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column II-20 モザンビークで奮闘する青年海外協力隊員



 青年海外協力隊(JOCV)は今年(2005年)創設40周年を迎えます。2003年には1,303名が世界各地に派遣されました。その中から、モザンビークに派遣された塚原隊員の活動を紹介します。

●塚原隊員
 アフリカの南東部に位置するモザンビークは、南部地域を中心に、乾期には干ばつ、雨期には洪水が発生するなど、自然災害の影響を受けやすく、食糧生産が難しいという課題を抱えています。そんな同国の南部ガザ州シブト郡の村に、青年海外協力隊員の塚原隊員がやってきたのは今から2年前。このシブト郡も、慢性的な洪水被害のために食糧不足に悩まされ、特に2000年に発生した洪水ではかんがい水路が土砂に埋まり、かつて畑地だった土地は耕作できないまま湿地になってしまったほどでした。
 こうした中、塚原隊員は、地域の農民やシブト郡農業事務所(DDA)と協力して、このかんがい水路の改修を行うことを任されています。連日朝の5時から、地域の農民や畑地の所有者のみならず、幼児を背負った農婦や仕事のない青年など総勢600名ほどが、場所によっては腰まで水に浸りながら工事に取り組んでいます。洪水で荒れ果てた草地で、蚊の大群や毒蛇に注意しながら草を刈るという地味な作業。地域の農民の意識を高め、地道な作業に参加し続けてもらうようにすることが、塚原隊員の最も苦労した点です。農民たちは本業である農作業の合間を使ってかんがい事業を手伝っており、そうした農民たちと共に、500ヘクタール(東京ドームの約100個分)という広大な土地のかんがいを行うためには、多大な時間を要し、作業が滞ることも度々でした。しかし、塚原隊員は安易に掘削機械に頼りませんでした。自分たちの手で農地を改善しようとする農民の意欲が一番大事だと考えたからです。こうした考えに基づき、一部の地区ではWFPの「Food-for-Work」(第II部第2章第2節3.(4)参照)を導入し、かんがい作業の報酬として食糧の配給も始めました。こうした地道な努力が実を結び、農民の生活状況は改善に向かい、工事も徐々に軌道に乗り始めました。
 農民が指導者としての塚原隊員に寄せる期待は高く、プレッシャーに負けそうになることもありましたが、5年ぶりに畑を耕すことが出来た現地の喜びの声、自分で掘った水路を見て欲しいと頼みにくる農民、自分の畑は自分の手で良くしようと頑張る地域住民の姿に接し、今では塚原隊員自ら、2005年12月までだった2年の任期を延長し、さらにあと1年間活動することとなりました。現場を上手に監督し、献身的に働くDDA職員が塚原隊員に寄せる全幅の信頼も、日々の活動の原動力となっています。時にはやる気のない住民に失望させられることもありますが、向上心溢れる農民に対しては、かんがい工事による田畑の改善によってより良い生活ができるよう手助けしたい、と塚原隊員は思っています。

かんがい工事を行う農民たち(写真提供:JICA)
かんがい工事を行う農民たち (写真提供:JICA)


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