政府開発援助(ODA)大綱は、政府開発援助をより効率的・効果的なものとするために、政府が進めるべき一連の改革措置を援助政策の立案および実施体制、国民参加の拡大、効果的実施のために必要な事項の3つに分けて示しています。以下では、大綱の構成に従って、2006年度に進められた政府開発援助改革の取組状況について説明します。
日本では1府12省庁(注1)が政府開発援助に携わっています。政府開発援助の実施にあたっては、戦略部門、企画立案部門、実施部門が密接に連携し、各府省が直接、また国際機関等を通じて行う事業が相矛盾することなく立案・実施され、政府開発援助を戦略的に実施し最大限の効果を発揮することが重要です。
2006年度は、日本の国際協力の実施体制が大きく変わりました。まず、戦略部門では、4月に内閣に「海外経済協力会議」が設置されました。海外経済協力会議は、内閣総理大臣、内閣官房長官、外務大臣、財務大臣および経済産業大臣を構成員とし、海外経済協力に関する重要事項を機動的、実質的に審議しています。これまで、アジア、アフリカ、中国、イラク、インド、アフガニスタン、資源・エネルギー、環境等といった議題で審議され、計11回(注2)開催されました。
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また、企画立案部門では、外務省の体制が変わりました。8月に新たに国際協力局が設置され、二国間援助と国際機関を通じた援助を総合的に企画・立案する体制が整備されました。また、外務大臣の下に国際協力企画立案本部が新設され、国際協力局と地域担当局等が協議し、効果的な政府開発援助の企画・立案に努めています。その一例として、年度ごとに国際協力の重点方針・地域別重点課題を作成することとし、2007年度は、(1)環境・気候変動への取組、(2)開発途上国の経済成長と日本の経済的繁栄の実現、(3)民主化定着・市場経済化支援、(4)平和の構築・テロとの闘い、(5)人間の安全保障の確立-を国際協力の重点事項として援助を行っていきます。
さらに、外務省は関係省庁と連携しつつ、政府全体の事業の調整の中核を担っています。また、2007年3月には、国際協力に専門的知見・経験を有する国内各層の代表(学者、言論界、産業界、NGO)を招いて、「国際協力に関する有識者会議」を設置しました(注3)。この会議は、国際協力に知見を有する有識者の声を政策に反映させるため、外務大臣からの諮問(注4)を受け、幅広く議論を行うものです。2007年11月末までに5回実施され、2007年内をめどに中間報告が提出される予定です。このほかにも、分野別の課題に適切に対処するため、分野別のタスクフォースを設置し、議論を開始しました。例えば、保健に関するタスクフォースは、保健分野の取組強化のため、関係国際機関、関係省庁との連携の下、積極的に活動を行っています。
実施部門では、技術協力、無償資金協力、有償資金協力が一元的にJICAで実施されることになりました。11月に成立した「独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律」により、JBICの有償資金協力部門と外務省の無償資金協力が2008年10月1日に発足する新JICAに承継されます。これにより、3つの援助手法の更なる連携が期待されます。