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5.中東
(注)
日本の中東に対する2003年の二国間ODAは、約4億1,648万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は6.9%です。
日本は、日本が輸入する原油のうちの約87%を中東に依存し(2003年)、また、域内の多くの国にとっても日本が最も重要な貿易相手国の1つであるなど、同地域とは極めて高い相互依存関係にあり、ODA大綱もエネルギー供給の観点や国際社会の平和と安定の観点から同地域を重要な地域であるとしています。他方で中東は、中東和平問題やイラク、アフガニスタン復興といった課題を抱えているほか、非産油国の中には国際収支赤字、累積債務問題などの経済的困難に直面している国もあります。また、2001年9月の米国における同時多発テロ以降、同地域の不安定化を避けることの重要性がより一層高まっています。こうした点を踏まえ、日本は、この地域の社会的安定と平和の実現に向け、ODAを通じた支援を重点的に行っています。
2003年度は、イラク問題により経済的に大きな影響を受けたヨルダンに対し60億円のノン・プロジェクト無償資金協力を行うなど地域の情勢に配慮した協力を実施しました。
地域内の比較的開発が遅れている諸国(イエメン、エジプト、モロッコ)に対しては、医療施設・器材の整備、教育施設の整備、農村開発及び水資源開発等の経済社会インフラ整備のため、例えばイエメンの「教科書印刷所機材整備計画」やエジプトの「ギザ市ピラミッド北部地区上水道整備計画」などの無償資金協力を中心とした支援を行っています。また、エジプトの「小学校理数科教育改善プロジェクト(2003~2006年、技術協力プロジェクト)」といった技術協力を中心とした支援を通じ、農林水産業、保健・医療、教育、水資源開発における人材育成を通じた貧困対策にも積極的に取り組んでいます。
比較的開発が進んでいる諸国(イラン、オマーン、チュニジア、トルコ)に対しては、貧困対策や格差是正のための経済社会インフラ整備に加え、ITや産業振興等による経済多角化への支援及び環境保全等の分野における人材育成に取り組んでいます。例えば環境保全の分野ではオマーンにおいて「マングローブ林再生・保全・管理計画調査」などにより、計画の策定や同国政府職員に技術移転を行うなど同国沿岸部の自然環境保全に対する協力を行っています。
2003年度の円借款は、エジプト、トルコ、モロッコ、及び、チュニジアに対して実施していますが、その事業内容は社会インフラ整備による直接的な貧困削減を考慮した支援を中心として行っています。エジプトに対しては、「カイロ-アレキサンドリア送電網計画」、「ザファラーナ風力発電計画」に資金供与を決定し、エジプトの電力需要の増加に対応するとともに、環境保全に配慮した風力発電所を建設することとしました。トルコに対しては、「アンカラ給水計画」に資金供与を決定し、水需要の増大が想定される首都アンカラ市に年間1億7,000万トンの水を供給する計画となっています。モロッコに対しては、「地方部中学校拡充計画」への資金供与を決定し、これにより地方部での中学校教育機会均等化、女子生徒の中学校教育の機会均等化促進が期待されます。チュニジアに対しては、「北部地域導水計画」への資金供与を決定しました。塩分濃度の低い水を導水することによる水質改善の結果、保健・衛生状態の改善及び農産物増産による所得向上等が期待されています。
なお、イラク、アフガニスタンへの支援については、「平和の構築」II部2章3節4-(1)以下を参照してください。
■中東和平への支援
2003年4月、川口外務大臣は、イスラエル・パレスチナ自治区を訪問した際に、緊急人道支援、改革支援、信頼醸成の3分野にわたる「支援パッケージ」を表明し、向こう1年間で総額約2,225万ドルの支援を約束しました。日本はこの「支援パッケージ」に基づき、和平に向けた取組を励ましつつ、パレスチナ独立国家に向けた「国づくり」と自治政府の改革に向けたガバナンス支援を行いました。
また、パレスチナ自治区の状況が著しく悪化したために発表された国連統一アピール(2003年11月)を受けて総額約1,500万ドルの緊急支援を追加的に実施しました。さらに、パレスチナ自治区の著しい経済状況の悪化に対応して5億円のノンプロジェクト無償資金協力を実施しました。
日本は1993年以降2004年3月までに6億8,000万ドル以上の支援をパレスチナに対して行ったことになります。さらに、中東の安定の観点から、日本は中東和平プロセスのアラブ側関係当事国であるエジプト、シリア、ヨルダン、レバノンについても、様々な分野で資金協力、技術協力を通じた支援を行いました。
図表II-34 中東における日本の援助実績
