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3.中央アジア・コーカサス地域
日本の中央アジア・コーカサス地域に対する2003年の二国間ODAは、約3億4,553万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は5.7%です。
日本は、旧ソ連崩壊後の新たな国際情勢下における中央アジア・コーカサス地域各国の市場経済導入の努力を支援するとともに、2001年9月の米国同時多発テロ事件以降の国際環境の変化に伴い、同地域の果たしうる役割と重要性を考慮し、これらの国の経済社会開発を積極的に支援しています。ODA大綱も、この地域の民主化や市場経済化への取組を支援することとしています。具体的には、人材育成のための技術協力や経済改革に伴う困難を緩和するための資金協力を中心とした援助を行っています。
中央アジア・コーカサス地域の諸国は、計画経済体制から市場経済体制への移行期にある国であり、人材育成と制度づくりへのソフト面での協力が重要です。2003年度末までにこれら8か国から約3,100名の研修員を受け入れています。また、経済運営、法制度整備支援、通信、金融、環境、運輸インフラ、保健医療分野等の専門家派遣、社会セクター、エネルギー、資源開発分野での開発調査等を通じ、同地域の人材育成と制度づくりを支援しています。
ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスには人づくり支援の拠点として「人材開発センター(日本センター)」を開設しており、これらセンターには日本から専門家を派遣し、経済・経営等ビジネス講座や日本語講座を実施する等、同地域の人材育成に貢献しています。
また、同地域では、国内における地域格差が顕著な国もあることから、特に保健医療のサービス提供等による地域格差の是正を見据えた援助を実施しています。例えば、キルギスでは、国民の健康増進を目的とした国家保健プログラムを実施し、急激に低下していた保健指標の改善に一定の成果をあげていますが、乳幼児に関する指標は他の中央アジア諸国に比べて依然芳しくなく、小児病院の能力向上の必要性は高いという状況にあります。このため、日本は、小児医療の改善を目的とした医療機材を無償資金協力によって供与する「地方小児医療機材整備計画」を実施しています。また、グルジアでは、母子保健分野における良質な一次医療サービスへのアクセスが困難であるため、母子保健分野の一次医療改善を目的とした医療機材を無償資金協力によって供与する「母子保健一次医療施設機材整備計画」などを実施しています。日本は、国内の他地域に比べ貧困層が多く、基本的な医療サービスへのアクセスが悪い地域に対して、医療水準の向上を目的に医療器材を無償資金協力により供与しています。
また、中央アジア・コーカサス地域への支援の特徴として、草の根・人間の安全保障無償を積極的に活用していることが挙げられます。これらの大半が教育分野及び医療保健分野に向けられています。これらの支援はきめの細かい支援、足の速い支援、地域間格差の是正に直接資する支援として今後とも同地域において重要な役割を果たしていくものと考えています。
図表II-32 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績
