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(3)水と衛生
 WHOUNICEFが作成した「水と衛生に関するMDG達成に向けて-都市部・村落部での挑戦の10年-」(2006年)によると、上水道や井戸などの安全な水を利用できない人口は2004年に世界で約11億人おり、そのうち、アジアが約6億人、アフリカが約3億人となっています(注1)。また、世界で約26億人が下水道などの基本的な衛生施設を利用できない状況にあり、うちアジアが約19億人、アフリカが約5億人となっています。
 水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題であり、同報告書によると年間約160万人の幼い子どもの命が奪われているのが現状です。このような状況を反映し、国連はMDGsの中で「安全な飲料水及び基本的な衛生施設を継続的に利用できない人の割合を2015年までに半減する」という目標を掲げるとともに、2005~2015年を「『命のための水』国際の10年」として様々な取組を進めています。例えば、国連持続可能な開発委員会(CSD:Commission on Sustainable Development)は、2004~2005年に水、衛生施設及び人間居住を特定テーマとして取り上げ集中的に討議し、2005年4月に「政策決定文書」を発表しました。また、国連「水と衛生に関する諮問委員会」は、2004年7月の設立以降、2006年3月までに5回開催され、第4回世界水フォーラム(2006年3月)の機会に「橋本行動計画(Hashimoto Action Plan)」を発表しました。
 日本は、水と衛生の分野では従来から大きな貢献をしています。1990年代から継続的にDAC諸国の中のトップドナーとして支援を実施してきており、2000年から2004年までの5年間で二国間ドナーの41%に当たる46億ドルのODAを実施しました(注2)
 2003年3月に京都で開催された第3回世界水フォーラムでは「日本水協力イニシアティブ」を発表し、日本の水分野の援助における包括的な取組を表明しました。また、2006年3月にメキシコ・シティで開催された第4回世界水フォーラムでは、水と衛生分野で国際機関、他の援助国、内外のNGO等との連携を強化し、一層質の高い援助を追求するため、「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」を発表しました(同イニシアティブについては、第II部第2章第1節3.(3)を参照してください)。
 また、国際的なパートナーシップの強化のため、日本は、日米水協力「きれいな水を人々へ」イニシアティブに基づき米国との連携を進めています。第4回世界水フォーラムの機会には、日米両国がセッション及び共同会見を共催し、同パートナーシップの進展と成果を発表しました。現在、インドネシア、インド、フィリピン、ジャマイカの4か国をパイロット国とし、日本の国際協力銀行(JBIC:Japan Bank for International Cooperation)による有償資金協力とUSAIDの投資保証を組み合わせて、地方上下水道インフラに民間資金を呼び込むための手法等について検討を進めています。フィリピンでは、「地方自治体上下水道事業協力(MWLFI:Municipal Water Loan Financing Initiative)」として、日米両国の資金協力を組み合わせた融資の第1号案件が2006年3月に実現しました。また、MWLFIの構築で得られた教訓も生かしつつ、より効率的かつ持続可能な方法で民間投資促進を行う新たな資金スキーム「フィリピン上下水道整備基金(PWRF:Philippine Water Revolving Fund)」の検討も進んでいます。
 2005年度は、水と衛生分野で、無償資金協力約235億円、円借款約1,783億円を合わせた約2,019億円の協力を行いました。援助実績を目的別でみると、飲料水・衛生への供与が最も多く、39.9%を占めており、次いで、植林8.6%、防災8.6%などとなっています。地域別では、アジアが71.4%と大半を占めており、次いで中南米19.2%、中東5.3%などとなっています。

図表II―12 水と衛生分野の目的別供与実績

図表II―12 水と衛生分野の目的別供与実績

図表II―13 水と衛生分野の地域別供与実績

図表II―13 水と衛生分野の地域別供与実績


 具体的な案件例として、インドネシアの「スマラン総合水資源・洪水対策計画」への円借款の供与を決定しました。これは、雨期の洪水被害及び乾期の水不足を改善するため、治水・利水を長期的かつ総合的な視点から支援するもので、中部ジャワ州の州都スマラン市において、放水路・河川改修、排水整備及び多目的ダムの建設を行うものです。日本は、「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」においても、水利用の持続可能性の追求のため、治水・利水をはじめ統合的に水を管理していくことを重視しており、このような総合的アプローチを推進していきます。
 技術協力については、2005年は上下水道分野において147人の専門家を36か国に派遣したほか、96か国1,053人の研修員に研修を実施しました。この結果、日本水協力イニシアティブで目標(5年間で約1,000人)を発表した2003年度からの累計では、派遣した専門家477人、受け入れた研修生3,368人となりました。


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