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4.インドネシアへの巡視船艇供与
マラッカ海峡は、年間9万隻以上の船舶が通航する国際的な海運の大動脈であり、日本に関わる船舶も世界で最も多い年間約1万4,000隻が通航し、日本に輸入される石油の約9割が通航する、日本にとっても極めて重要な海上交通路です。その一方で、海賊事件の約37%が同海峡及びその周辺地域を含む東南アジア地域において発生していることから、こうした海域の沿岸国の海上警備体制の強化は早急な対応を必要とする課題となっていました。実際、2005年3月には、マラッカ海峡を航行中のタグボート「韋駄天」(日本船籍)が海賊に襲撃され、日本人が拉致される事件に見られるように、海賊行為等は海上輸送に従事する日本国民及び日本の経済活動にとって直接の脅威となっています。
このような背景の下、2003年6月にインドネシアのメガワティ大統領(当時)、2004年2月にハッサン外務大臣からテロや海賊対策のため海上警備体制の強化を図ることを目的とした巡視船艇の整備につき、無償資金協力の要請がありました。ODA大綱においては、テロ対策は国際社会の安定と発展のためにも重要な課題であるものと位置づけられており、これまでも日本はテロ・海賊対策に資する支援を積極的に実施してきています。
今回の支援により日本から輸出されることとなる巡視船艇は、乗務員を保護するための防弾措置を施しているため、日本の輸出貿易管理令に規定される「軍用船舶」に該当し、武器輸出三原則等において憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、輸出を慎むとされている武器に当たります(注1)。このため、インドネシア側との間で、日本の支援により整備される巡視船艇が日本のODAの対象であり、テロ・海賊行為等の取締りや防止のみに使用され、それ以外の目的で使用されないことや同船艇を日本の事前の許可なしに第三者に移転されないことを確保する必要がありました。そのため、これらを日本とインドネシア間の合意に含めることにより、武器輸出三原則等の例外としました(注2)。これによってODA大綱に則った支援の実施が確保されることになり、また、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等の基本理念が確保されます。
このような措置を講じた上で、2006年6月、巡視船艇3隻の整備を目的とする「海賊・海上テロ及び兵器拡散の防止のための巡視船艇建造計画」に対し、19億2,100万円を限度とする無償資金協力を行うこととしました。日本は、今後もODA大綱を踏まえつつ、開発途上国のテロ・海賊行為等の取締り・防止のために積極的に支援していきます。