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(5)エネルギー
開発途上国においては、経済発展を実現して生活水準を向上させるために、安定したエネルギー供給を確保することが課題となっています。開発途上国では、近代的なエネルギー・サービスを享受できない人々が約25億人いると言われています(注)。近代的なエネルギー・サービスの欠如は、産業の未発達とそれに伴う雇用機会の喪失による貧困化、医療サービスや教育を受ける機会の制限など、経済・社会における生活の質的向上を妨げる要因となります。
また、今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする開発途上国を中心に増大することが予想されています。これに対し、エネルギーの安定供給や環境への適切な配慮なしには、エネルギー需給の逼迫と価格高騰、二酸化炭素排出の増加といった問題が顕著になる可能性があり、ひいては開発途上国の持続可能な開発ならびに日本及び世界の経済・環境に影響が出ることが懸念されます。
このようにエネルギー問題は、貧困、持続可能な開発、環境問題といった様々な問題と関連する地球的規模の課題です。
日本は、開発途上国の持続可能な開発及び日本自身のエネルギー確保の観点から、エネルギー利用の効率の向上及び省エネルギーの推進、及び環境保全に留意しつつ、開発途上国におけるエネルギー供給のための協力を実施しています。日本は、特に民間部門やOOFでの対応が難しい案件、エネルギー効率の向上及び省エネルギーの推進、及び再生可能エネルギーの利用促進などに資する案件について、ODAによる支援を実施しています。また、資源国に対しては、重点的に支援を行うことで、その国の外貨獲得源である資源開発や、自立的発展の促進を図り、資源分野における関係強化を図っています。
2005年度においては、エネルギー分野に対する円借款の実績は約1,671億円、無償資金協力は約342億円となりました。また、技術協力では研修等により445人の人材育成に協力しました。
2005年度の円借款による支援として、インドネシアの「カモジャン地熱発電所拡張計画(調査・設計等のための役務(E/S))」や、エジプトの「コライマット太陽熱・ガス統合発電計画」等が挙げられます。これらのプロジェクトは、エネルギーの安定供給とともに、二酸化炭素の排出量が少ない地熱や太陽熱といった再生可能エネルギーを活用することにより、環境負荷の軽減を図ることも目的としています。また、2006年10月には、イラクの「バスラ製油所改良計画(E/S)」に対して円借款を供与する意図をイラク側に伝えました。本プロジェクトに対する支援を通じて石油ガスセクターにおける日・イラク二国間関係強化にも資することが期待されます(イラク復興支援については第II部第2章第2節4.(1)も参照してください)。
無償資金協力では、ソロモンの「ホニアラ電力供給改善計画」や、ツバルの「フナフチ環礁電力供給施設整備計画」において、電力供給が不足している島嶼国に対し発電施設の新設又は増設、配電設備の整備を支援しました。これにより、電力の安定的供給、社会経済活動の活性化につながることが期待されています。
技術協力では、エネルギー管理、エネルギーロス改善・エネルギー利用効率化及び再生可能エネルギーといった分野の技術移転や人材育成を行っています。例えば、ラオスでは、これまでの日本の技術協力により2004年に電力技術基準の省令が施行されており、2005年からは「電力技術基準促進支援プロジェクト」において、この省令を実際の行政や事業に反映させるための人材育成を支援しています。これにより、電力分野における設計・保守・管理などの活動や電力設備の安全性の向上が期待されています。
日本は、開発途上国に対する近代的エネルギー・サービス提供による貧困対策や、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、同時に、エネルギーロス改善・エネルギー利用効率化及び再生可能エネルギーを活用した発電施設などのエネルギー関連インフラの整備といった、環境に配慮したエネルギー分野の協力も積極的に進めています。