99年の我が国の東アジア地域向けた援助が二国間援助全体に占める割合は、98年の40.9%から49.7%へと増加した。政府貸付を中心として増加したが、これは、先のアジア通貨・経済危機から立ち直りつつある東アジア諸国のグローバル化への対応能力の強化、社会的弱者への支援等を背景としたものである(詳細は「1.重点課題(5)アジア通貨・経済危機の克服等構造改革支援」を参照)。
なお、中国の改革・開放政策を支援するための第4次円借款「後2年(99-2000)年度」の初年度分については、19案件、総額1,926億3,700万円までの円借款を供与することとした。今回の円借款は、「環境と開発の両立」という観点から、環境モデル都市三案件(「1.重点課題(4)地球規模問題への取組(イ)環境保全」参照)をはじめとする大気汚染・水質汚濁対策等の環境案件、及び、民間資金が入りにくく沿海部との格差が生じている内陸部における案件に重点を置いた内容となっている。99年の南西アジア地域への我が国の二国間援助は、11.2%(98年は17.0%)を占める。南西アジア地域においては、貧困削減や貧困層の生存確保に資する保健医療や初等教育等に関する援助需要が大きいほか、ポリオ対策等の子供の健康、地下水ヒ素汚染、人口・エイズ等の地球規模問題への対応にも配慮している。
中央アジア・コーカサス地域諸国は民主化、市場経済化に取り組んでおり、我が国としても、本年3月のタジキスタン民主化セミナーの開催やカザフスタンにおける民活インフラ・ワークショップの開催等を通じ、民主化・市場経済化に資する人造り支援やノウハウの提供に努めている。また、これら諸国の経済改革に伴う困難を緩和するため、基礎生活分野や経済インフラ整備に対する資金協力等も実施している。中央アジア・コーカサス地域に向けた99年の我が国二国間援助は、全体の2.3%(98年は2.4%)を占める。
99年の我が国の中近東地域に対する二国間援助は、全体の5.2%(98年は4.6%)を占める。我が国は中東和平プロセスへの支援に取り組んでおり、99年8月には我が国の無償資金協力により架け替えられたヨルダンとイスラエルを結ぶシェイク・フセイン橋の開通式が行われた。また、同年10月には中東和平当事国、各援助国及び国際機関などが出席し、第6回パレスチナ支援調整会議が東京で開催され、中東和平プロセスを支えるパレスチナ支援のあり方について議論が行われた。また、中東和平多国間協議の枠組みの中で、我が国は、環境作業部会の議長を務めるとともに、本年3月にはアラブ諸国及びイスラエルの政府実務者を集めて小規模汚水処理セミナー(浄化槽活用)を開催している。
99年の我が国のアフリカ地域に対する援助の比率は9.5%(98年は11.0%)であるが、援助額では増加している。我が国は、TICADIIで採択された「東京行動計画」の着実なフォローアップに努めてきた。99年11月にはザンビアの首都ルサカにて同計画の実施状況に関する東南部アフリカ地域別レビュー会合を開催し、我が国の教育に関する経験や、HIV/AIDS対策に関するタイの経験等アジアにおける開発の経験の共有と活用について意見交換が行われた。このほか、アフリカ諸国の開発全般の取組みを視野に入れつつ、債務管理、経済運営能力の向上に資する「債務管理セミナー」や、アジアの開発の経験の交流を目指す「アジア・アフリカ・フォーラム」も開催している(「1.重点課題(7)債務問題への取組」、「3.援助手法(5)南南協力への支援」を参照)。
99年の我が国二国間援助の中で中南米地域が占める割合は、7.8%(98年は6.4%)であった。我が国は、中南米諸国が取り組んでいる民主化、経済改革努力に対し積極的に支援を行っている。また、98年のハリケーン災害により甚大な被害を受けた中米、カリブ諸国等に対する復旧・復興活動にも取り組んでいる。更に、日本人移住者・日系人が開発に重要な役割を果たしてきていることも考慮に加えている。
99年においては大洋州地域に対しては、二国間援助の1.3%(98年は1.7%)が供与されている。本年4月には宮崎において我が国のイニシアティブの下、南太平洋フォーラム(SPF)に加盟の16の国・地域の首脳を招き、森総理が議長をつとめて「太平洋・島サミット」が開催され、グローバル化の中での島嶼国の持続可能な開発や、情報格差の問題等について意見交換が行われた。その際、同地域との中長期の協力の方向性をまとめた「太平洋・島サミット宮崎宣言」及びその一環としての一連の具体的なイニシアティブをとりまとめた「宮崎イニシアティブ」が発表された。更に気候変動等の環境問題が同地域諸国にとり喫緊の課題であるとの共通認識を示す「太平洋環境宣言」も採択された。
我が国の99年の欧州地域(東欧等)向け援助は、二国間援助全体の1.4%(98年は1.1%)となった。中東欧諸国における市場経済化や民主化への取組を支援しているほか、旧ユーゴースラヴィア問題にも積極的に関わってきている。特にコソヴォ問題については、これまでに2.37億ドルの支援を表明した。
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