日本は、自らが様々な自然災害を経験してきた国として、国際社会における防災の取組にこれまで積極的に関与してきました。国連防災世界会議は、第1回会合(1994年)および第2回会合(2005年)ともに日本において開催され、世界各国や国際機関、NGO等多様な参加者を得て、防災の強化に向けた対策等を打ち出してきました。前回の第2回会合では、災害に強い国・コミュニティの構築を目指し、(1)防災の優先事項化、(2)災害リスクの評価と早期警戒の強化、(3)防災知識の向上、(4)災害リスクの軽減、(5)災害事前準備の強化を優先行動とする兵庫行動枠組が採択されました。日本を含む130以上の国が、この行動枠組の実施に努め、国連国際防災戦略(UNISDR)事務局が各国の実施状況のフォローアップを定期的に行っています。また、日本はその活動を資金面を含め支援しています。
日本は、世界各地で発生する地震や洪水災害などに際しては、被災者に対する直接の支援を行うとともに、途上国の防災の取組を支援しています。2010年1月のハイチ地震の際は、国際緊急援助隊の派遣に加え、資金協力など発生直後の緊急支援として5,500万ドル、その後の復興支援として5,400万ドルを超える支援を実施しています。また、2011年秋のタイ洪水被害に対しては、国際緊急援助隊の派遣や物資および資金協力など発生直後の緊急支援のほか、道路のかさ上げやアユタヤ周辺での川への水門設置などの洪水対策を対象とする約80億円の防災・災害復興支援無償等を実施しました(タイの洪水については次章にて詳しく説明します)。こうした支援の積み重ねもあって、2011年の防災・災害復興分野における日本の援助は、総額約11億1,400万ドルに上りました。
国際社会が防災分野における重要な指針としている兵庫行動枠組は、2015年に期限を迎えます。開発および国際協力における防災の主流化(公共政策のあらゆるレベルで防災に取り組むこと)を促進し、気候変動や都市化などの新たな課題にも対応できるような実効性を持った兵庫行動枠組の次の枠組みを策定し、2015年以降の国際社会による防災取組のよりどころとすることが重要です。第1章第1節で述べた世界防災閣僚会議in東北においては、世界各国・地域における防災への具体的な取組を促進するために何が必要かが検討されました。そこで、新たな行動枠組においては、「いつまでに」「どこまで」「どのように」防災に取り組むべきかを明確にし、具体的な目標値設定、評価方法の確立、施策の体系化の検討を進める必要があることが確認されました。
日本は、2015年に開催予定の第3回国連防災世界会議を前2回会合に引き続き日本で開催する用意がある意向を表明しましたが、2012年12月の国連総会において、日本での開催が正式に決定しました。同会議に向けて、兵庫行動枠組の後継枠組みの策定に向けた議論や2015年以降の国際開発目標(ポストMDGs)に防災を位置付けることを含め、国際社会における防災の主流化に向けた取組を先頭に立って進めていく考えです。
土壁を改良した耐震モデルハウス建設の様子。2001年に2度の大地震を経験したエルサルバドルに対して日本は2003年から住宅の耐震性向上と耐震性の高い住宅の普及に協力している(写真:JICA)