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本文 > 第II部 > 第2章 > 第2節 > 2.持続的成長 > (1)経済社会基盤(インフラ)への支援

2.持続的成長

 貧困削減を達成するためには、開発途上国の経済が持続的に成長し、雇用が増加することにより生活の質も改善されることが不可欠であることから、日本は、開発途上国の持続的成長に向けた努力を積極的に支援していく方針です。

(1)経済社会基盤(インフラ)への支援

 第I部でも述べたとおり、日本は、貧困削減のためには、貧困対策や社会開発分野での貧困層に直接影響が及ぶような支援のみならず、持続的成長が不可欠であるとの立場から、開発途上国の発展の基盤となる経済社会基盤(インフラ)整備などを通じて貿易、投資及び人の交流を促進させることを重視しています。すなわち、教育、保健、安全な水、居住の場などの基礎社会サービスの拡充に資するインフラ整備はもとより、病院や学校などへのアクセス改善や都市と農村地域との交流拡大などを目的とした運輸、通信などの経済インフラ、貧困層が裨益するような農産物市場や漁港、農道といった小規模な経済インフラなどの整備などを進めています。また、開発途上国の自立を促し、持続的な成長につなげていくためには、民間セクターによる活動の促進が必要との観点から、民間投資を呼び込むための貿易・投資環境などの整備に資する運輸、エネルギー、情報、通信、生活環境などのインフラ整備を進めています。
 2004年度の実績では、運輸分野に約2,620億円(円借款に占める割合は約40.0%)、通信分野に30億円(同0.5%)の支援を行いました。また、運輸分野の支援においては、その約3割に対して、日本の優れた技術やノウハウの活用を目的としたSTEP(Special Term for Economic Partnership:本邦技術活用条件)が適用されました。
 運輸インフラについては、2004年度には、ベトナムに対する円借款として、「国道3号線道路ネットワーク整備計画(第1期)」、「サイゴン東西ハイウェイ建設計画(第4期)」に対する支援などを実施しました。ベトナムでは、近年の急速な人口増加と経済発展により、慢性的な交通渋滞、沿道環境の悪化、交通事故の増加などの道路交通問題が深刻化しており、これら道路インフラの整備により、道路利用者の利便性や安全性の向上が図られるとともに、物流の効率化が進み、経済基盤の強化及びバランスのとれた経済成長の促進に貢献することが期待されています。
 通信インフラについては、2004年度には、例えば、カンボジアに対する円借款として、「メコン地域通信基幹ネットワーク整備計画」に対する支援を供与しました。同計画は、カンボジア政府が計画しているすべての州都を光ケーブルまたはマイクロ・ウェーブで結ぶ基幹伝送路の整備のうち、人口の45%が居住し経済活動の中心地となっているコンポンチャムから首都プノンペンを経てカンボジア唯一の外港であるシハヌークビル港に至る光ケーブルを敷設し、高い経済成長を遂げている同地域の通信機能を改善することにより持続的な成長を後押しすることが期待されています。

タイで初めての地下鉄が、日本の円借款で建設された。写真は地下鉄のトンネルの様子。
タイで初めての地下鉄が、日本の円借款で建設された。写真は地下鉄のトンネルの様子。

 インフラを開発途上国における適切な開発政策に基づき整備し、また、適切に管理・運営するためには、それに対応しうる人材の育成が不可欠です。技術協力による支援では、国土計画や都市計画の策定、建設した施設を管理・運営する技術者の育成、管理・運営に必要な機材供与及び開発調査など幅広い協力を行っています。
 また、貿易投資関連の制度整備支援として、日本貿易振興機構(JETRO:Japan External Trade Organization)や海外技術者研修協会(AOTS:Association for Overseas Technical Scholarship)などを通じ、各分野の専門家派遣や研修員受入、セミナーの開催などを実施し、知的財産権保護や基準・認証、物流効率化、環境・省エネルギー、産業人材育成などの制度整備に向けた人づくりを支援しています。

column II-6 明るい未来へつなぐ日本・パキスタン友好トンネル

 また、インフラ整備におけるアジア太平洋地域の主要課題を継続的に議論する場である「アジア太平洋地域インフラ担当大臣会合」に対し、日本はこれまでの経験により蓄積されたインフラ整備のノウハウを活かして積極的に取り組んでいます。この会合は、1995年に日本の提唱により設立されたもので、2005年1月にはマレーシアで第5回大臣会合が開催され、13の国・地域が参加して「インフラ整備と環境のバランス」をテーマに、国際的な環境問題の解決に向けた国際協力の促進などについて具体的な議論が行われました。


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