5. 中東地域

中東地域に対する2008年の二国間政府開発援助
約23億7,173万ドル(約31億5,433万ドル)
二国間援助全体の約34.2%(約21.2%)

中東地域は、世界の主要エネルギー供給地域であり、日本は原油の9割近くを同地域から輸入しています。中東地域の平和と安定の実現は、日本だけでなく国際社会全体の平和と繁栄に直結する重要な問題で、そのためにはイラクやアフガニスタンの復興、中東和平プロセスの進展が非常に重要です。日本は、ODAやそれ以外の公的資金の活用、そして民間を主体とした重層的なパートナーシップの構築を目指しています。

中東地域には高所得の産油国から後発開発途上国(LDC)まで存在し、その経済状況は多様です。低所得国や中所得国では、経済社会インフラ整備や貧困対策などが不可欠となっている一方で、ODA卒業国である高所得の産油国も、人材育成などの課題を抱えています。

< 日本の取組 >

中東地域は日本にとって、ODA大綱の基本方針である「人間の安全保障」や重点課題である「平和の構築」の実現のため、そして資源・エネルギーの安定的な確保のため、非常に重要な地域です。日本は、国際社会と連携して水資源管理、インフラ整備、人材育成などの分野を重点的に支援することで、中東の社会的安定と経済発展の実現に貢献しています。

イラクについては、最大50億ドルのODA、約67億ドルの債務救済など積極的に支援に取り組んでいます。アフガニスタンについては、2008年6月のアフガニスタン支援国際会議(パリ会合)で5億5,000万ドルを追加的に拠出することを表明し、これにより拠出表明された総額は20億ドルとなりました。また、2009年3月には、同年8月の大統領選挙を成功裡に実施するために必要な支援として約3億ドルを拠出しました。

アフガニスタン支援の詳細については、第I部第2章第1節を参照してください。

中東和平支援については、1993年以降総額約10億ドル以上の対パレスチナ支援を行ってきました。日本は、イスラエルと共存共栄し得るパレスチナ国家樹立による和平実現(二国家解決)が重要であると認識し、アッバース大統領率いるパレスチナ自治政府(PA)による和平努力を一貫して支援しています。近年その一環として、イスラエル、PAのみならず、ヨルダンの参加も得て、「平和と繁栄の回廊」構想(注65)の具現化に取り組んでいます。


注65 : イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けた日本独自の中長期的な取組で、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、日本の4者による域内協力でヨルダン渓谷を開発することを企図するもの。現在ジュリコ郊外に農産加工団地を建設する計画に取り組んでいる。

教師教育強化プロジェクト(アフガニスタン)

アフガニスタンでは、タリバン政権下でこれまで学校に行けなかった子どもたちが学校に行くようになり、小中学校の生徒が急激に増えています。それに伴って、教員も大幅に増えていますが、十分なトレーニングを受けないまま教壇に立っている教員も少なくありません。そこで日本は、1年生から6年生までの各教科の教員用指導書の作成を支援しています。この指導書は授業の進め方を具体的に説明しており、教員がすぐに授業に活用できる指導書となっています。作成された指導書は全国の学校に配布され、また教員研修も行われています。他のドナーやNGOとの連携でより広範な地域への配布、研修も進んでおり、この指導書を活用し、より良い授業が行われていくことが期待されています。

グループ学習で植物観察をする子どもたち

グループ学習で植物観察をする子どもたち(写真提供 : JICA

図表II-13 中東地域における日本の援助実績(地図)

武正公一外務副大臣(中央)と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)関係者および現地で活動する邦人関係者(パレスチナ難民キャンプにて)

武正公一外務副大臣(中央)と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)関係者および現地で活動する邦人関係者(パレスチナ難民キャンプにて)(写真提供 : JICA

図表II-13 中東地域における日本の援助実績(表)


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