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囲み II-5 「保健と開発」に関するイニシアティブ(概要)

1.基本的な考え方
(1)8つのミレニアム開発目標(MDGs)のうち3つを占める保健関連目標達成に向けた進捗状況は、必ずしも充分とは言えない。
(2)開発途上国における保健問題は、経済社会活動にも影響を与え、結果として国レベルで貧困を助長する。貧困削減への取組に保健関連MDGsの達成は極めて重要。
(3)グローバル化の進む国際社会においては、HIV/エイズやインフルエンザ、SARSなどの感染症対策を実施し、日本国民を含む世界の人々の健康を守ることに貢献していく責務がある。
(4)我が国は、「沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)」、「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」、「国際寄生虫対策(橋本イニシアティブ)」、「TICAD東京行動計画」などを通じて保健分野への貢献に取り組んできた。
(5)2005年3月のIDI終了を契機に、保健MDGs達成に対する貢献に重点を置きつつ、「保健と開発」に関するイニシアティブを策定。
2.基本方針
(1)「人間の安全保障」の視点の重視
(2)横断的取組
(3)国際社会における連携と協調
(4)開発途上国の多様な事情に応じた援助戦略の形成
(5)援助実施現場における研究機能の強化と現場固有の事情への配慮
3.具体的取組
(1)保健医療体制の基盤整備に関する支援
 (イ)保健医療システムの強化
 (ロ)保健医療従事者の育成
 (ハ)保健医療施設の整備と機能強化
(2)保健医療分野の支援を補完する関連分野の支援及び分野横断的取組
 (イ)ジェンダー平等のための支援
 (ロ)教育分野における取組
 (ハ)水と衛生分野における取組
 (ニ)社会経済基盤(インフラ)整備支援
(3)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成への貢献に向けた取組

目標4:幼児死亡率の削減
 ターゲット5:2015年までに5歳児未満の死亡率を3分の2減少させる

 安全な水や適切な衛生の確保、ORS(経口補水塩)の普及、抗生物質投与、ビタミンAやヨードの投与など栄養状態の改善に対する取組、殺虫剤浸漬蚊帳の配布、抗マラリア薬の供与、予防接種実施、予防教育活動、乳幼児の健康管理支援、IMCI(小児疾患の包括管理)推進支援など。

目標5:妊産婦の健康の改善
 ターゲット6:2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少させる

 母体保護のための啓発・住民教育、避妊薬具の配布、医師・助産師の立ち会い出産増加のための医療従事者育成、産院・診療所・救急車・薬などの利用可能設備の整備や機材供与、医療機関へのアクセス改善、母子手帳の普及、妊産婦検診普及など。

目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
 ターゲット7:HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる

 予防啓発活動を行う人材育成に対する支援、コンドームなどの供与、性感染症への対策、自発的検査とカウンセリング(VCT)の普及(検査キットの供与、カウンセリングのための人材育成支援、施設整備支援)、抗ウィルス薬(ART)治療の普及、日和見感染に対する対策支援、母子感染予防、感染者の社会参加、エイズ遺児に対してのケア、安全な血液を供給するためのシステムづくり支援など。

目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
 ターゲット8:マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後発生率を下げる

 (イ)マラリア、結核
 予防教育及び検査・治療、殺虫剤浸漬蚊帳の供与、抗マラリア剤の供与、DOTS(短期化学療法を用いた直接監視下治療)戦略拡大支援のための抗結核薬や検査機材の供与、人材育成支援など。
 (ロ)その他の疾病
  (a)ポリオ
 経口ワクチン供与、診断技術やサーベイランス手法、ワクチン製造などの技術指導。
  (b)寄生虫
 学校やコミュニティーを通じた予防、治療、啓発活動への支援、トイレの設置等の衛生対策支援、シャーガス病・フィラリア症・ギニアワーム症・住血吸虫症などの対策のための人材育成。
  (c)新興感染症
 流行の早期発見に資する世界的な疾病監視システムの構築。
(4)我が国の援助実施体制の強化
 (イ)国内の人材育成
 (ロ)関連省庁間連携、研究活動のネットワーク化の推進
 (ハ)政府とNGO、大学、研究機関、民間企業等との間の連携強化
 (ニ)モニタリング・評価体制の充実

注)「保健と開発」に関するイニシアティブの全文は第II部第3章「ODAに関する主な資料」を参照