アジア太平洋腐敗対策行動計画(仮訳)
平成13年11月30日
前文1
我々、アジア太平洋地域の政府は、1999年10月のマニラ会議及びそれに続く2000年12月のソウル会議において明らかにされた目的を基礎とし;
腐敗が良い統治(ガバナンス)を害し、法の支配を腐食し、経済成長及び貧困削減努力を妨げ、また、商取引における競争条件をゆがめる広汎な現象であると確信し;
腐敗が道義上及び政治上重大な懸念を提起すること、並びに腐敗との戦いは複雑な作業であり、社会のすべての構成員の関与が必要であることを認め;
地域内の協力が腐敗と効果的に戦うためには不可欠であることを考慮し;
国内における腐敗対策措置はがこの地域内の国々、アジア開発銀行(ADB)、アジア太平洋経済協力(APEC)、 資金洗浄(マネー・ローンダリング)対策のための金融活動作業部会(FATF)、経済協力開発機構(OECD)、太平洋経済委員会(PBEC)、国際連合(UN)及び世界貿易機関(WTO)2によって作成された既存の関連する地域的及び国際的文書並びに優れた慣行に学ぶことができることを認識し
この地域内の国々の政府として、既存の国際約束の適用を妨げることなく、また、我々の管轄権に関する法の基本原則その他の法の基本原則に従って、あらゆるレベルにおける腐敗を抑止し、防止し、それと戦うために具体的及び意味のある優先的措置をとることに同意する;
市民社会及びビジネス界の代表による、商取引及び市民社会活動における廉潔性の促進並びにこの地域内の国々の政府による腐敗対策努力に対する支援に関する誓約を歓迎する;
この地域の内外の援助国及び国際機関が、技術協力計画を通じて、この地域内の国々による腐敗との戦いを援助すると誓約したことを歓迎する。
1 |
この行動計画は、実施計画とともに、政策改革に向けた種々の原則及び基準を含む、法的拘束力を有さない文書であり、アジア太平洋地域の関心ある国々の政府が自主的に実施する旨政治的に約束するものである。 |
2 |
特に: 資金洗浄に関するアジア太平洋部会に支持されているFATF の40の勧告、ADB腐敗対策政策、APEC 政府調達原則、バーゼル合意、OECD 国際商取引における外国公務員贈賄防止条約及び改訂勧告、OECD公的部門における倫理的行為の向上に関する理事会勧告、OECD企業統治(コーポレート・ガバナンス)原則、PBECビジネスと政府との取引に関する憲章、国連組織犯罪条約及びWTO 政府調達に関する協定。 |
行動の柱
上記目的を達成するために、アジア太平洋地域の参加国政府は、次の三つの行動の柱に従い、適切な場合、ADB、OECD及びその他の援助機関並びに国々による援助を得て、具体的な措置を講じるよう努める。
第一の柱 - 公務のための効果的かつ透明な制度の策定
公務における廉潔性
以下により、公開、公平及び能率を保障し、また、最大の能力及び廉潔性を持った人物を任用できるような公務員の任用制度を確立する。
- 適切な生活水準の維持のために十分で、当該国の経済水準に応じた報酬制度の策定
- 同属登用、縁故採用及び情実主義の濫用を避け、公務の独立の達成を促し、また、政治任命とそうでない任命との間の適正な均衡を促進するための透明な任用及び昇進制度の策定
- 裁量的な決定及び裁量的な決定を行なう権限を有する公務員を適切に監視する制度の策定
- 腐敗を助長するような閉鎖性を減らすための定期的かつ適時の人事異動を含む人事制度の策定
以下により、利益相反を禁止し、公的資源の適切な活用を確保し、また、最高度の職業意識及び廉潔性を促進する倫理的及び行政的な行動規範を確立する。
- 利益相反に関する禁止又は規制
- 例えば個人の資産及び債務の開示及び/又は監督を通じて透明性を促進する制度
- 特に税務官署、税関その他の腐敗の起こりやすい分野における政府職員とビジネス・サービス利用者間の接触が不当かつ不正な影響力の行使を伴わないようにする健全な行政制度
- 公務員が自らの責任を正しく理解するための、関連する既存の国際基準及び各国の伝統的な文化における基準、並びに公務員に対する定期的な教育、訓練及び監督に妥当な考慮を払った行動規範の促進
- 公務員による腐敗行為の報告及び報告した公務員の安全及び職業上の地位の保護を確保する措置
説明責任(アカウンタビリティー)及び 透明性
以下により、効果的な法的枠組、運営慣行及び会計検査手続を通じて公務の説明責任(アカウンタビリティー)を保障する。
- 財政の透明性を促進するための措置及び制度
- 金融機関の規制及び監督に関する関連する既存の国際基準及び慣行の採用
- 公的機関及び公的部門に適用される適切な会計検査手続、並びに公務の遂行及び意思決定を適時に公表するための措置及び制度
- 公正な競争を促進し、腐敗活動を抑止する適切で透明な政府調達手続及び適切で簡素化された行政手続
- 公の監視及び監督を行なう制度の拡充
- 申請処理手続、政党の資金繰り並びに選挙活動及び支出といった事項についての情報を含む情報の公開制度
- ビジネスの負担となっている重複した、曖昧な又は過度の規制の廃止による規制環境の簡素化
第二の柱 - 贈収賄対策の強化及びビジネス活動における廉潔性の促進
効果的な防止、捜査及び訴追
以下により、積極的に贈収賄と戦うための効果的措置をとる。
- 効果的かつ積極的に公務員贈収賄罪と戦う抑止的な制裁を盛り込んだ法令の存在の確保
- 各国の国内法に即した、腐敗及び犯罪によって得られた収益の洗浄につき実質的な刑事罰を課す資金洗浄対策法令の存在及び効果的執行の確保
- 贈収賄罪が権限のある当局により十分に捜査され、訴追されることを確保するルールの存在及び執行の確保。 かかる当局は、銀行、金融又は商業取引の記録を入手し又は押収する命令及び銀行の守秘義務を解除する命令を行う権限が与えられること
- 省庁間協力の促進、捜査及び訴追が不正な影響力から免れ、また、効果的な証拠収集手段を有することの確保、腐敗と戦う当局を助ける者の保護、並びに適切な訓練及び資金の提供による、捜査及び訴追の能力の強化
- 国内法令に従い、(i) 効果的な情報及び証拠の交換、 (ii) 適切な場合の犯罪人引渡し、並びに (iii)没収対象資産の捜索及び発見における協力並びにこれら没収対象資産の迅速な外国当局による押収及び本国返還における協力を拡充することによる二国間及び多国間の捜査その他の法的手続の協力の強化
会社の責任及び説明責任
以下により、既存の関連する国際基準に基づき、会社の責任及び説明責任を促進するための効果的措置をとる。
- 行動規範、連絡経路の確立、腐敗行為の報告を行なった従業員の保護及び職員研修などの適切な企業内部のコントロールを定めた良い企業統治(コーポレート・ガバナンス)の促進
- 贈賄資金の税控除などの贈賄のあらゆる間接的な助長をも除去する法令の存在及び効果的執行
- 透明な企業会計を要請し、並びに会社の帳簿、記録、会計及び財務諸表に関して公務員への贈賄又は当該贈賄行為の隠匿を目的とした記載漏れ及び虚偽記載に対する効果的で、均衡がとれ、抑止力のある制裁につき規定した法令の存在及び十分な実施
- 許認可、政府調達契約その他の公的な行為を規律する法令をレビューし、公務員贈賄への制裁として公的部門との契約へのアクセスが否認され得るようにする
第三の柱 - 積極的な市民の関与を支援すること
腐敗に関する公開討議
以下により、腐敗の問題に関する公開討議を奨励するための効果的措置をとる。
- さまざまなレベルにおける啓蒙活動の開始
- 例えば、腐敗及びそのコストについての啓蒙、清潔な政府に対する市民の支援の動員、腐敗事例の文書化及び報告などによって廉潔性を促進し、また、腐敗と戦う非政府組織(NGO)の支援
- 腐敗に反対する文化の創出を目的とする教育計画の準備及び/又は実施
情報公開
以下により、一般市民及び報道機関が、国内法に従い、また、行政運営の実効性を損わない方法で、あるいは、いずれにしても行政機関や個人の利益を害さない方法で、公開情報-特に腐敗に関するもの-を入手し、伝える自由を有することを確保する。
- 司法その他政府機関に対する廉潔性及び説明責任を促進し、また、腐敗と戦う努力についての情報開示を含む公開報告の義務付けの確立
- 適切な情報を入手する一般市民の実質的な権利を提供する措置の実施
一般市民の参加
特に以下により、腐敗対策活動への一般市民の参加を促進する。
- 商工会議所、専門職団体、非政府組織、労働組合、住宅組合、報道機関その他の機関などの市民グループとの協力関係
- 内部告発者の保護
- 公的部門の計画及び活動の監視への非政府組織の参加
実施
これら三つの行動の柱を実施するために、アジア太平洋地域内の参加国政府は、添付される実施計画に同意し、その内容に従うべく努力する。
この地域内の参加国政府は、更に、この行動計画を広く行政機関及び報道機関に公表し、また、執行部会の会合の枠組みで会合してこの行動計画に含まれる行動の実施状況を評価することを約束する。
|