(4)資源・エネルギー

開発途上国では、電気が供給されていない地域の人々が約13億人もいます。(注11)これは世界の人口の20%に相当します。電気やガスなどの電力供給のエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層進ませ、医療サービスや教育を受ける機会を制限するといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。

< 日本の取組 >

日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、エネルギー利用の効率化や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備を支援しています。

資源国に対しては、その国が資源開発によって外貨を獲得し、自立的に発展できるよう、鉱山周辺のインフラ整備など、資源国のニーズに応じた支援を行っています。日本はこうした支援を通じて、開発途上の資源国との互恵的な関係の強化を図り、また、企業による資源の開発、生産や輸送を促進し、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に努めます。国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援に加え、日本のODAを資源・エネルギー分野で積極的に活用していくことが重要です。

また、日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、採取企業が資源産出国政府へ支払った金額を、政府は受け取った金額を報告し、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。36の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。

アブダビで開催された国際再生可能エネルギー機関総会で発言を行う城内実外務大臣政務官

アブダビで開催された国際再生可能エネルギー機関総会で発言を行う城内実外務大臣政務官


注11 : (出典)国際エネルギー機関「2011年世界エネルギー展望」(2009年時点の推定)

●インドネシア

「クリーンコールテクノロジー(CCT)導入促進プロジェクト」
有償勘定技術支援-円借款附帯プロジェクト(開発計画調査型)(2011年4月~2012年7月)

インドネシアでは近年の経済成長に伴い、人口・産業が集中しているジャワ島やスマトラ島を中心に電力需要が急速に増加しており、早急な電力供給能力の増強を必要としています。この状況に対して、インドネシア政府は電源開発を短期的に集中して実施する計画を策定し、特に、国内に多くの埋蔵量が確認されている石炭を利用した火力発電所の開発を積極的に進めています。一方で、インドネシアは気候変動対策への取組も強化しており、2020年までに温室効果ガスの排出量を大幅に削減する目標を掲げています。このため、インドネシア政府は、石炭の効率的な利用により温室効果ガスの排出を抑制して、環境負荷を軽減させる技術であるクリーンコールテクノロジー(CCT)※の導入を目指しています。

CCT分野で優れた技術を持つ日本は、インドネシアからの協力要請を受け、日本の技術・知識・経験を活かしつつ、CCT導入ロードマップ(行程表)の策定、教育訓練を通じた人材育成、モデルとなる石炭火力発電所開発の予備調査などの協力を実施しました。この協力を通じて、インドネシアにおける安定的な電力確保と気候変動対策の両面に貢献するとともに、日本の技術の普及、さらには日本の電力インフラ輸出の促進にも役立てられることが期待されます。(こちらを参照

※ クリーンコールテクノロジー :石炭を燃やす際に発生する二酸化炭素や有害物質を減らし、環境にやさしい石炭活用を行うための技術。石炭の採掘から、発電所等での燃焼時、燃焼後の灰処理の段階にわたる広い範囲で活用される。

インドネシアのCCT導入の最新の動向を紹介したセミナーには、民間企業も数多く参加した(写真:JICA)

インドネシアのCCT導入の最新の動向を紹介したセミナーには、民間企業も数多く参加した(写真:JICA)

タンザニアのTANESCO Training Schoolにて模擬変圧器の前でカウンターパートと訓練計画について議論するJICA専門家(写真:久野真一/JICA)

タンザニアのTANESCO Training Schoolにて模擬変圧器の前でカウンターパートと訓練計画について議論するJICA専門家(写真:久野真一/JICA)


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