(3)食料
2010年末の栄養不足人口は、国連食糧農業機関(FAO)によると、約9億2,500万人と依然として高水準が見込まれており、MDGsが掲げる「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準(20%)の半数(10%)に減少させる」という目標の達成が危ぶまれています(2010年時点で16%)。紛争、自然災害の発生や食料価格の高騰により、食糧支援の必要性は高まっています。また、社会的セーフティー・ネット(人々が安全で安心して暮らせる仕組み)の確立や栄養状態の改善、食料増産による需給バランスの改善、家畜の感染症への対策など、食料安全保障(すべての人が十分な食料を得る権利を持つことへの保障)を確立するための国際的な協調や多面的な施策が求められています。
< 日本の取組 >
このような状況を踏まえ、日本は、食糧援助を行っています。2010年度には、二国間食糧援助として19か国に対し計122億円の支援を行いました。国際機関を通じた支援では、主に国連世界食糧計画(WFP)を通じて、緊急食糧援助や、教育の機会を促進する学校給食プログラム、食料配布により農地や社会インフラ整備などへの参加を促し、地域社会の自立をサポートする食糧支援などを実施しています。2010年には世界各地で実施しているWFPの事業に総額約2億1,441万ドルを拠出しました。
また日本は、開発途上国が自らの食料の安全性を強化するための支援を行っています。口蹄疫などの国境を越えて感染が拡大する動物の伝染病について、越境性感染症の防疫のための世界的枠組み(GF-TADs)(注41)など国際獣疫事務局(OIE)やFAOと連携しながら、アジア・太平洋地域における対策を強化しています。(農業についてはこちらを参照)
ボリビアで日本の貧困農民支援により、食料不足問題の解決を目的に提供された肥料を担ぐ女性(写真提供:Insumos Bolivia)
ウガンダの市場(写真提供:佐藤浩治/JICA)
注41 : 越境性感染症の防疫のための世界的枠組み GF-TADs:Global Framework for Progressive Control of Transboundary Animal Diseases
●ザンビア
「食糧安全保障向上のための食用作物多様化支援プロジェクト(FoDiS)」
技術協力プロジェクト(2006年10月~2011年10月)
ザンビアの人々はメイズ(とうもろこし)を主食としており、80%以上の農家が重要な作物としてメイズを生産しています。しかし、大半の農家は小規模経営であり、雨水に依存したメイズ栽培を行っているため、数年に一度発生する干ばつの度に、国家レベルの食料危機に陥ってしまいます。そこで、日本は干ばつをはじめとする気候変動の影響を緩和するために、メイズに依存しない食用作物栽培の多様化支援を推進しています。本プロジェクトでは、乾燥に強いキャッサバやサツマイモなど芋類の植え付け材や、日本がアフリカで普及を促進しているネリカ米という陸稲の種子を小規模農家に配布して栽培支援を行い、ザンビアの食料安全保障に貢献しています。また、これらの種子の増殖や品種改良を担う研究機関の能力向上や、メイズ以外の主要作物が国内市場で流通するための仕組みづくりや加工技術の支援も併せて行っています。
*FoDiS: Food Crop Diversification Support Project for Environment of Food Security
収穫物のキャッサバを手にする農民。キャッサバは貴重なメイズ代替食料である(写真提供:JICA)
●アフガニスタン
「アフガニスタンにおける学校給食~女子にも学ぶ機会をプロジェクト」
対WFP拠出金(2011年1月~2011年10月)
長引く国内の混乱や自然災害等の影響により依然として不安定な状況が続いているアフガニスタンにおいて、日本は国連世界食糧計画(WFP)と協力して、学校給食事業を実施しています。学校給食は、子どもたちの栄養状態の改善のみならず、空腹を満たすことで勉強に集中できることや、貧しいことが原因で学校に通えない子どもたちが通学できるきっかけとなるなど、幅広い効果のある支援活動です。特に女子の就学率が低いアフガニスタンでは、学校給食と持ち帰り食料の両方を女子に提供することにより、各家庭における女子の就学への理解と協力を深め、男女間の教育格差を是正する取組を行っています。2011年には、WFPの学校給食への取組は公立学校に通うおよそ200万人の子どもたちを対象に実施され、意義深い支援となっています。
アフガニスタン・へラート県の小学校で給食の高栄養ビスケットを手にする子ども。WFPが日本からの支援で配った(写真提供:WFP/Teresa Ha)