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OECD閣僚理事会
(概要と評価)平成13年5月19日
5月16~17日、パリにおいて、OECD(経済協力開発機構)閣僚理事会が開催され、我が国からは、植竹外務副大臣、平沼経済産業大臣、竹中経済財政担当大臣、風間環境副大臣ほかが出席した(議長はデンマーク。)。議論の結果採択された共同声明(コミュニケ)の主要点を含め、今般の閣僚理事会の概要及び評価は以下のとおり。1.総論
(1) 本年のOECD閣僚理事会は、先進30ヶ国の集まりであるOECD加盟国が、経済・社会・環境といった様々な観点から如何にして持続可能な開発・経済成長を遂げるかという中長期的に極めて重要なテーマを掲げ、「貿易」、「持続可能な開発」及び「経済情勢」を主な議題として開催された。 (2) 我が国政府からは、上記のとおり4名の大臣・副大臣が参加され、積極的に議論を展開された。小泉総理の下に新政権が発足して間もないタイミングであったこともあり、我が国の発言は、大変注目を集めた。また、このタイミングで我が国から大臣・副大臣が出席されたことは、他の加盟国に我が国の姿勢を印象づける上で効果的であった。 (3) 貿易セッションの一部には、非加盟国(中国、ロシア、シンガポール、インドネシア、南ア、ブラジル、マリ、ルーマニア)も参加した。WTO新ラウンドの立ち上げに向けた最大の課題の一つが途上国の参加を如何にして得るかにあることに鑑みれば、これら非加盟国との対話は時宜を得たものであった (4) OECD閣僚理事会の一部はG8サミットの前哨戦とも位置付け得るが、今回の議論のうち、経済情勢、貿易、輸出信用、高齢化、移民、贈賄防止、バイオテクノロジー/食品の安全性、電子商取引、タックスヘイブン問題、開発問題などは、G8サミットとの関係が深く、7月のジェノバ・サミットへの貢献をなす。 2.各論
(1)貿易
(イ)
(i) 11月にWTOカタル閣僚会議を控えたこの時期に、先進国の集まりであるOECDがWTO新ラウンド貿易交渉につきどのようなメッセージを打ち出せるかが注目された。 (ii) 討議の結果、(a)カタル閣僚会議で多角的貿易交渉の包括的な新ラウンドを立ち上げることへの決意が表明された。
(b) また、現在行われているサービスと農業の交渉については、ラウンド交渉の一環となることがその進展のためには必要なこと、そして、貿易の自由化と環境の関係についてきちんとした検討が行われなければならないことが明記された。貿易と労働の問題は、対話を通じて取り組んでいくことが確認された。 (c) 途上国にとっても新ラウンドが不可欠であるとして、途上国の懸念等を検討するための方法を模索することが促され、OECD加盟国が後発開発途上国のために取っている市場アクセス自由化のためのイニシアティブ等が歓迎され、また、能力強化・人材育成や技術協力の強化の重要性が指摘された。
(iii) OECDは、高い分析能力を活かして各種分析等を行っており、その一つに農業の多面的機能に関する分析があるが、今回の共同声明において、この作業の重要性が指摘された。また、漁業につき、持続的な資源管理と貿易自由化の関係に対処すべきことが盛り込まれた。 (iv) このような内容は、新ラウンド立ち上げに向けた気運を高める前向きなものである。 (ロ) 我が国よりは、(i)新ラウンドが「合意済み課題」(農業、サービス)に加え、鉱工業品の関税引き下げやアンチダンピングなどの既存ルールの見直し、投資など新規ルールの策定を含む幅広い議題を扱うべきである旨主張し、(ii)途上国配慮の具体策として、鉱工業品に対する市場アクセスの促進や途上国の対応能力強化などに積極的に対応していることを説明するとともに、(iii)近年増えつつある地域的貿易協定は、日・シンガポール経済連携協定が目指しているように、多角的貿易体制を補完・強化するものでなければならない旨発言した。
(2)持続可能な開発
(イ)
(i) 米国の京都議定書不支持表明を受けて、7月のCOP6再開会合に向けてOECD加盟国がどのようなメッセージを国際社会に発するかが注目された。 (ii) 京都議定書やCOP6再開会合への言及をめぐって意見が対立したが、我が国は気候変動について率先して行動をとるべきOECD諸国が、米国を含む形で前向きなメッセージを出すよう努力した (iii) 交渉は難航を極めたが、結局、「京都議定書に対する相違を認識しつつ、OECD加盟国政府は気候変動問題に一致して取り組むことに決意するとともに、ボンで開催されるCOP6再開会合に建設的に参加する。大半のOECD加盟国にとって、これは2002年までの京都議定書の発効を目指すことを意味する。それは、時宜を得た批准手続を伴ない、国際社会の最大限の幅広い支持を得るものである。」とされた。 (ロ) また、経済成長、環境保全、社会発展の3つを如何に同時に実現していくかが課題とされ、排出権等取引制度や環境関連税などの市場メカニズムを通じた手法を用いていくことが加盟国によって支持された。更に、OECDにおいて、来年南アで開催予定の「持続可能な開発世界サミット」への貢献という意味も込めて、持続可能な開発の達成度を測る指標を開発し、OECDのレビュー・プロセスに使用することを目指すこととされた。 (3)経済情勢
(イ) 我が国経済について、4月に発表された緊急経済対策を含め、我が国新政権の経済政策がどのように評価されるかが焦点の一つであった。
(ロ) 共同声明では、「自律的な景気回復見通しは短期的には不確実であり、物価の下落が継続し、政府の債務が増加している」との認識で一致し、「消費者物価上昇率が安定的にゼロ以上となるまで、金融政策は潤沢な流動性を供給する必要があ」り、「信頼できる財政再建と構造改革の中期的な戦略が遅滞なく作成されなければならない」とされた。また、「金融及び企業部門のバランスシート問題を解決し、また証券及び不動産市場における構造改革を強化するという日本当局の強い意図を歓迎する。この強い意図の精力的な実施が必要であり、規制改革の速度は速められるべきである」とされた。これは、我が国政府の経済政策及び構造改革への取り組みに対する強い期待が表明されたものと言える。 (4)その他
(イ) 1990年代の好調な米国経済が情報通信技術(ICT)の活用による「ニュー・エコノミー」の到来によるものなどと言われたことを踏まえ、一昨年来OECDが行ってきた加盟国の成長パフォーマンス格差の原因分析等の結果が「成長プロジェクト」報告書として今回の閣僚理事会に提出された。この報告書では、ICTの活用が経済成長に与える影響を重視すると同時に、ファンダメンタルズの強化、技術革新の支援、人的資本への投資、企業創出の刺激も並行的に行う必要があると指摘している。
(ロ) 最近世論の関心を呼んでいる食品の安全性については、科学及びルールに基づいたアプローチが基本であることが確認された上で、科学的証拠が不十分であり、食品の安全性へのリスクに対処するための予防措置が適用された場合には、当該措置は、WTO関連協定と整合的な再検討及び現行のリスクの分析の対象とすべきことで意見が一致した。また、7月にバンコクでバイオテクノロジーに関する国際会議を開催することが共同声明に盛り込まれた。
(ハ) OECDは、加盟国内外の有害な税制(加盟国外の「タックスヘイブン」を含む。)を除去するための活動を行ってきた。最近、米国新政権がこの活動に対する立場の見直しを発表したことから、他の加盟国との間での軋轢が心配されたが、結局、共同声明では、このOECDのプロジェクトの結果を期待する旨が盛り込まれた。 (ニ) その他、OECDが取り組んでいる先進社会の取り組むべき課題として、贈賄防止、公的ガバナンス(統治)、コーポレート・ガバナンスなども取り上げられた。 3.「OECDフォーラム2001」
(1) 閣僚理事会と並行して、政官財学の有識者等が参加する公開討論会である「OECDフォーラム2001」が開催され、持続可能な開発、IT、貿易などの分野で議論が行われた。我が国からは、高坂㈱栗田工業会長(経済同友会環境・資源エネルギー委員長)、篠原㈱野村総研主任コンサルタント、後藤一橋大学教授、磯村パリ日本文化会館館長、田中外務省経済局長が参加した。 (2) 田中経済局長が出席したセッション「発展に向けた貿易の恩恵の全面享受」には、ムーアWTO事務局長、ラミー欧州委員、龍永図 中国対外貿易経済合作部副部長などが参加し、多角的貿易体制の強化、WTO新ラウンドの必要性等につき議論がなされた。 (3) 経済・社会問題に対する市民社会の関心が高まる中、このように各界の有識者等が集まり、公開で率直な議論を交わしたことは、有意義であった。
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