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第40回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)

平成13年5月17日
持続可能な未来に向けて

1. OECD閣僚理事会は、2001年5月16日から17日まで、デンマークのポール・ニューロップ・ラスムセン首相、モーゲンス・リッケトフト外務大臣及びマリアンヌ・イェルヴェズ経済大臣兼北欧協力担当大臣の議長の下、日本から平沼赳夫経済産業大臣、竹中平蔵経済財政担当大臣、植竹繁雄外務副大臣及び風間昶環境副大臣、並びにスロバキア共和国からブリギタ・シュメグネロヴァー財務大臣、ラースロー・ミクローシュ環境大臣及びペテル・ブルニァ経済省副大臣が副議長として補佐を務めて開催された。OECD経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)との協議が行われた。

2. 我々は、スロバキア共和国のOECD加盟を歓迎する。スロバキア共和国の加盟は、1991年にチェッコ、スロバキア両共和国、ハンガリー及びポーランドとのOECDの移行期のパートナー・プログラムが開始されたことにより加速された10年以上に及ぶ改革の進展を完了させるものである。

3. 我々の社会は、他の全ての国々の社会と同様に大きな変遷に直面している。我々は、OECDが、OECDの比較優位のある分野において、浮上してくる政策課題を特定・評価し、新しい政策概念やアプローチの開発を行う開拓者としての役割を担い続けることを期待する。OECDは、その独特かつ不可欠な分析・対話・政策策定の政府間プロセスを通じて、より深い国際理解、より安定した国際経済体制及び全世界の繁栄の促進に貢献している。

4. 我々は、全ての人々の利益のためにグローバリゼーションを形成し、最も貧しい人々が取り残されないよう確保していくことにコミットする。我々は国内的及び国際的にもこの目標の達成に影響する広範な政策の間の一貫性を強化する必要があることを認識する。特に貿易・投資及び開発政策は、持続可能な開発及び貧困削減に重要な貢献をもたらすことができ、これらの政策分野における一貫性の強化は特別な注意に値する。我々はこの作業に関して、OECDの支援を期待する。

OECDと世界

5. OECDによる世界のあらゆる地域の国々との協力及び対話は、より平和な世界に向けた経済、環境、及び社会的進展を進めていくための強力な手段である。このプロセスは、ルール及び価値に基づいた開かれた世界経済の発展に向けた我々のコミットメントを共有するOECD非加盟国に幅広く開かれている。我々は、OECD非加盟国との協力プログラムを支持し、非加盟国のOECDの作業への参加に対する関心の増大を歓迎する。OECDは、選択的であり、かつOECDの高い加盟水準という伝統並びに加盟国にとっての効率性及び有用性を追求する一方、相互利益に基づき、同じ価値を共有する国の加盟に対して引き続き開放的である。我々は、改革及び非加盟国を国際経済体制に成功裏に統合することの双方を追求していく上で、OECDが非加盟国との間で架けることができる橋を評価する。

6. 本年の理事会におけるブラジル、中国、インドネシア、マリ、ルーマニア、ロシア、シンガポール及び南アフリカの閣僚との我々の討議は、多角的貿易体制への信頼の強化への貢献であり、本年11月のドーハにおけるWTOの新ラウンド交渉の立ち上げに向けた一歩である。

7. OECDの長年のパートナーであるBIAC及びTUACとの協力の強化は、この1年間、NGOその他の市民社会の代表との協力活動の強化により補完されてきた。この継続的な対話は、公的機関に対する信頼を構築し、世界的な経済・社会的変化のもたらす利益及び課題に関する一般の理解を促進する。我々は、OECDフォーラム2001を、我々の作業にとり貴重な貢献となる多様な利害関係者間の対話の場として歓迎する。

経済見通し

8. 2000年6月の前回閣僚理事会以来、世界経済は、顕著に減速してきている。OECD域内の2001年の成長率は、現在、昨年の半分の約2%に低下すると予想されている。更に、いくつかの大きな経常収支不均衡が継続している。しかしながら、より力強い成長への回帰に向けた基礎が存在しており、インフレは低く留まることが期待されている。マクロ経済政策と構造改革は、生産性の向上及び長期的な雇用の増大を目標とすべきである。

9. 米国経済は、顕著に減速しつつある。長期的なファンダメンタルズは、引き続き強固である。金融政策は、引き続きインフレなき成長を目標とすべきである。財政政策は、民間貯蓄の奨励を含め、経済効率、財政の健全性に中期的に焦点を当てるべきである。

10. 日本における自律的景気回復の見通しは短期的には不確実であり、物価の下落が継続し、政府の債務が増加している。消費者物価上昇率が安定的にゼロ以上となるまで、金融政策は潤沢な流動性を供給する必要がある。現在の財政政策は景気回復を促進してきているが、信頼できる財政再建と構造改革の中期的な戦略が遅滞なく作成されなければならない。我々は、金融及び企業部門のバランスシート問題を解決し、また証券及び不動産市場における構造改革を強化するという日本当局の強い意図を歓迎する。この強い意図の精力的な実施が必要であり、規制改革の速度は速められるべきである。

11. 欧州における成長は、本年、減速するであろうが、見通しは良好である。経済的なファンダメンタルズは引き続き良好であり、失業は引き続き減少するであろう。持続的に長期的な成長を更に強化し、失業を減少させるために、労働、生産物及び金融市場の効率的な働きを強化する更なる構造改革が必要である。ユーロ圏では、物価安定についての上方リスクが減少する中、金融政策の緩和の余地が生じている。ここ数年の財政引き締めは、殆どの欧州諸国において実施されつつある減税の余地を生んでいる。これらは需要を支え、労働と投資へのインセンティブを高め、そしてそれにより供給サイドの状態を改善するであろう。これらの国における減税は、公的支出に対する確固とした管理を伴う必要がある。人口の高齢化は、国家財政に大きな負担を課し、殆どの国々において年金制度の強化と公的債務の更なる削減の必要性を生ずるであろう。2002年1月1日のユーロ紙幣及び貨幣の導入は、ユーロ圏と世界経済の双方にとって潜在的に重要な利益を伴うものであり、経済統合に更なる弾みを与えるであろう。

持続可能な開発:経済的、環境的及び社会的目的の統合

12. 持続可能な開発は、OECD加盟国政府とOECDの主要な目的である。持続可能な開発の3つの要素-経済成長の向上、人的及び社会的開発の促進並びに環境の保護-は、グローバルな性格を有する不可欠な公共財の実現のために、その共通であり区別された責任に則ったOECD、移行国及び開発途上国による協調的な国際行動を必要とする相互依存的な目的である。我々は、歴史的に、そしてOECD加盟国が世界経済及び環境において引き続き有する重要性のために、OECD加盟国が世界的な持続可能な開発におけるリーダーシップについて特別な責任を有することを認識する。我々は、これらの課題の緊急性、及び政策の形成と実施とのギャップを認識している。我々は、このギャップを埋めることにコミットしており、持続可能な開発という我々の共同目標を達成するためにOECD非加盟国と共に精力的に作業していく。

13. 我々は、2002年9月のヨハネスブルグにおける持続可能な開発のための世界サミットが成功するために、国内的にも国際的にも、真の前進がなされなければならないことに同意する。我々は、我々の全ての国において、世界サミットまでに持続可能な開発のための戦略が策定されることを確保する。OECDの持続可能な開発ラウンドテーブルは、利害関係者間の国際的な対話のためのフォーラムとしての自らの役割を強化するべきである。我々は、OECDの「21世紀の最初の10年間のための環境戦略」を支持し、OECDがその実施を支援し、監視することを期待する。我々は、持続可能な未来のエネルギーについてのIEA閣僚理事会コミュニケを歓迎する。

14. OECDのレポート「持続可能な開発の促進のための政策」は、経済、環境及び社会的目的をより良く統合し、また経済成長が一連の環境への圧迫に結びつかないようにする(デカップリング)ための政策的枠組を提示している。報告は、全ての政策手段並びに関連するコスト及び利益を考慮する確固たる科学に基づいた健全な分析の必要性を強調している。我々は、報告から抽出される以下の政策勧告を支持する。

市場が機能するようにすること:全てのOECD加盟国は、市場を基礎とした手段をより良く活用し、また、それらと規制とを効果的に結合させるべきである。自発的なイニシアティブを奨励するための措置及び意識を喚起するための計画は、一定の役割を担っている。権限取引制度や環境関連税等の手段を実施すること、及び農業、漁業、運輸、エネルギー、製造業その他における環境に有害な補助プログラムの段階的廃止が追求され、各国の状況に従って適用されるべきである。そうすることは、持続可能な消費及び生産のパターンの発展に貢献するであろう。

気候変動への対応:我々は、気候変動が最も緊急な地球規模の環境の課題であり、気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で、移行国及び開発途上国と緊密に協力しつつ行われる、その共通だが差異のある責任に則った、OECD加盟国による強力な指導力と行動を必要とするものであると認識している。OECD加盟国政府は、先進国が率先して、地球規模の温室効果ガス排出を大幅に削減し、また、気候系への危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガスの濃度を長期的に安定させるために、その吸収源及び貯蔵庫を保護し、強化する必要があることを認識している。我々は、気候変動枠組条約の下に設定されているものも含め、排出抑制及び削減目標等の各国のコミットメントを完全に実施する。京都議定書に対する相違を認識しつつ、OECD加盟国政府は気候変動問題に一致して取り組むことに決意するとともに、ボンで開催されるCOP6再開会合に建設的に参加する。大半のOECD加盟国にとって、これは2002年までの京都議定書の発効を目指すことを意味する。それは、時宜を得た批准手続を伴ない、国際社会の最大限の幅広い支持を得るものである。我々は、OECDに対し、これらの問題についての分析及び国際的な対話に引き続き貢献するよう要請する。

天然資源の管理:天然資源の非市場的価値及び長期的な影響を一層考慮に入れるため、天然資源の市場価格は、全ての環境及び社会的コスト並びに経済活動上の利益を反映したものとならなければならない。進展のためには、環境上の閾値及び非市場的価値に関する研究を通じ知識基盤を改善すること、市場が保全の目標により資するようにすること、並びに廃棄物の流れに関する純コストを削減することが必要である。

科学と技術の活用:科学的調査及び技術革新は、資源投入の効率性と成長の環境的な質を高めることができる。環境目的を達成するための市場のシグナルの利用を拡大することは、持続可能な開発への科学技術の貢献を促進するであろう。新しい情報通信技術(ICT)は、原料、エネルギー及び輸送の利用の大幅な削減の可能性、並びに環境政策の形成、実施及び監視における潜在的な新しい方向性を提供する。

意思決定及び情報の強化:政府のあらゆるレベルにおける政策の一層の統合と一貫性、議会のより密接な関与、並びに情報及び意思決定への参加への一層の一般人のアクセスを含む市民及び市民社会組織との関わりのためのより良いメカニズムが必要である。持続可能な開発のための政策を形成するにあたっては、各国は、科学的確実性を欠く状況においては、適切な場合には、予防策を講じるべきである。

世界経済との関連:貿易、投資、環境及び社会的政策は、一貫し、相互に支え合うものであるべきである。グローバリゼーションと技術進歩の利益が広く分かち合われることを確保するためには、開かれた世界市場が必要である。我々は、また、OECD諸国の市場への開発途上国によるアクセスの改善、並びに能力構築(キャパシティー・ビルディング)、技術分野における協力、良いガバナンス(統治)及び貧困削減への支援を通じて、開発途上国における環境及び社会的に持続可能な成長を促進しなければならない。

15. OECDは、以下によって政府を引き続き支援し、来るべきヨハネスブルグ・サミットに貢献するため、2002年に我々にその進捗について、特に持続可能な開発に関する指標の使用について報告する。

OECDの経済、社会及び環境についてのピア・レビュー・プロセスに組み込み、また統計的及び科学的データにおけるギャップを埋めるため、経済成長が環境の悪化に結びつかないようにすること(デカップリング)を含め、持続可能な開発の3つの分野全てにわたって進捗を計測する合意された指標を開発すること

どのようにして政策改革-特に、市場に基礎をおいた手段のより良い利用や環境に有害な補助金の削減-に対する障害を乗り越えられるかを特定し、これらの手段に関する分析作業を深化させること

人的・社会的資本に関する作業も含む、持続可能な開発の社会的側面、及びその経済及び環境面との相互作用について更に研究すること

経済、環境及び社会政策の一層の一貫性及び統合を達成するための指針を提供すること

持続可能な開発の社会的側面
社会的一体性


16. 社会的一体性の深化は、持続可能な開発にとり中心的な目標である。したがって、我々は、貧困及び社会的疎外の原因と戦うことにコミットしている。恒常的な低所得、労働及び学習の機会の欠如、並びに良質の公共サービスへのアクセスの欠如は、特定の集団と地域に影響を与えており、持続可能な開発に向けた前進を妨げている。労働が可能な全ての者に労働及び良質のキャリアの機会を与えることは、貧困と社会的疎外と戦うための如何なる戦略においても主要な要素である。近年、OECDにおける失業は非常に減少しているが、適切な社会的セーフティ・ネットの文脈において、長期的な失業及び給付金依存を減少させるために更なる努力が必要である。我々は、社会的不平等に取り組み、急激な経済構造改革への調整を促進し、成長の見通しを高めることを支援する雇用指向型の社会政策についてのOECDの作業を歓迎する。2000年10月9、10日にロンドンにて行われた「すべての人への機会」と題する英国/OECD閣僚会合は、政府の異なる部局にまたがった協調的行動が如何に効果的に剥奪の問題に取り組むことができるかを示した。

高齢化

17. 人口の高齢化の結果は、引き続きOECD諸国経済の主要な懸念となっている。退職後の収入に関する制度についてのOECDのレビューは、各国が改革を行っていることを示しているが、こうした制度を強化し、「活力ある高齢化」を実現するためには更なる努力が必要である。高年齢期に十分な収入を確保するという根本的な目標を支持するために、高齢労働者による労働力への参加の継続を促し、また、国内の事情を考慮しつつ様々な形態の年金の間でより良いバランスを達成するための更なる改革が必要である。我々は、トリノ憲章への貢献を含む、活力ある高齢化についてのOECDの作業を歓迎する。我々は、高齢労働者の雇用、再訓練及び雇用維持への障壁に早急に対処しなければならず、我々は、この課題についてのOECDの作業を期待する。

医療(ヘルス)

18. 健康は、持続可能な開発にとり極めて重要である。医療制度は、社会的一体性における重要な要素であると共に、多くのOECD諸国においてもっとも大きなサービス部門を代表する。医療制度の効率性、有効性、結果の公平性、その公的財政への影響、並びに医療の進歩、高齢化及び高まる期待といった課題へのその対応能力のために、創造的な政策アプローチが必要となっている。OECDの「医療(ヘルス)プロジェクト」は、これらの問題について政策指針を与えるものであり、また、我々は、2001年11月の医療制度状況の改善についてのオタワ会合に期待している。

移民

19. 移民は、その受入国と送出国、これらの国々の政府及び一般市民にとって、益々差し迫った問題である。移民は、多くの社会、経済、開発及び外交政策上の課題及び機会をもたらしている。OECDは、移民の傾向及び政策を監視する上で参考となる主要な場である。我々は、異なる技術レベルにある労働者の国際的な移動も含め移民受入国と送出国における移民の経済的及び社会的な影響の分析を深化し、拡充することをOECDに期待する。

成長、技術及び人的資源

20. 閣僚は、1999年5月の閣僚理事会において、OECD加盟国間の成長の相違の基礎的な要因を分析し、長期的な成長の見通しを強化することができる要因、制度及び政策を特定するようOECDに要請した。我々は、報告書:「ニューエコノミー:熱狂を超えて」を歓迎し、その主な結論を支持する。新しい技術、特にICTは、過去十年間における成長パターンの差異の背景にある一つの要因に過ぎない。他の要因には、労働の使用や質あるいは労働と資本の組み合わせの効率性の強化が含まれる。新しい成長の機会を捉えるためには、相互に強化する一連の政策が必要である。

ファンダメンタルズの最適化:安定したマクロ経済政策は、成長戦略の成功、高レベルの雇用及び価格安定の前提である。財政の規律及び生産性指向型の賃金の伸びは、低インフレに貢献し、不確実性を減少させ、そして資源配分における価格メカニズムの効率性を向上させ、また消費者及び投資家の自信を強化する。より開かれ、競争的で、効率的な製品、金融及び労働市場並びに制度は、変化に拍車をかけ、経済の適応性を増す。良好なマクロ経済の条件と構造・規制改革は、互いに強化し、技術革新の機会と成長の可能性を増大させる。

新技術は、教育及び人的資本開発の役割及び重要性を高めている:初期幼児教育及びケアへのアクセス、基礎教育における強固な基礎、教育と労働市場の間のより密接な連関を伴った学校から職場へのより円滑な移行及び生涯にわたる教育機会を提供する効果的な訓練制度を含む、包括的な生涯学習戦略が必要である。我々は、新しい技術に対応するための人的資源の能力を高め、労働市場の制度を労働の性質の変化に適応させる必要性を認識する。我々は、2001年4月の教育大臣会合において採択された野心的な枠組みである「万人のための能力への投資」を歓迎する。

研究、革新及び企業家精神は、成長の鍵である:我々は、基礎研究への適切な投資に対するコミットメントを維持し、研究開発のための公的資金の効率性及び有効性の改善、技術革新を促進しその普及を確保する知的所有権制度の強化及び科学と産業との間の効果的な相互作用に対する障壁を取り除くことを追求する。我々は、事業及びリスクを取ることにとり好ましい環境、特に、ボローニャ憲章に示されているような新企業や中小企業にとって好ましい環境を確保するために作業する。我々は、高いリスクを許容する資金へのアクセスを改善し、煩雑な行政の規制及び破産規定を見直すことにコミットする。

ICTの成功裏の利用のための特定の政策:我々は、ICT部門、特に通信における競争強化及びこれらの部門に対する利用者の信頼の強化によりICTの普及を促進するため努力する。公共部門及び民間部門は、電子商取引などのICTのアプリケーションが安全で信頼して利用できるようにすることを確保するため協力するべきである。

21. 成長プロジェクトの作業は、成長パフォーマンスの改善についての我々の関心にとり中心的なものである。OECDは、ICTの役割、人的・社会的資本及び地方・地域レベルを含め成功をもたらす競争的な事業環境を促進させる要因について理解を促進するために分析を継続し、その基準作りと構造改革のピア・レビューを強化する。また、OECDは、成長と持続可能な開発との間の関係についての作業を深める。OECDは、2003年に我々に報告する。

22. 1998年の電子商取引に関するプライバシー、認証及び消費者保護に関するOECD閣僚宣言の実現に向けて、順調な進展がみられる。電子商取引への信頼を深めるために、これらの分野における作業は継続される。効率的、効果的かつ透明性のある電子商取引のための租税の枠組みも不可欠である。オタワにて作成された「電子商取引の課税の基本的枠組み」の実施は、前進しており、2001年6月にモントリオールにて開催される「電子世界における租税行政会議」の議題となる。

23. 「情報格差(デジタル・ディバイド)」が先進国と開発途上国との間と同様に、OECD加盟国内及び加盟国間でも生じており、仮に各国が技術のもたらす新しい機会に適切に対応しない、あるいはできない場合には、更に広がるであろう。OECDの作業は、この格差の是正には、競争指向の政策と適切な規制の枠組が不可欠な要素であることを示している。我々は、2001年1月に行われたこれらの問題についてのドバイ会合の結果を歓迎する。我々は、沖縄IT憲章を実施するためのG8ドット・フォースのイニシアティブへの重要な貢献を通じたものを含め、移行国及び開発途上国並びに他の国際的な組織との協力をOECDが引き続き構築していくことを奨励する。我々は、2002年のデジタル経済に関するOECDグローバル・フォーラムに期待する。

24. 地域間の経済的・社会的格差は拡大してきており、繁栄への展望は一様ではない。OECDの地域レビュー(注)は、我々の政策の地域的及び地方的側面に対し、重要な貢献をなす。

(注)既にレビューが完了した国は、ハンガリー、イタリア、韓国。地域は、テルエル及びバレンシア中央部諸郡(CCV)(スペイン)、ズメルカ(ギリシャ)及びベルガモ(イタリア)。2001/2年には、カナダ、メキシコ、スイス及び他の加盟国のいくつかの地域についてレビューがなされる見込み。

25. 我々は、2000年11月に開催された二つの会合「ジェンダー主流化:競争力と成長」会合及び「中小企業の女性起業家」会合の成功を歓迎する。我々は、OECDがジェンダー分析をその作業に一層組み入れ、OECD内における男女比を改善するための措置をとることを期待する。

ガバナンス(統治)

26. 効果的かつ一貫性のある公的ガバナンスの強化は、依然政策課題における優先事項である。立法府を含む民主主義制度の効果的な実行及び腐敗との戦いは、良いガバナンスの中心的な要素である。一層の開放性、透明性及び説明責任(アカウンタビリティー)は、OECDの内外の政府にとって、指導的な原則とならなければならない。OECDは、引き続き公的ガバナンスに関する非加盟国との対話を通じた重要な貢献を行うべきである。我々は、2001年3月のナポリにおける「電子政府に関する第3回グローバル・フォーラム」の結論を歓迎し、OECDに対し電子政府のもたらす課題と機会を更に探求することを要請する。

27. 加盟国において、規制と規制緩和の比較上の利益とコストに関する国民による議論が盛んになっている。OECDの規制改革についての継続的な分析は、注意深く策定された政策は規制の質を向上させ、消費者の選択を強化し、価格を低下させることを示している。加盟国(注)における規制改革のレビューは、規制管理における実質的かつ分野横断的なガイダンスを提供している。我々は、産業や国による違いを認識する一方で、競争を促進する公益事業改革におけるガイダンスを提供する、OECDの「規制産業の構造分離に関する勧告」を歓迎する。我々は、私的年金の規制に関する原則及び最良の慣行の形成に関するOECDの作業を支持する。

(注)既にレビューが完了した国は、チェコ共和国、デンマーク、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、スペイン及び米国。2001/2年には、カナダ、ポーランド、トルコ及び英国のレビューが予定されている。2002/3年のレビューでは、ドイツ等数カ国が候補として挙がっている。

28. 腐敗との戦いは、依然優先度が高い。贈賄防止条約の批准において、更なる進展が見られてきた。32ヶ国が批准書を寄託したが、中には国内担保立法が欠けているか、不十分である国もある。贈賄に対する税制上の控除可能性の効果的な除去を含め、この条約及び関連する勧告の実施のモニタリングは、厳格に追求され、強化されなければならない。OECDは、関連の諸問題、即ち、外国の政党に関連した贈賄行為、外国公務員となると予見される者に対して約束または供与された利益、資金洗浄(マネー・ロンダリング)法における前提犯罪としての外国公務員に対する贈賄、贈賄取引における海外子会社及びオフシェア・センターの役割に取り組む。我々は、地域的なイニシアティブを含め、OECDの域外の幅広い国々を腐敗に対する戦いに関与させる努力を奨励し、また一定の資格を有する国によるこの条約への加入を支持する。

29. 我々は、現在行われている有害な税制に関する作業に留意し、OECDのプロジェクトの結果を期待している。

企業の世界:ガバナンス(統治)及び責任

30. 我々は、世銀との協力によるOECDの作業、特に昨年アジア、ラテン・アメリカ、ロシア及びユーラシアにおいて成功裏に行われたコーポレート・ガバナンス・ラウンドテーブルにおける作業を歓迎する。これらのラウンドテーブルは、コーポレート・ガバナンスを世界規模で強化する上で重要な役割を果たしており、2005年に行われるOECDコーポレート・ガバナンス原則についての最初の評価に向けた準備についてOECDを支援する。我々は、その準備に向けて、分析作業及び加盟国間のコーポレート・ガバナンスに関する経験についての情報交換を期待する。我々はまた、腐敗及び資金洗浄と戦う努力に貢献するOECDの「不正目的による会社形態(注)の悪用に関する報告」を歓迎する。

(注)会社形態とは、会社、信託、財団、有限責任のパートナーシップ等、それにより幅広い商業活動が営まれ、資産が保有される法主体である。

31. 企業責任についての民間イニシアティブも、増加している。我々は、「OECD多国籍企業行動指針」の効果的実施を支援する上でこの積極的な発展を基礎にすることを促す。我々は、指針に対するコミットメント及び2000年の指針の見直しを支えた現行の建設的対話を全ての利害関係者が追求する必要を再確認した。我々は、合意されている企業責任の分野における更なる分析作業を支持し、来るべき「各国連絡窓口の年次会合」が指針の実施を更に促進することを期待する。

32. 国際投資は、グローバルな持続可能な成長及び非加盟国の世界経済への統合の重要な原動力である。2001年11月の「投資に関するOECDグローバル・フォーラム」及び2002年にメキシコで開催される国連開発資金ハイレベル会議は、OECDの外国直接投資に関する分析作業から利益を受けるであろう。我々は、エストニア、イスラエル、ラトヴィア、リトアニア、シンガポール、スロベニア及びヴェネズエラの「国際投資及び多国籍企業宣言」への加入の意思を歓迎し、他の国々も同様に加入することを奨励する。

多角的貿易体制

33. 我々は、11月にドーハで行われるWTO閣僚会議における多角的貿易交渉の包括的な新ラウンド立ち上げにコミットしている。我々は、この目的に向かって、WTOにおける全ての国とともに建設的に関与していく。「合意済み課題」であるサービスと農業の交渉においては進展が見られる。我々は、多角的貿易体制を強化するための努力は、幅広くかつバランスのとれた交渉及びルールに基づく機関としてのWTOの強化が必要であると認識する。新ラウンドのより幅広い枠組みは、「合意済み課題」の前進に資するとともに、全ての参加国が求めているより広い利益の配分の見通しを提供する。我々は、多角的貿易体制を強化すること及び保護主義の圧力を拒否することに対してコミットメントを新たにする。

34. 全てのWTO加盟国の懸念と関心は最終的な結果に反映されなければならず、交渉は透明な形で行われる必要がある。我々は、21世紀のニーズ及び我々の共通の目標である持続可能な開発に対応するような貿易自由化及び強化されたWTOルールを目指さなければならない。貿易自由化と環境及び天然資源の持続的利用との関連は、注意深く明らかにされる必要がある。全てのWTO加盟国は、交渉の分野と方法を検討するにあたって、創造的且つ柔軟である必要がある。貿易及び労働その他の社会開発事項から生じている懸念は、WTOを含む全ての関係国際機関の専門性を踏まえた対話を通じて対応されなければならない。

35. 開発途上国にとり、その経済成長を刺激し、貧困を緩和し、また多角的貿易体制への統合を促進する必要から、新ラウンドは不可欠である。我々は、農業並びに繊維及び衣類を含む多くの分野に対して開発途上国が特に関心を有することを認識する。ウルグアイ・ラウンド合意の実施問題に関し、これまでに一定の進展がなされており、我々は、全てのWTO加盟国に対し、開発途上国の要請と懸念を検討するための方法を模索し、ドーハ閣僚会議の準備が進行するにつれ、信頼を醸成していくことを強く促す。我々は、後発開発途上国のために特恵的な市場アクセスの自由化を行うOECD加盟国の最近のイニシアティブ及び貿易を貧困削減戦略プログラムに組み入れる動きを歓迎する。開発途上国がより開かれた市場から利益を得ようとするのであれば、能力構築(キャパシティー・ビルディング)及び技術協力の強化もまた極めて重要である。我々は、最近改訂された統合フレームワーク・イニシアティブを支持する。

36. グローバリゼーション並びに貿易及び投資の自由化の過程に対する市民社会の強い関心を考慮し、我々は、透明性並びに国民との対話の拡大及び持続にコミットしている。我々は、効果的で予見可能なガバナンスの枠組み及び国際機関間におけるより一層の一貫性の文脈において、相互に支え合う環境及び社会政策と結びつく場合には、漸進的な多角的自由化及びルールの強化は、持続可能な開発にとっての基礎であり、世界的な技術革新、成長及び人類の福祉の増進のための主要な推進力であると確信する。WTOに整合的な特恵的な貿易協定は、一貫性のある多角的ルール及び漸進的な多角的自由化を補完するものとなりうるが、これらに代替することはできない。

37. 我々は、多角的貿易体制を強化し、また開発のあらゆる段階における国々にとり何が問題となっているかについての理解を構築するための継続的な努力において、OECDは主要な役割を有していると考える。OECDは、その分析的作業及び交渉とは異なる政策対話を通じ、加盟国相互間及び域外の国々との間の架け橋となり続ける。我々は、貿易と開発協力政策との間のより一層の一貫性を促進するためにOECDにおいて現在進行中の努力を歓迎する。

輸出信用

38. 輸出信用政策は、持続可能な開発に積極的に貢献することが可能であり、その目的との一貫性を保つべきである。我々は、輸出信用作業部会における「輸出信用と環境に関する共通アプローチ勧告」に関する合意に向けた実質的な前進を歓迎し、我々が昨年要請したように、作業部会が2001年末までのできるだけ早い時点にこの作業を終了させることを奨励する。我々はまた、作業部会の「贈賄と輸出信用に関する行動声明」、及び重債務貧困国における非生産的支出についての作業部会の作業について、多くのOECD加盟国が自発的に後者の作業の対象を他の低所得国にも広げる用意があることと共に歓迎する。我々は、「非生産的支出と輸出信用についての原則宣言」を完成させ、この分野における透明性の向上を引き続き促進するように作業部会に求める。我々は、輸出信用アレンジメントの全参加国が「農業に関する輸出信用了解」の案について完全な意見の一致に至っていないことを強く遺憾に思うとともに、この了解について緊急に妥結することを求める。我々は、特にWTOにおける最近の進展に鑑み、輸出信用アレンジメントのファイナンス関係条項に関する更なる作業を奨励する。我々は、1994年の「造船了解」の輸出信用条項について、これを2001年末までに実施することができるよう、引き続き作業を行うことをOECDに要請する。

造船

39. 我々は、OECDに対し、造船において正常な競争条件をもたらすための解決策を模索するための努力を倍加することを要請し、また、OECD域外の造船国に対し、この作業に参加するよう奨励する。

農業及び漁業

40. 農業及び漁業は、持続可能な開発及び多角的貿易体制にとって、鍵となる部門である。 l 過去2年間の増加の後、2000年には減少に転じたOECD域内における農業への助成は、生産者支持推定量(PSE)によれば、約3,270億ドルと依然高額であった。市場価格支持及び産出に対する支払いからのある程度の転換がみられるにも関わらず、これらは殆どの国において依然支配的な支持の形態であり、先進国及び開発途上国の双方において、生産及び貿易に結果として悪影響を与えることになる。「合意済み」課題(注)におけるWTO交渉は、更なる改革への重要な機会を提供しており、この改革は経済面、環境面及び社会面での利益をもたらす。OECDによる多面的機能、デカップリング(経済成長と環境悪化の結びつきの回避)、ウルグアイ・ラウンド合意の影響及び環境との関連性を含む様々な貿易関連事項についての分析は、農業政策及びその国際的影響への理解のために重要な貢献となる。 l 漁業政策は、持続的な資源管理と貿易自由化との関係、漁業を非持続的なものとする諸要因、及びOECDの最近の研究「責任ある漁業への移行」に基づきOECDにより更に分析されることとなる補助金のうち有害とされるものを避ける必要性に対処しなければならない。OECDのこの研究は、貴重な貢献であり、我々は、OECDが、FAO及びその他の国際機関と協力しつつ、政策策定のための情報提供のためにこれらの分野における分析を深めることを期待する。 (注)WTO農業協定20条参照

食品の安全性

41. 食品の安全性は、消費者及び政府にとり引き続き優先順位が高い。我々は、科学及びルールに基づいたアプローチが引き続き国内及び国際レベル双方において政策の基本でなければならないことに合意する。科学的証拠が不十分であり、食品の安全性へのリスクに対処するための予防措置が適用された場合には、当該措置は、WTOの衛生植物検疫措置の適用に関する協定と整合的な再検討及び現行のリスクの分析の対象とすべきである。他の国際機関との協力の下、また、OECDの認められた専門分野に照らして、OECDの作業計画は、食品の安全性に関するより幅広い問題についての分析及び政策対話に貢献するであろう。

生命科学とバイオテクノロジー

42. 生命科学及びバイオテクノロジーは、生活の質、人間の健康及び環境の質の改善のために更に重要となっている。これらの前進はまた、個人及び社会に重要な倫理的、社会的、経済的及び安全上の課題を提起している。我々は、生物多様性-その研究、保全及び持続可能な利用、並びに遺伝資源の利用からの利益を衡平に分配すること-並びに生物多様性のデータを万民に利用可能とすることの重要性を強調する。我々は、これらの分野、特に生物資源センター及び1999年6月のOECD科学大臣会合において支持された地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の設立におけるOECDの貢献を歓迎する。我々はまた、ヒューマン・ゲノム・マッピングにより発生する課題に関するOECDの作業の進展に期待する。

43. 我々は、バイオテクノロジー問題における国際理解を深める、バンコクで2001年7月に開かれる英・OECD共催による「新しいバイオテクノロジー、食品及び穀物:科学、安全及び社会に関する会議」、及び11月に米国が主催する「遺伝子組み替え生物の環境への影響に関する会議」を歓迎する。

開発協力

44. 国際開発目標は、開発政策の核であり、重要な共通の参考とすべき論点を提供している。OECDの新しい貧困削減に関するガイドライン並びに、持続可能な開発戦略、紛争の回避及び貿易に関する能力の開発に関する指針は、これらの目標の達成のための重要な貢献である。我々は、国際開発目標への我々の支持と整合した効果的なODAを提供することにコミットする。我々は、援助国の手続き及び慣行をより緊密に調和させることの重要性への認識が高まりつつあることを歓迎する。

45. 我々は、援助の有効性の向上に貢献し、援助の調達における金額あたりの価値を向上させ、開発途上国の開発プロセスにおけるオーナーシップを改善し、また援助国間におけるより衡平な努力の分担を促進するべく採択された、「後発開発途上国向けODAのアンタイド化勧告」を歓迎する。この合意は、第3回国連後発開発途上国会議が現在ブラッセルにて行われていることに鑑み特に歓迎される。

46. 開発の問題は、各国政府の非常に幅広い政策及び行動、そしてそれ故にOECDの作業においても存在する。「貧困削減への政策一貫性に関する例示チェックリスト」は、この分野においてOECD加盟国政府を支援する有用な手段である。我々はまた、OECDが政策の一貫性と開発に関する作業を深化することを促し、これに関する提案に期待する。

47. 我々は、ドナルド・ジョンストン氏の事務総長としての再任に祝意を表する。我々は、同氏がOECDの近代化のためにもたらした進捗を歓迎し、次の10年及びその後の政策課題にOECDを対応させるため、事務総長が改革-財政及び運営の改革、OECDの作業に関する更なる優先順位づけ、並びに益々複雑化し相互に関連したグローバリゼーションに関する諸問題に取り組むためのOECDの能力の強化-を進めることを要請する。我々は、効率的且つ費用効果的な態様でOECD本部を改装することについての大きな課題を認識しており、このプロジェクトの成功に完全にコミットする。



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