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第4節 新たな時代への対応(新ODA大綱) 2003年~現在
■新しい時代の訪れ

 2003年8月29日、日本政府はODA政策の基本文書であるODA大綱を11年ぶりに改定しました。ODA大綱の改定は、ODAを取り巻く今日の国際的、国内的状況を的確に踏まえ、従来に比べ透明性の高いやり方で、議論を行い、新たな時代に即したODAのあり方、方向性を、包括的に示した画期的なものとなりました。
 新しいODA大綱では、ODAの目的を「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資すること」としました。また、ODAを通じての取組は、平和を希求する国家である日本にとって国際社会の共感を得られる最もふさわしい政策であると位置づけました。
 また、新ODA大綱においては、新たに日本のODAのあり方を示す「基本方針」という項目を設けました。その中で日本のODAは「良い統治」に基づく途上国の自助努力支援であるとの考え方を継承し、個々の人間に着目する「人間の安全保障」の視点を新たに記述しました。更に男女共同参画の視点を含む援助の公平性の確保、日本の経験と知見の活用、国際社会における協調と連携などを基本方針として明示しました。
 ODAが取り組むべき課題については、貧富の格差、民族的宗教対立、紛争、テロ、人権及び民主主義の抑圧、環境問題、感染症など数々の問題が絡み合う現在の国際的開発課題を考慮しつつ、「貧困削減」、「持続的成長」、「地球的規模の問題への取組」、「平和の構築」を重点としました。特に「平和の構築」については、日本が近年力を入れている分野として新たに掲げたものです。
 重点地域は、引き続きアジア地域としました。これはアジアが日本と密接な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼし得る地域であるからです。ただし、アジア諸国の経済社会状況の多様性、援助需要の変化に十分留意しつつ、戦略的に分野や対象などの重点化を図ることとしました。「援助政策の立案及び実施」においては、これまでのODA改革の議論や諸提言を踏まえ、政府等がどのように政策を立案し、実施するかを明確にしました。その中では、政府全体として一体性と一貫性のある援助政策の立案、被援助国との政策協議の強化、現地機能の強化、NGO等幅広い援助関係者との連携や国民参加の拡大等が挙げられています。
 日本は、ODA大綱に示された理念、重点、援助政策の立案及び実施に従って、援助の質の一層の向上に向けて、日本のODAの特徴を生かしつつ、より効率的・効果的なODAの実施を図るべく努力を継続しています。そして、これまでの日本の経験を踏まえ、世界に対して日本の考え方を発信することにより、国際的な援助潮流の形成に対しても大きな貢献をしています。
 今後日本は、新ODA大綱および時代の変化に即した形で、戦略性、機動性、効率性、透明性の高い、有効な援助のあり方について模索し具体化するとともに、リーディング・ドナーとして国際社会におけるリーダーシップをより一層発揮していくことが必要です。

ODA大綱の見直しに関する公聴会
ODA大綱の見直しに関する公聴会

columnI-16 対中国ODA


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