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(3)スーダン

 2005年1月、ケニアのナイロビにおいて、スーダン政府とスーダン民族解放運動・軍(SPLM/A:Sudan People's Liberation Movement/Army)との間で、南北間の包括的和平合意が署名されました。これは、20年以上にわたったアフリカ最長の紛争の一つであるスーダン内戦を終結させる画期的な合意です。
 包括的和平合意は、6か月間の暫定期間に国民統一政府を樹立し、6年間の移行期間中の大統領選出・総選挙実施などを経て、最終的に南部の将来を自ら決定するため、南部の独立国家の樹立か北部との統一国家の存続を問う住民投票を行うことを定めています。
 2005年4月、スーダン南北間の包括和平合意の成立を受け、和平合意の着実な履行に対して幅広い国際的支援を得るため、アナン国連事務総長をはじめ、日本を含む60以上の国、地域、機関の代表が出席して、スーダン支援国会合がオスロで開催されました。オスロ会合では、2005年から2007年の3年間の支援要請額約41億ドル(注1)に対して、各代表団より、これを上回る計45億ドルの支援表明があり、スーダンの南北和平合意履行のための国際社会による一致した支援の強化という目的は達成されました。日本からは逢沢外務副大臣が政府代表として出席し、スーダンにおける平和の定着を支援するために当面1億ドルの支援を行うことを表明しました。
 日本の支援では、具体的には、国連2005年ワークプランを中心に地雷除去、難民・国内避難民の帰還・定着を支援することに加え、国連統一プロジェクトであるDDRの支援、人材育成のための技術協力の新規実施、人間の安全保障に不可欠な水・衛生、保健・医療、食糧分野での支援の継続・強化を行うこととしています。既に、国連2005年ワークプランに基づく地雷除去支援として、日本は2005年3月、国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS:United Nations Mine Action Service)が実施する南部地域における地雷除去を含む地雷対策活動を支援するため、約700万ドルの緊急無償を決定・実施しています。また、5月下旬にODAセミナーを日本で開催したことに続き、6月下旬には政府調査団を現地に派遣し、二国間援助実施に向けた政府間対話を行うとともに、今後の具体的な支援策のあり方について検討しました。7月下旬、その一環として食糧援助、食糧自給支援及び小児感染症予防支援からなる総額約12億円の無償援助を決定したほか、3月に国連平和維持活動として設立された国連スーダン・ミッションに対する約2億円相当の物資協力を決定しました。

内戦中に埋設された地雷を回避するための教育の様子。(写真提供:UNMAS)
内戦中に埋設された地雷を回避するための教育の様子。(写真提供:UNMAS)

 また、オスロ会合では、日本を含む参加国からダルフールにおける深刻な人道、治安情勢に対する懸念も表明されました。ダルフール問題について日本は、すべての関係当事者に対し、安保理決議などの遵守を求めるとともに、2004年に約2100万ドルの人道支援を実施したのに加え、2005年3月には、ダルフール問題解決のため主導的な役割を果たしているアフリカ連合(AU:African Union)の活動に対して約200万ドルの支援を実施しました。日本は、和平の定着支援の実施と並行して、ダルフール問題に関する安保理の動向と歩調を合わせ、同問題の解決に向けてスーダン政府を含め関係者の具体的努力を引き続き働きかけていく方針です(スーダンへの支援については、第II部第2章第4節2も参照して下さい)。
 スーダン支援は、日本が対アフリカ政策の重要な柱として強調する「平和の定着」に対する支援の典型例であり、その成功は今後のモデル・ケースとなり得るものです。2005年4月に開催されたアジア・アフリカ首脳会議において、小泉総理大臣はアフリカ支援全般の強化とともに平和の構築支援を打ち出しましたが、スーダン支援はその中核をなしています。


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