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(5)現地機能の強化
ODAの戦略性・透明性・効率性の向上や説明責任の徹底を図るためには、国別の援助戦略構築における現地の役割の強化が必要であるとの考えのもと、ODA大綱では「現地機能の強化」の方針が打ち出され、また、その具体的内容について新ODA中期政策に明示されました。援助政策の決定・実施過程において、在外公館及び実施機関現地事務所などで構成される現地TFが一体となって主導的な役割を果たせるように、機能を強化しなくてはなりません。さらに、現地を中心として、被援助国にとって何が開発上の優先課題になっているのか、その中でもどのようなことに日本の貢献が求められているのかを総合的かつ的確に把握することが必要です。具体的には、現地TFにおいて、その国についての知見や経験をもつ人材を活用したり、現地に精通した援助関係者と連携したりすることを通じて現地の経済社会状況などを十分把握することと、そのための仕組みを作ることが重要です。
また、上記のような被援助国のニーズの把握に加えて、現地TFは、日本の援助の方向性や重点分野などを示す国別援助計画の策定への参画、被援助国との政策協議実施、他ドナーとの援助協調への参画、援助手法の連携と見直しに関する提言、援助候補案件に関する提言など、幅広い役割を担っています。このうち、援助協調に関しては、被援助国政府のオーナーシップのもとに、ドナーを含む関係機関が協力し策定・実施されるPRSPの策定・見直しが進められている動きにあわせて、現地ベースでの援助協調が各地で本格化しており、日本も積極的に参加しています。
さらにこのような援助協調の動きに的確に対応すべく、2006年度より「経済協力調整員」制度を設け、援助協調に関わる情報収集・調査や日本の政策についての対外発信及び提言を行う体制を強化しています。このように、ODA大綱やODA中期政策に明示された通り、外部からの有為な人材を積極的に活用しつつ、一層効率的・効果的な援助を実施しうる在外公館の体制づくりを行っています。
■現地ODAタスクフォース
現地機能強化の一環として、2005年度より、(財)国際開発高等教育機構(FASID:Foundation for Advanced Studies on International Development)と協力して遠隔会議方式の研修(以下、遠隔セミナー)を実施しています。遠隔セミナーのプログラムは、現地TFの希望やニーズに沿って作成されます。これまでアジア、アフリカ、中南米各国のTFを結び、特定テーマについて活発な議論が交わされてきました。遠隔セミナーを通じて、現地および東京の援助実務者や研究者との間で問題意識が共有されることにより、より迅速に援助潮流に対応することに役立てられています。
2005年度遠隔セミナーは、ボリビア、グアテマラ、バングラデシュ、ベトナム、ラオス現地TFとの間で8回にわたって行われました。セミナーでは、ガバナンス、保健、教育などの分野別テーマのほか、援助協調、MDGs、人間の安全保障など多くのTFに共通する課題などが採り上げられました。

現地ODAタスクフォース遠隔セミナーの様子(写真提供:FASID)
(イ)開発ニーズなどの調査・分析
現地関係者を通じて現地の経済社会情勢を把握しつつ、外部人材及び現地援助コミュニティ(主要ドナー諸国、国際機関、NGO、学術機関などを含む)との情報交換などを通じて、被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえた開発ニーズや被援助国自身の開発の取組についての調査・分析機能の強化を図っています。
(ロ)援助政策の立案・検討
現地TFは、国別援助計画の策定への参画や、重点課題別・分野別援助方針の策定への参画、また、被援助国との認識や理解を共有するための政策協議を実施するなど、援助政策の立案・検討に積極的に関わっています。
(ハ)援助対象候補案件の形成・選定
現地TFは、援助案件の形成・選定のための精査において主導的役割を果たします。また、援助の効果を最大にするため、無償資金協力、円借款、技術協力といった援助手法の連携と見直しの必要性や可能性について提言を行います。
(ニ)現地援助コミュニティとの連携強化
開発援助をめぐる国際的な取組として、MDGsをはじめとする共通の開発目標や開発戦略の設定が進行している中、現地TFは、国際機関や他ドナーをはじめとする現地援助コミュニティと緊密な連携を図りつつ、日本の援助政策に沿った形で積極的に援助協調に参画しています。
(ホ)被援助国における日本の関係者との連携強化
日本の優れた技術、知見、人材、制度を活用し、被援助国において活動する日本のNGOや学術機関、経済団体(現地に進出している民間企業を含む)などとの連携強化のため、これら関係者との意見交換を活発に行っています。
(ヘ)日本のODAレビュー
被援助国に対するこれまでの日本の援助が初期の目的・意義を達成したか、目指すべき方向性は適切であったか、重点分野・重点項目の置き方は有効であったか、援助実施上の留意点には有効に対処できたかなどについてのレビューを現地TFが行っています。
(ト)情報公開と広報
ODAに関する透明性向上を図るために、現地TFは、タスクフォースの活動などについて、今後ホームページなどを活用した積極的な広報に努めていきます。