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column II-6 明るい未来へつなぐ日本・パキスタン友好トンネル



 パキスタンを南北に縦断する国道55号線(通称「インダス・ハイウェイ」)の中で、アフガニスタンと国境を接する、北西辺境州中部に位置するコハット峠は、道路幅が狭く急勾配や急カーブが多い交通の難所と言われてきました。この峠では、大型車は通行不可能で大幅に迂回する必要があったほか、見通しが悪いために年間30人近くの死者を出すなど、重大事故が多発しており、通行上の障害となっていました。このコハット峠の交通渋滞の緩和と安全性の確保を図るため、日本は、パキスタン政府の要請を受けて、道路トンネルとしてはパキスタン国内最大のトンネル(全長1,885m)とその前後のアプローチ道路(全長約30km)を新設する「コハット・トンネル建設プロジェクト」に対して円借款供与を行いました。このプロジェクトは1999年に着工し、2003年6月、北西辺境州の2地区を最短で結ぶルートが開通しました。地元の運転手は、「いろいろな報道があったので、コハット・トンネルができることは知っていた。早くできないかと期待して待っていた」と話しています。
 これにより、国道55号線の利用者は、交通の難所であったコハット峠の旧道ではなく、新たに完成したコハット・トンネルを通って、安全かつ短時間で通行することが可能となりました。別の運転手の話によれば、以前はコハット峠を越えるために3時間近くかかっていたのが、今では1時間以内で済むそうです。また、渋滞が緩和され、ロングトレーラーなどの大型車の通行も可能となったため、物流効率の向上を通じたパキスタン北部の経済開発や、アフガニスタン北部への輸送力の増強が期待されています。実際、トンネル開通直後の2003年7月の交通量は約11万台でしたが、2005年4月には約19万台まで増加し、このうち大型トラックの通行量は約2,500台から8,500台にまで増加しました。
 このプロジェクトに対するパキスタンの評価は非常に高く、完成したコハット・トンネルは「パキスタン・日本友好トンネル」と名付けられました。完成式典にはムシャラフ大統領が自ら出席し、スピーチの中で「パキスタン国民を代表して日本の支援・貢献に感謝したい。パキスタンは日本の支援を決して忘れない」と述べています。その証として、日本からのODA50周年を記念してパキスタン政府が発行した記念切手のデザインには、コハット・トンネルが採用されています。
 これからもコハット・トンネルは、日本とパキスタンとの友好の象徴として、パキスタンの発展に貢献していくことでしょう。

コハット・トンネルの位置
コハット・トンネルの位置

コハット・トンネル。トンネル上の看板には「友好トンネル」と書かれている。(写真提供:JBIC)
コハット・トンネル。トンネル上の看板には「友好トンネル」と書かれている。
(写真提供:JBIC)


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