(3)食料

国連食糧農業機関(FAO)によると、2010 年末の栄養不足人口は約9億2,500万人と推計されており、ミレニアム開発目標(MDGs)が掲げる2015年までの飢餓人口の割合半減の達成が危ぶまれる状況です。また、紛争、自然災害、金融・経済危機の発生などにより、食料支援の必要性は高まっています。さらに、社会的セーフティー・ネットの確保や栄養改善、食料増産による需給バランスの改善、動物の感染症対策など、食料安全保障を強化するための国際的な協調や多面的な施策が必要です。


< 日本の取組 >

このような状況を踏まえ、日本は、食糧援助を行っています。2009年度には、二国間食糧援助として21か国に対し計142.1億円の支援を行いました。また、多国間の支援では、主に国連世界食糧計画(WFP)を通じて、緊急食糧援助、教育の機会促進や地域社会の自立をサポートする食糧支援などを実施しています。2009 年度には総額約221億円を世界各地で実施しているWFPの事業に拠出しました。

また日本は、開発途上国が自ら食料安全保障を強化するための支援を行っています。口蹄疫などの国境を越えて感染が拡大する動物の伝染病について、越境性感染症の防疫のための世界的枠組み(GF-TADs(注41))など国際獣疫事務局(OIE)や国際連合食糧農業機関(FAO)と連携しながら、アジア・太平洋地域における対策を強化しています。

 

農業に関する日本の実績については、農業分野の実績を参照してください。

シシャンバグ農試における普及員・研究員の田植え実習

シシャンバグ農業試験場における普及員・研究員の田植え実習(写真提供 : JICA

●ウガンダ「前進のための食糧購入(Purchase for Progress)」

長期にわたるウガンダ国軍と反政府勢力の戦闘の影響により、農業生産が大きく落ち込んだウガンダ北部において、JICAと国連世界食糧計画(WFP)が協働して、アフリカ向け新品種米「ネリカ米」の稲作普及に取り組んでいます。JICAの専門家が、WFPスタッフや地元の農民に対し稲作に関する技術指導を行い、WFPがネリカ米の栽培および発育状況のモニタリングを行っています。さらに、WFPは農民に対し、収穫および収穫後の米の取扱いや、貯蔵法に関する研修を実施しました。このJICAとの連携によって、2009年にはおよそ2,400人の農民が2,410エーカーの土地でネリカ米を栽培しました。このJICAによる技術指導は、ウガンダの小規模農民が生産した米をWFPが買い上げ、学校給食事業などの食糧支援事業に活用する「前進のための食糧購入(Purchase for Progress-P4P)」に繋がっています。


注41 : GF-TADs: Global Framework for progressive control of Transboundary Animal Diseases


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