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(6)防災と災害復興
 地震、火山噴火、津波、暴風、豪雨、洪水、土砂災害、干ばつなどの災害は世界各国に様々な形で毎年のように発生しています。大規模な災害では、多くの人命や財産が奪われるだけでなく、経済や社会システム全体が長期にわたって深刻な影響を受けることがあります。特に、開発途上国の多くは災害に対して脆弱であり、極めて深刻な被害を受けます。また、一般に貧困層が大きな被害を受けて災害難民となることが多く、衛生状態の悪化や食料不足などの二次的被害が長期化することが大きな問題となっています。
 日本は、自らの過去の災害経験から培われた優れた知識や技術に基づき、緊急支援とならんで防災及び災害復興分野の重要性を強く認識して、積極的な国際協力を行っています。特に、2005年1月に神戸で開催された国連防災世界会議において、今後10年の国際社会における防災活動の基本的な指針となる「兵庫行動枠組2005-2015」が採択され、日本は国連と協力してその世界的な実施を推進しています。同会議において、日本は日本のODAによる防災協力の基本方針等を「防災協力イニシアティブ」として発表し、制度構築、人づくり、経済社会基盤整備などを通じて、開発途上国における「災害に強い社会づくり」への自助努力を引き続き積極的に支援していくことを表明しました。また、2005年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議においては、防災・災害復興対策のためにアジア・アフリカ地域を中心として今後5年間で25億ドル以上の支援を行うことを表明し、日本の役割に対する国際社会の期待はますます高まっています。2006年度には、「防災・災害復興支援無償資金協力」を創設し、防災・災害復興支援を強化することとしています。

パキスタン等大地震での救助活動(写真提供:JICA)
パキスタン等大地震での救助活動(写真提供:JICA

 2005年10月8日に発生したパキスタン等大地震は、パキスタンを中心に、インド、アフガニスタンにおいて死者は約7万5,000人にのぼり、家屋、道路等のインフラが壊滅的な打撃を受けるなど、甚大な被害をもたらしました。これに対し、日本はアジアの一員として迅速かつ積極的な対応を取りました。震災直後から、国際緊急援助隊(救助チーム、医療チーム、自衛隊部隊)の派遣、約2,500万円相当の緊急援助物資の供与を行ったほか、2,000万ドルの緊急無償資金協力及び40億円のノン・プロジェクト無償資金協力、約112億円の円借款の供与を行い、さらには、2,000万ドルの国際機関経由の緊急人道支援、世界銀行及びアジア開発銀行のジャパン・ファンドを通じた計1,000万ドルの支援等を通じて、被災地の復旧・復興を支援しました。
 インドネシアでは、2004年12月にスマトラ沖大地震に見舞われたところですが、2006年には5月のジャワ島中部地震、7月のジャワ島南西沖地震・津波災害を始め、洪水・土砂災害等立て続けに深刻な災害を受けました。日本はこれらの被害に対し、緊急援助物資の供与を始めとする各種支援を実施しました。具体的には、5月のジャワ島中部地震については、国際緊急援助隊(医療チーム、自衛隊部隊)を派遣したほか、テント、浄水器、発電機など約2,000万円相当の緊急援助物資を供与しました。また、インドネシア政府に対して400万ドルの緊急無償資金協力を実施したほか、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC:International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies)を通じて100万ドルの緊急無償資金協力を行いました。7月のジャワ島南西沖地震・津波災害については、テント・簡易水槽など約1,300万円相当の緊急援助物資を供与しました。このほか洪水、土砂災害被害に対しては、1月及び6月にそれぞれ約1,200万円相当の緊急援助物資の供与を行いました。また、災害が多発するインドネシアとの間において、2005年6月の両国首脳間合意に基づき、両国の防災担当の大臣を共同議長とする「防災に関する共同委員会」が設置され、2006年7月、インドネシアにおける包括的かつ効果的な災害対策に向けた指針となる報告書が取りまとめられました。本報告書で示された防災の重要性、課題等も考慮しつつ、引き続き同国の防災体制の強化に資する支援を行っていきます。

5月のジャワ島中部地震での医療活動(写真提供:JICA)
5月のジャワ島中部地震での医療活動(写真提供:JICA)

 2005年度の防災・災害復興分野の資金協力の実績は約898億円で、無償資金協力約226億円、円借款約559億円、国際機関への拠出約66億円となっています。このうち、二国間資金協力(注)を災害形態別でみると、地震・津波関係の割合が最も高く41.7%を占めており、次いで暴風・洪水25.6%、土壌流出19.2%などとなっています。地域別では、アジアの割合が89.0%と最も高く、次いでアフリカ8.0%、中東1.1%となっています。また、国際緊急援助の実績としては、国際緊急援助隊の派遣が5件、のべ約400名、緊急援助物資供与が19件総額約3億円相当の支援を行いました。

図表II―19 防災・災害復興分野の援助実績(災害形態別)

図表II―19 防災・災害復興分野の援助実績(災害形態別)

図表II―20 防災・災害復興分野の援助実績(地域別)

図表II―20 防災・災害復興分野の援助実績(地域別)


 2004年12月にインドネシアのスマトラ島沖で発生した大地震と、それに伴う大規模な津波により、インド洋沿岸諸国は未曾有の被害を受けました。この深刻な被害に対し、日本は、緊急支援措置として表明した5億ドルの無償支援のうち、2億5,000万ドル相当については、深刻な被害を被った国々に対する二国間の無償資金協力(ノン・プロジェクト無償)としてインドネシアに146億円、スリランカに80億円、モルディブに20億円を供与することを決定し、2005年1月に全額の拠出を完了しました。
 被援助国は、日本から供与された資金を活用し、被災民向けの緊急物資の購入、施設再建・修復等の被災地の復興に向けた案件を、累次実施しています。具体的には、医薬品、給水車、及び漁業関連機材等の購入を行っているほか、被害を受けた道路の修復、土地台帳の修復、公共施設の再建、警察署の再建、及び護岸工事などが実施に移されています。この結果、2006年10月にはインドネシアにおける西岸道路は40キロメートル区間の舗装が完了しました。また、浸水した土地台帳約6,500冊の内、約3,000冊が修復作業によって閲覧できるようになりました。スリランカでは4校の警察署が再建されています。また、モルディブでは、破壊された環礁内の幹線道路が再建されました。このように、日本の支援により実施されている各案件は、被災地の復興に向け着実に進んでおり、被災各国から高い評価を受けています。

column II-7 人々が真に求める支援とは ~インドネシア大地震・津波被害への日本の援助~

囲み II-4 「グリーン・リーフ」モルディブ環境賞の受賞について

 災害分野における二国間の協力では、経済社会基盤整備などのハード面での取組に加えて、人材育成などのソフト面での取組にも力を入れています。2005年度は、防災分野で33名の専門家派遣、413名の研修員受入、23件の技術協力プロジェクト等を行いました。具体的な案件例としては、地理的に厳しい気象条件にあるモンゴルにおいて、気象予測及びデータ解析を行う人材を育成する技術協力プロジェクトに着手しました。モンゴルでは、干ばつ、ゾド(寒害)等の気候的要因が、農牧業をはじめとする社会経済活動に大きな影響を及ぼしており、気象データの整備が重要となっています。日本はこれまで気象サービスのマスタープラン作成や無償資金協力による機材提供などを行ってきましたが、こうした機材等を有効に活用するための人材育成を行うことで、より精度の高い気象予報ができるようになると期待されています。


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