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4.アフリカ
(注1)

 日本のアフリカに対する2003年の二国間ODAは、約5億2,998万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は8.8%です。
 アフリカは、深刻な貧困、紛争、飢餓、HIV/AIDS等の感染症、累積債務などの課題が集中している地域です。近年、アフリカ開発問題の重要性が改めて認識され、国際社会の関心が集まっています。2000年の国連ミレニアム・サミット以降の各種国際会議における開発に関する議論の多くは、アフリカの開発問題やアフリカが抱える諸問題をテーマとして取り上げたものとなっています。日本は、このような潮流に先駆け1990年代初頭から国際社会で積極的に対アフリカ開発協力のイニシアティブをとってきました。東西冷戦終焉に伴い国際社会のアフリカへの関心が低下する中で、日本は国際社会の関心を再喚起すべく、1993年のTICADI、1998年のTICADIIを開催し、アフリカ諸国の自助努力(オーナーシップ)とそれを支援する国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきました。このような日本のアフリカ問題に対するイニシアティブは、アフリカ開発に対する国際社会の取組の強化へとつながりました。また、G8サミットにおいても、日本が議長国であった2000年のG8九州・沖縄サミットに南アフリカ、ナイジェリア、アルジェリアの大統領が招待されG8首脳との対話が実現したのをきっかけに、アフリカ問題が主要議題の1つとなり、2002年のG8カナナスキス・サミットでは「G8アフリカ行動計画」が採択されるなど具体的な協力が拡大しています。さらに、アフリカ自身もオーナーシップの重要性を認識し、「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD:New Partnership for Africa's Development)(注2)」の策定やアフリカ連合(AU)の成立など、具体的な取組を始めています。そうした流れを踏まえ、ODA大綱においても、「アフリカは、多くの後発開発途上国が存在し、紛争や深刻な開発課題を抱える中で、自助努力に向けた取組を強化しており、このために必要な支援を行う」と明記しています。
 2003年9月に開催されたTICADIIIには、アフリカ及び欧米、アジア、国際機関など89か国、47機関から24名の首脳級代表を含む1,000名を超える参加を得て、NEPADに対する国際社会の支援の結集、アジア諸国をはじめとする新しいパートナーシップの拡大を目指して、アフリカ開発に向けたアフリカ及びドナー双方の取組について幅広い議論を行いました。小泉総理は、TICADIIIの基調演説において「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」、「平和の定着」を3本柱とする日本の対アフリカ支援方針を表明するとともに、HIV/AIDS対策を含む保健医療、教育、水や食糧支援等の基礎生活分野で、5年間に10億ドルの無償資金協力を実施する旨表明しました。同時に日本の対アフリカ支援において「人間の安全保障」の視点や「南南協力」を重視していくことも明らかにしました。また、アフリカ側からは10年にわたるTICADプロセスの貢献を高く評価し、TICADプロセスの継続を求める強い声が出され、今後のTICADをより制度化して継続していくというコンセンサスが形成されました。
 日本は、TICADプロセスを通じて、アフリカの経済成長に不可欠な農業開発や社会・経済インフラ整備、紛争地域における人道・復興支援や人間の安全保障に向けた支援などアフリカ諸国に対し様々な協力を行ってきています。例えば、MDGsとの関係において、日本はMDGsに先んじてTICADIIの時点で、水・教育・保健医療の分野で900億円の協力を表明し、TICADIIIまでの5年間で460万人の人々に衛生的な水へのアクセスを、260万人の子供に教育へのアクセスを、2億4,000万人の人々に保健医療サービスを提供することに成功しました。さらに技術協力においても、アフリカ域内の協力の拠点を活用して周辺国を対象とした第三国研修を実施しているほか、北アフリカやアジア諸国と協力して技術協力を実施する南南協力を推進しており、TICADプロセスの最大の特徴の一つとなっています。特に、日本の経済協力によって一定の成長を遂げたアジア諸国の経験をアフリカにおいて活用するアジア・アフリカ協力は日本ならではの協力として高い評価を得ており、ネリカ米の開発・普及事業や民間貿易投資の促進など具体的かつ特色あるプロジェクトが実施されています。

columnII-10 アフリカ開発会議(TICAD)プロセスにおける貿易投資促進の取組

図表II-33 アフリカにおける日本の援助実績

図表II-33 アフリカにおける日本の援助実績


 アフリカにおいては、紛争が開発の大きな障害となっており、平和の定着に向けた支援が極めて重要です。日本は、シエラレオネ、コンゴ民主共和国、リベリア、コートジボワール、アンゴラといった紛争を経験した国において、元兵士の社会復帰促進を目的として、DDR(武装・動員解除及び社会復帰)支援を実施しています。例えば、リベリアでは、児童兵のDDRプロジェクト実施に資することを目的に、UNICEF(国連児童基金)に対し、2004年3月に総額約4億4,000万円の緊急無償資金協力を行いました。
 また、アフリカ地域には、世界でHIPCとして認定されている42か国のうち33か国が集中しており、日本はこれらの国々に対して債務削減問題でも、拡大HIPCイニシアティブの枠組みにおいて最大の貢献を行っています(注3)。さらに、同イニシアティブ適用の条件となっているPRSPについては、タンザニアやエチオピアなどにおいてその実施に向け積極的な支援を行っています。具体的には、タンザニアでは、2004年3月にPRSPに対応したPRBSへ総額5億円のノンプロジェクト無償資金協力による財政支援を決定し、また、PRSPのモニタリングに必要な統計調査をより効率的で信頼性の高いものにするため、技術協力プロジェクトを通じ国家統計局データ提供能力の強化を図っています。(財政支援に関する詳細はII部2章2節を参照して下さい。)エチオピアでは、UNDPとの連携によりPRSPの枠組みに沿った農業分野の調査を実施しています。


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