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(6)内外の援助関係者との連携
●NGOとの連携
NGOは途上国・地域のコミュニティレベルで地域住民と共に活動を行っており、多様なニーズに応じたきめ細やかな援助が可能です。また、大規模な自然災害が発生した場合、NGOは被災現地に素早く赴き、迅速かつ柔軟な緊急人道支援活動を展開できる点、また、日本の「顔が見える援助」という点からも重要になってきています。近年、NGOは開発援助、緊急人道支援のみならず、環境、人権、貿易、軍縮等の分野において様々な活動を行っており、国際社会においてますます大きな役割を果たすようになっています。
(イ)日本の基本方針
日本はこのようなNGOの活動と役割の重要性を踏まえ、ODA大綱ではNGOとの連携推進を提唱し、また、2005年に策定されたODA中期政策では、NGO等との連携を随所で謳っています。さらに、2006年のODA改革に関する「海外経済協力に関する検討会」報告においても経済協力における国民参加の推進の必要性について提言しています。
日本としては、これまでも日本のNGOの活動強化を図るため、NGOの海外での活動に政府資金を提供し、また、日本のNGOの基盤強化に向けた各種の協力やNGOとの対話、連携を推進してきています。
(ロ)NGOの活動への日本の協力
日本は、NGOが円滑に援助活動できるように資金協力を行っており、NGOに対する予算は毎年、増加の傾向にあります。2002年度に設立された日本NGO支援無償資金協力は開発途上国・地域で活動する日本のNGOが実施する経済・社会開発活動に対して事業資金を提供する制度です。設立当初には20億円であった予算は、2005年度には28.5億円に増大しました。また、草の根技術協力は日本のNGOなどとJICAが開発途上国の地域住民の生活向上に直接役立つ事業を協働して実施するもので、2002年度の設立当初には10.9億円であった予算は、2005年度には19.4億円に増大しました。
また、政府はNGOの能力強化への協力を実施しています。近年、日本のNGOは国際協力の現場において目覚ましい活動を行い、高い評価を得ているものの、より一層、活躍するためには、その専門性や組織実施体制の強化が必要です。このような観点から、NGOの組織強化や人材育成などへの協力のため、外務省やJICA、FASID等が、政府資金により様々なプログラムを実施しています。
2005年度に外務省は、分野横断的取組として、災害復興、障害者支援、保健分野支援の三つの分野でNGO研究会(注1)を行いました。また、NGO相談員(注2)を全国に16名配置して各種アドバイスを行い、また、NGO専門調査員(注3)を11名派遣しました。さらに、「NGO活動における危機管理セミナー」の開催、「我が国における国際協力NGO等によるファンド・レイジング方法に係る調査」を行うなど、様々な面からNGOの能力強化に協力しました。
(ハ)NGOと政府との対話・連携
日本は、NGOとの連携の強化に努めています。国内では、1997年よりNGO・外務省定期協議会を開始し、日本の援助政策や日本NGO支援無償資金協力などの制度についての討議が活発に行われています。また、実施機関であるJICA、JBICもNGOと定期協議会を開催し、ODA事業に対するNGOからの意見を積極的に取り入れています。国外では、NGO関係者がODAの効率的・効果的実施を協議する場とする「ODA大使館」を2002年に開設し、これまで、カンボジア、バングラデシュ等の13か国で実施しています。
このような国内外におけるNGOとの協議に加え、NGO、政府、経済界が連携して、2000年にジャパン・プラットフォーム(JPF)を設立しました。JPFには日本NGO23団体が参加し、緊急人道支援の際には、事前に供与されたODA資金や一般企業・市民からの寄付金を活用して、迅速な援助を実施します。JPFは、2005年度、スマトラ沖津波、イラク、スーダン、リベリア、パキスタン大地震に緊急人道支援活動を展開し、これらに活用されたODAは約17億円となりました。
図表II―35 NGO・外務省定期協議会の開催状況(2005年度)

図表II―36 ジャパン・プラットフォームの仕組み

(ニ)NGOとの連携・協力の今後の方向性
日本のNGOが開発途上国での開発協力事業や緊急人道支援活動に一層積極的に対応できるようにするため、NGOの抱える諸問題やNGOの要望に配慮しつつ、NGOとの対話を一層重ね、今後とも連携・協力の充実・多様化に努めていきます。
●大学等との連携
2005年度は、円借款事業に関連する取組として、[1]海外経済協力業務に関する業務協力協定を筑波大学、横浜国立大学、九州大学、神戸大学と締結(2004年度までに7大学と協定を締結済み)、[2]インドにおける案件形成段階において、地方自治体(滋賀県彦根市、東京23区(東京23区清掃一部事務組合))や大学(滋賀県立大学、秋田大学)と連携し、日本の経験、知見等をインド側に提供(コラムI-2を参照してください)、[3]地方自治体や地域国際化協会との協議を通じて相互理解・情報交換を促進、[4]優れた経験・知見を持つ日本の団体との連携を目的に、円借款事業の視察を中心とした円借款パートナーシップセミナー(2005年度はインドに訪問)を開催するなどの取組を実施しました。
JICAは、事業の質的向上、援助人材の育成、地方発の事業展開の活性化などの効果を期待し、専門家の派遣、研修員の受入、草の根技術協力事業、連携講座の実施など、さまざまな技術協力事業の場面で大学と連携してきました。また、近年では、技術協力プロジェクトの実施を大学との契約により包括的に行うケースも増えてきています。その背景には、個々の大学の持つ知的資産を、事業の活性化や質の向上、援助人材の育成に役立てたいという期待があります。
一方、大学にとっては、JICAと連携することで開発途上国の現場にアクセスしやすくなり、実践的な経験を得られるという利点が考えられます。したがって近年では、組織的な協力関係を構築し、事業の相乗効果を高めることを目的に、大学との間で包括的な連携の枠組み(連携協力協定や覚書)を導入し、帯広畜産大学、北海道大学、広島大学等10の大学と6つの協定・覚書を締結しています。今後も、大学の知見を国際協力事業に活かすべく、大学との連携に一層努めていきます。
●国際機関、他国との連携
日本は、国際機関や他国の援助機関とも連携しています。特に、DAC・貧困削減ネットワーク(POVNET:Network on Poverty Reduction)においては、同ネットワークの副議長を務めるとともに、同ネットワークに設けられたインフラタスクチームにおいてリーダーとして、ドイツ復興金融公庫(KfW:Kreditanstalt für Wiederaufbau)、フランス開発庁(AFD:Agence Française de Développement)、米国国際開発庁(USAID)、英国国際開発省(DFID:Department for International Development)などとともに二国間ドナーのインフラ支援のあり方を整理した活用指針(ガイディング・プリンシプル)を策定しました。
また、JBICは、[1]AFD、KfWと「貧困削減のためのインフラ」と題するセミナー(2005年9月、於:ニューヨーク)及び革新的開発ファイナンスに関するセミナー(2005年9月、於:ワシントン)を共催し、インフラ支援がMDGs達成に果たす役割の重要性などについて議論、[2]ベトナム、インドネシア、フィリピンなどで援助手続きの調和化について世界銀行、ADBなどとの連携、[3]MDGsの達成に向けた協力関係の強化を目的としたUNDPとの業務協力協定締結、など、開発援助の効果を高めるために様々な活動を行っています。
JICAは効果的な事業実施のため、国際機関や二国間ドナーとの連携も進めています。各ドナーにはそれぞれの強みがあり、これらの強みを組み合わせることで、別々に活動するときよりも、はるかに大きな効果をもたらすことができます。例えば、2005年のJICA緒方理事長と世銀ウォルフォヴィッツ総裁との協議により、双方がアフリカ地域におけるコミュニティ開発及びインフラ開発支援にて連携を進めていくことに合意し、現在、具体的なプロジェクトの実施に向け、調整を行っています。また、UNHCRとは、平和構築支援にかかる安全管理研修の共同実施や南部スーダン等にて平和構築にかかる協力を連携して実施しています。その他にUSAID、技術協力公社(ドイツ)(GTZ:Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit)等とも、現場レベルでの連携ニーズに基づき、具体的な協力事業を実施中です。
●民間企業との連携
ODAの実施に当たっては、日本の民間企業の持つ技術や知見の活用を図っていくことも重要なことです。このような民間企業との連携の一例として、円借款におけるSTEP制度があります。STEPは、日本の優れた技術やノウハウを活用し、開発途上国への技術移転を進めるために、2002年に導入された制度です。STEPの条件では、契約先は日本企業に限定されており、開発途上国の現場での日本企業による事業実施と技術の活用を通じ、日本の「顔の見える援助」が一層促進されることとなります。
(STEPを利用した案件については、第II部第2章第2節2.(1)を参照してください)
従来、STEPの実施の際には、円借款融資対象総額(コンサルティングサービス部分を除く)の30%以上について、日本を原産とする資機材を調達することを条件としていました。2006年10月には、工法等の面で日本企業の優れた技術の活用が期待される事業については、資機材の調達のみならず、工事費等のサービスに係る部分もこの比率の算定に含めることとするなどの制度変更を行いました(注)。この制度変更により、本年度のさらなる活用が期待されます。