(1)アフガニスタンおよびパキスタン支援

アフガニスタンとパキスタンにおいて不安定な情勢が続いていることは、両国やその周辺地域だけでなく世界全体の問題です。アフガニスタンを再びテロの温床としないため、日本をはじめとする国際社会は積極的に同国への支援を行っています。そして、アフガニスタンとの国境地域においてテロを排除するための作戦(掃討(そうとう)作戦)を実施するなどテロの撲滅に重要な役割を果たしているパキスタンの安定も、周辺地域や国際社会の平和と安定の鍵となっています。

< 日本の取組 >

アフガニスタン

日本は、これまで一貫してアフガニスタンへの支援を実施しており、2001年10月以降の支援総額は約49億3,500万ドルに上ります。

2012年7月8日、日本は、「アフガニスタンに関する東京会合」をアフガニスタンと共催しました。東京会合においては、カルザイ・アフガニスタン大統領、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長、クリントン米国務長官(当時)をはじめとする約80の国および国際機関等の代表が参加する中、治安権限移譲後の「変革の10年」(2015年ー2024年)にわたるアフガニスタンと国際社会の新たなパートナーシップを示す「東京宣言」を発表しました。日本は、アフガニスタンに対し、2012年よりおおむね5年間で開発分野および治安維持能力の向上に対し、最大約30億ドル規模の支援を行うことを表明しました。また、アフガニスタンと周辺諸国との地域協力を促進する観点から、アフガニスタンの周辺諸国に対し、総額約10億ドル規模の支援を行うことを表明しました。

アフガニスタン・カブールの国内避難民キャンプの給水施設(写真:谷本美加/JICA)

アフガニスタン・カブールの国内避難民キャンプの給水施設(写真:谷本美加/JICA)

日本のアフガニスタン支援の主な実績

パキスタン

2001年の米国同時多発テロ後に国際社会と協調してテロ対策を行うことをパキスタンが表明して以来、日本はパキスタンに対して積極的な支援を行っています。2009年4月には、東京において日本政府と世界銀行とが共同でパキスタン支援国会合を開催し、日本は同国に対し2年間で最大10億ドルの支援を表明しました(注15)。さらに、同年11月には「テロの脅威に対処するための新戦略」を発表し、パキスタンの持続的で安定した発展のために、経済成長、マクロ経済改革や貧困削減、アフガニスタンとの国境に位置し、国内外武装勢力の温床となっているハイバル・パフトゥンハー州(旧北西辺境州)および連邦直轄部族地域の人々の生活の安定などを重点分野とし、10億ドルを超える支援を着実に実施しました(注16)。

パキスタン・ラホール市のレイルウェイロード技術短期大学で木工の実習をする女子学生たち(写真:伊藤稔)

パキスタン・ラホール市のレイルウェイロード技術短期大学で木工の実習をする女子学生たち(写真:伊藤稔)(『国際協力の現場から』を参照


注15 : 経済・金融等を含めたマクロ経済の安定化を目的とした国際通貨基金(IMF)プログラムの実施が前提

注16 : 支援には、2010年度大洪水への支援も含む

●アフガニスタン

「未来への架け橋・中核人材育成プロジェクト」
技術協力プロジェクト(2011年2月~実施中)

長く続いた紛争からの復興と開発に取り組むアフガニスタンでは、国づくりを担う人材の育成が欠かせません。日本は、アフガニスタンの発展にとって重要な農業・農村開発分野とインフラ開発分野を中心として、中核となる人材を育成するために「未来への架け橋・中核人材育成プロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは、若手の行政官や大学教員の能力向上のために、日本の大学院修士課程等で研修の機会を提供しています。2013年8月現在、89人の研修員が全国各地の26校の大学院で懸命に学んでおり、2013年6月には初めての卒業生が研修を終えて、「母国の発展と未来を担う」という強い決意とともに帰国しました。2013年9月にはさらに85人の研修員が来日予定です。

本プロジェクトは、日本での研修機会を提供することに加えて、アフガニスタン政府の関係省庁との連携を強化し、帰国した研修員が研修成果を活かしてアフガニスタンの発展に貢献する仕組みづくりも行っています。このプロジェクトで育成された人材が国づくりを担い、平和で安定した未来につながる架け橋、ひいては、日本とアフガニスタンとの友情の架け橋となっていくことを目指しています。(2013年8月時点)

国際大学(新潟県)からPEACEプロジェクト初の卒業生たち(写真:JICA)

国際大学(新潟県)からPEACEプロジェクト初の卒業生たち(写真:JICA)


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