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(4)アフリカ(サブ・サハラ)(注1)
サブ・サハラ・アフリカにおいては、人為的な国境線の画定、国家基盤の脆弱性などを背景に、貧困、民族・宗教対立、経済的利権、独立問題などの複雑な要素が絡み合い、冷戦終焉とともに、政府と反政府勢力間の権力・資源争い、部族の対立、国家間の対立による紛争が発生しました。また、コンゴ民主共和国のように政府・反政府勢力間の争いに近隣諸国が介入して国際紛争に発展するケースも頻発しました。これらの紛争は多くの犠牲者や大規模な難民・国内避難民を生み出したばかりでなく、経済の停滞、インフラなどの環境の破壊、さらなる貧困などの悪循環を招き、さらには国家の機能不全により対策が十分に講じられないことから、HIV/エイズやマラリアなどの感染症のまん延、人権の抑圧、武器・薬物などの流出入、組織犯罪の深刻化などをも引き起こしています。
図表II-23 日本の対アフリカ「平和の定着」支援パッケージ(2005年3月)

日本は、アフリカの安定と発展のために、紛争地域における和平を推進し、また紛争後の復興を切れ目なく支援していくとの考えから、日本の対アフリカ支援の基軸であるアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)プロセスにおいて、日本が重視する支援の柱の一つに「平和の定着」を掲げる旨を表明し、これまで積極的に人道・復興支援を実施してきています。
近年はアフリカ諸国やAU及び西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)や南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)などの域内地域機関など、アフリカが自らの手により紛争の予防・解決に積極的に取り組む傾向が見られます。その甲斐あって、10年にわたって続いたシエラレオネの内戦が2002年に終結を迎えたほか、1975年の独立以来27年にわたり繰り返されてきたアンゴラの内戦も2002年に停戦合意が成立しました。さらに1998年以来、近隣諸国が介入しての紛争が続いていたコンゴ民主共和国でも2002年に和平合意が成立するなど、各地の紛争が徐々に終結し、アフリカ全体に平和の兆しが見えてきています。また紛争終結後、再び紛争に逆戻りせず平和が定着するよう、多くの国でDDRが進められるなど、復興に向けた取組が進展しつつあります。
近年のアフリカ自身によるオーナーシップに基づく「平和の定着」をさらに推進するべく、日本は、2005年3月、アフリカ14か国に対し難民帰還支援、小型武器回収、コミュニティ再建、選挙支援などの分野で総額約6,000万ドルの支援パッケージを実施しました。具体的には、ウガンダの北部地域に発生した国内避難民に対する緊急支援として、UNICEFを通じた保健・栄養改善、給水・衛生、児童保護などのために約928万ドルを支援したほか、コンゴ民主共和国においては独立以来45年間で初めて実施される民主的選挙に対しUNDP経由で約760万ドルの選挙支援などを行っています。
また日本は、AUが紛争予防・管理・解決の分野で果たしている役割を高く評価しており、AUの活動を支援するため、AU平和基金に対し合計約433万ドル(注2)を拠出しています。さらに、紛争などにより避難を余儀なくされている難民・国内避難民などに対し、2004年度には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)経由で約5,100万ドル、WFP経由で約3,265万ドル、IOM経由で200万ドル、赤十字国際委員会(ICRC:International Committee of the Red Cross)経由で約472万ドルの支援を実施しました。