人目は長内・外務省軍備管理・科学審議官組織参事官で、カンボディアにおける小型武器問題に向けた日本政府の支援方針について説明が行われた。3.討議の概要
第一分科会では以上の報告を受けて極めて活発、また示唆に富む有益な討議が行われた。時間的な制約もありすべての貴重な論点を御披露することはできないので、おおかたの参加者の間で意見の一致があったと思われる主要な論点、提言、提案のみをご紹介させて頂く。言葉足らず、或は言い過ぎの点がある場合には、この後の最終セッションの公開討論の際に速やかに御指摘、訂正下さるようお願いする。
- (1)第一に、数年前から「武装解除と元兵士の動員解除、社会復帰」に集中的な努力を行ってきたのは、かかる努力なしには国内の和平と安全保障、社会的・経済的発展が保証されない、或いは、正しい方向に進まないと考えたカンボディアの政府であり、カンボディアの国民であったということを強調したい。被害国・被害地域の強い意志こそがかかる問題解決の鍵であり、そのような意志がなければ、外部からの支援は効果を発揮しない。他方、カンボディアは、資源、経験及び専門知識が乏しいことから、国連、開発援助機関、ドナー国、市民社会を含め、広く国際社会の支援と協力を必要としている。この点については、全参加者の意見の一致があったと思う。
(2)第二に、武器の回収と破壊のために、既に、様々なイニシアティヴやプロジェクトがカンボディアにおいて開始され、また、開始されようとしている。例えば、回収された武器破壊式典がカンボディア政府により数次にわたり実施されており、このような武器の回収と破壊の重要性につき、世論喚起の上で効果を上げた。また、一般市民の武器所有や使用を禁止する法令が導入され、この目的のための新たな国内法がEU(ASAC)の支援を得て準備されている。更に、EU(ASAC)は、武器、弾薬及び爆発物のための貯蔵施設の建設計画で国防省に支援を行っている。以上は、カンボディアにおける極めて勇気づけられる進展である。
(3)第三に、このような努力を行う上で極めて重要なことは、一般市民が自己の生命、財産を守るために武器を必要としないような信頼できる警察及び治安体制を確立することである。この目的のために、カンボディア警察に専門的な訓練を施すこと、また、警察に最低必要限の交通、通信手段を供与することが重要である。それ故、カンボディアを支援する意思と能力のある援助供与諸国が財政的・技術的支援を行うことが非常に必要である。
(4)第四に、隣国との国境を越えて行われる小型武器の非合法取引に関しては、これを阻止することなしには、武器の過剰、蓄積の削減努力が失敗に帰するであろう。非合法取引を撲滅する効果的な手段が必要である。この目的のために、カンボディアの国境警備、税関当局を強化することが必要である。また、隣国間の地域レベルでの警察、税関、国境警備当局間の情報交換と協力のためのネットワーク作りが必要である。
(5)第五に、武装解除と元兵士の動員解除・社会復帰のみならず、社会的・経済的開発をも目指す包括的アプローチの推進の必要性を強調したい。武器の供出と引き替えに、道路、学校、職業訓練などの開発支援を行うことは、地元住民の生活様式に希望を与える変革を約束するものとして、大きなインセンティヴを与える効果を発揮しよう。「武器と引き換えの開発」の構想は、国連等の開発援助機関が紛争終了地の問題に取り組みに際して生み出したものである。この構想は、EU(ASAC)がプルサット州及びクラティエ州における二つのパイロット・プロジェクト計画を準備するに際して参考としたものである。日本はプルサットのパイロット・プロジェクトの実施を支援しようとしているが、他の援助供与諸国が、同様のプロジェクトを多くの地域で支援することが期待される。
(6)第六に、非政府団体(NGO)が一般市民の意識啓発の上で、果たしうる役割の重要性が参加者全員から強調された。「武器削減のためのワーキング・グループ(WGWR)」は、地元NGOと海外NGOとの連合組織であるが、1998年以来小型武器問題についての草の根レベルの調査の実施、キャンペーンの実施及び政府の努力の支援において積極的に活動してきている。日本政府は日本のNGOの更なる積極的な参加慫慂を含め、こうしたNGO活動を支援してきており、今後も支援していくつもりである。全ての援助供与諸国はカンボディアにおいて様々なNGOによる草の根レベルの活動を奨励するため、一層の努力をすべきである。
(7)第七に、小型武器問題に関し、様々なアクターが、それぞれ長所と短所を持ち合わせている反面、他のアクター達と協議することなく、それぞれの活動を企画、実施する傾向にあることが指摘された。様々なアクターによる多様な努力を調整することが極めて重要である。様々なアクター間の協議と協力は、不必要な重複を避けるばかりでなく、他のアクターの経験から学ぶ上でも重要であり、様々なアクターによる諸活動が相互補完的かつ相互補強するであろう。それ故、すべてのアクターがより緊密に協議と情報交換を行う努力が必要である。全てのアクターが参加する調整委員会や協議委員会の設置も検討に値しよう。その意味でも、今回の「紛争予防国際シンポジウム」は、情報の共有と将来の協力の可能性に向けて非常に有用であった。様々なアクター間の調整の問題は、対象とする問題により態様が異なることにも注意する必要がある。例えば、小型武器問題解決に向けた「政治的意志」の結集ということになれば、G-8の役割は極めて重要であり、宮崎イニシアティブに続けて、国連、地域機関、援助供与諸国などに強力なメッセージを発信しつづけることが重要である。援助供与諸国による支援の調整ということであれば、別の協議の場も考えられるであろう。
(8)第八に、この関連でカンボディア、カナダ、日本および国連が共催して、プノンペンで三週間前に開催されたARF通常兵器信頼醸成セミナーにおいて、小型武器問題が議論されたことが想起される。同セミナーにおいて、米及び加は、カンボディアにおける小型武器の回収と破壊のために支援を行う意向を示した。このようにカンボディアにおける小型武器問題への取り組みは、まだ初期の段階にあると言える。如何にしてこれらの新たな提案と既に開始されている諸活動とを調整していくかが大事である。
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