column II-5 ウガンダのネリカ稲裨益者
近年、サブ・サハラ・アフリカでは、都市部を中心に、トウモロコシやイモ類、雑穀などに比べ調理が簡単な米の消費が伸びています。しかし、消費の増加に生産が追いつかないため、多くの国ではアジアからの米の輸入が増加しています。こうした中、従来の稲に比べ収量が多いネリカ稲(NERICA)は、米の増産を実現する上で有望な品種として大きな注目を集めています。
ネリカ稲は、病気や乾燥に強いアフリカ稲と高収量のアジア稲とを、種の壁を越えて交配させて開発された両方の長所を有する新しい品種の稲です。このネリカ稲の研究開発・普及を、日本はアフリカ稲センター(WARDA)やUNDPなどの国際機関とも協力しつつ、強力に支援してきました。
東アフリカのウガンダでは、政府が積極的にネリカ稲の生産を奨励していますが、稲の栽培技術に関する知識や経験はまだ十分とはいえません。このため、研修を実施し、栽培マニュアルや収穫後処理(脱穀、風選、乾燥)の方法、農具などを紹介することで地域農民の技術を向上させることが課題です。現在、JICAから農業専門家がウガンダに派遣され、NGOと協力して、ネリカ稲の栽培指導や脱穀機の製造研修などを行っています。こうした日本の支援、そしてNGOの普及活動や民間会社による種子の生産・販売の効果もあり、ネリカ稲が急速に普及しています。同国のネリカ稲の栽培面積は、2002年で1,500ヘクタール程度でしたが、現在は1万ヘクタール以上と推定されています。最近では、東アフリカ各国からの視察研修も実施されており、ウガンダは東アフリカにおけるネリカ稲普及の拠点となりつつあります。
ウガンダの農民組合「ブバゴ 注)多目的農民グループ」の代表であるロバート・ワイワさんは、2001年からネリカ稲の栽培を始めました。ワイワさんは、ネリカ稲の導入をきっかけとして農民組合を設立し、周囲の農民らと種子の融通や共同作業、情報交換を行っています。現在、組合員は35名(男性20名、女性15名)に増え、当初約1.2ヘクタールだった栽培面積は、現在約32ヘクタールまで増加しています。
ワイワさんは、「ネリカ稲を栽培するようになってから、トウモロコシやミレット(キビなどの雑穀)に比べて高品質・高収益の米を販売できるようになり、収入が増えて子供の学費や薬代が払えるようになった。農民組合の設立により、農民の栽培技術レベルも向上してきている。ネリカ稲の開発・普及に感謝している」と話しています。

ネリカ稲栽培の技術指導を行う専門家 (写真提供:JICA)
注)ウガンダ南東部、イガンガ県の農村。