タンザニアとルワンダをつなぐルスモ国際橋で作業指導する日本人技師(写真:久野武志/JICA)
1990年代まで貧困と低成長に苦しんだサブサハラ・アフリカ(注1)は今世紀に入り、目覚ましい経済成長を遂げています。過去10年間(2002-2011年)のサブサハラ・アフリカの平均実質GDP成長率は5.8%であり、世界全体の3.8%を大きく上回っています。地域的には東アジア(8.8%)に次ぐ高さです。アフリカは過去10年間で、名目GDPが3.2倍(約1兆8,300億ドル)、貿易量は4.3倍(約9,970億ドル)にもなっているのです。
現在の好調なアフリカ経済を支える原動力は、政治や治安情勢の安定であり、豊富な天然資源と高い人口増加率です。今世紀に入り、アフリカは、紛争と不安定に苦しんだ時代を乗り越え、多くの国で平和と安定を達成しました。また、サブサハラ・アフリカは、クロム、コバルト、マンガン、バナジウムなど日本にとって重要な鉱物資源や原油・天然ガスなどエネルギー資源に恵まれ、近年は鉱山や油田・ガス田の新規開拓や増産が進んでいます。中国をはじめとする新興国の旺盛な需要増や世界的な金融緩和の影響による資源価格の高騰は、アフリカ全体の経常収支の改善に貢献するなどアフリカ経済の高成長を支えています。
人口が増え続けていることも成長の大きな要因です。アフリカの平均人口成長率は2.3%と六大陸中で最も高く、都市化も急激に進んでおり、既に人口100万人以上の都市は40を超えるといわれています。2011年のアフリカの1人当たりGNIは1,570ドルで同程度の人口規模を有するインドと同水準であり、インド同様、将来の巨大消費市場として大きな潜在力を有しています。たとえば、携帯電話の市場は、2011年現在で契約数が6億2,000万件に上り、アジアに次ぐ世界第2位の規模であり、今後もさらなる拡大が予想されます。また、SADC(南部アフリカ開発共同体)、EAC(東アフリカ共同体)およびCOMESA(東南部アフリカ市場共同体)は、域内貿易の拡大と円滑化に取り組んでいます。
こうしたアフリカ経済の好調ぶりは、アフリカへの資金の流入にも変化をもたらしています。かつてアフリカへの資金流入の大半を占めていたのはODAでしたが、2007年にはアフリカへの直接投資額(約400億ドル)がODA総額(OECDによれば約395億ドル)を上回り、過去10年間でアフリカへの直接投資残高は3.8倍(UNCTADによれば約1,500億ドルから約5,696億ドル)に増えました。貿易と消費の拡大による成長がさらなる直接投資を生んでおり、ビジネスパートナーとしてのアフリカに世界が注目しています。このため、欧米諸国や新興国は、アフリカの可能性に着目しており、中国、インド、韓国、EUはアフリカとの間で独自の開発フォーラムを設け、アフリカとの関係強化に努めています。
安定した経済成長は、サブサハラ・アフリカにおいて、ミレニアム開発目標(MDGs)(こちらを参照)に取り組む上でも良い影響を及ぼしています。初等教育への就学、初等教育就学における男女格差、HIV/エイズ、結核やマラリアの感染などの分野では進捗(しんちょく)が見られます。一方で、アフリカには様々な未解決の開発課題も多く残っています。MDGsは2015年までに極度の貧困と飢餓の撲滅、乳幼児死亡率の削減など8つの目標の達成を目指すものですが、アフリカにおける貧困削減、母子保健などは目標達成にほど遠い状況です。依然として、サブサハラ・アフリカ人口の4割以上が貧困ライン以下での生活を余儀なくされており、こうした貧困層には保健サービスや安全な水・衛生施設へのアクセスが十分に改善されているとはいえません。また、人口が年率平均2~3%で増えている中、今後労働適齢期に達する若年層が増えれば、雇用の創出の圧力がこれまでになく高まることが懸念されています。
モザンビーク沖の既発見ガス田で生産性のテスト作業を行うドリルシップ(ガス田の探査掘削設備を備えた船)(写真:Anadarko Petroleum Corporation)
注1 : アフリカ大陸のうち、サハラ砂漠より南に位置する地域