東日本大震災の被災地の復旧・復興は未だに道半ばですが、中小企業をはじめとする多数の企業は次々と操業を再開し、雇用の回復が始まっています。こうした被災地の努力を支援するために、ODAにより被災地の工業用品等を開発途上国に対し供与することで、途上国の経済社会開発を支援すると同時に、被災地の経済復興にも貢献する取組を進めています。
日本は、平成23年度第三次補正予算事業により、計15か国の途上国を対象とし、被災地産の工業用品等(40億円)を供与するとともに、国連世界食糧計画(WFP)を通じ、計5か国の途上国に対し、被災地産の水産加工品(10億円)を供与しました。工業用品等の供与については、途上国の要望を踏まえ、東日本大震災の被災地で生産される建設機械、医療器具、福祉用器具等の中から、入札により調達製品が順次決定されています。具体的には、岩手県、福島県、宮城県で製造された医療・福祉用機器(内視鏡、X線撮影装置、車椅子)等を途上国に供与しています。
東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故の発生後、被災地企業には長期間操業停止になったり、「製品に放射能汚染があるのではないか」との問い合わせが寄せられるなどの風評被害が生じていましたが、本件事業の結果、7割以上の契約企業より、新規雇用に役立った、人員削減を回避できた等、雇用に良い効果があったとの回答がありました。また、8割以上の契約企業より、地域経済にも波及効果があったとの回答を得ています(こちらの図を参照)。
また、本件事業により福島県製の高圧滅菌器が整備されたマーシャルの医療関係者からは、「高圧滅菌器のお陰でマーシャルの医療機関において衛生面での向上が図れる」、「支援してもらった滅菌器は比較的容量が大きく、一度に多くの器具を滅菌でき効率的」、「ボタン式のデジタルタイプで、操作も簡単で扱いやすい」など、被災地産製品の性能を高く評価し、感謝する声が寄せられています。
平成24年度においても、引き続き東日本大震災被災地の経済復興への貢献も視野に、被災地産の工業用品等を活用した途上国支援を継続しています。
開発途上国へ被災地の工業用品等を供与するほかに、「農地・農業用水利施設の復旧・復興セミナー」、「災害軽減・インフラ復旧セミナー」等の短期研修(セミナー)や既存の各種研修において途上国から日本に研修員を招いた際には、日本の復興の現状に関する講義や被災地視察等を実施し、世界への正確な情報発信につなげ、風評対策の一環としました。今後も、研修等を通じ我が国の復興に関する情報発信のための取組を継続していくとともに、現地の状況も十分考慮しつつ、被災地への外国人研修員の受入れを推進していきます。これらにより、被災地産業を支援し、被災地復興への貢献を進めていく方針です。
マーシャルのマジュロ病院に設置された高圧滅菌器と病院スタッフ(写真:在マーシャル日本大使館)
宮古市田老(たろう)地区で被災地を視察するアフリカ人研修者(写真:JICA)