前頁前頁  次頁次頁


columnI-16 対中国ODA

 1979年12月、大平総理(当時)は中国を訪問した際に、「世界の国々が貴国(中国)の近代化政策を祝福すべきものとして受け止めているのは、この政策に国際協調の心棒が通っており、より豊かな中国の出現が、よりよき世界につながるとの期待がもてるからに外なりません。我が国が中国の近代化に協力するとの方針を強く打ち出した所以も、我が国独自の考え方に加えて、このような世界の期待に裏打ちされているからです。」と述べて対中国ODAを開始するとの日本の考え方を明らかにしました。1970年代末から1980年代にかけての中国は、改革・開放政策を始めたばかりで、国際社会は中国が対外的に開かれて、安定的で、周辺に脅威を与えない国になれるかどうかかたずをのんで見守っていました。中国の隣国である日本としては、中国がより開かれ、安定した社会となり、国際社会の一員としての責任を一層果たしていくこと、また、日中両国の友好関係の構築が、アジア・太平洋地域の平和と繁栄にとって極めて重要であるとの一貫した観点に基づき、対中国ODAを実施してきたのです。
 対中国ODAが開始されて以来20年以上にわたり、日本のODAは、中国沿海部のインフラのボトルネック解消、環境対策、マクロ経済の安定、保健・医療等の基礎生活分野の改善、人材育成等に貢献してきました。例えば、2002年時点での中国の鉄道電化総延長の約26%、1万トン級(船長約140m)以上の船が接岸できる岸壁(大型バース)の約11%は、対中国円借款によるものとされています。このような日本の対中国ODAはこの間の中国経済の安定的発展に貢献し、中国の改革・開放政策を維持・促進させる上で大きな役割を果たしました。中国が国際社会との相互依存関係を深めるとともに、その経済力を着実に発展させてきたことは、日本を含むアジア太平洋地域の安定と繁栄にも大きく寄与するものであり、日本にとっても利益となるものです。また、この間、日中両国の相互依存関係も深まり、貿易総額は国交正常化以降現在まで約120倍に増加しました。対中国ODAは沿海部のインフラ整備等による投資環境整備等、日中経済関係の発展を支えるとともに、日中関係の主要な柱の一つとして安定的な日中関係を下支えしてきたと評価しうるものです。中国側も日本のODAに対して高く評価し、様々な場面で謝意を表明しています。
 以上のように、対中国ODAは当初想定していた成果を順調に上げてきましたが、これからの対中国ODAを考えるためには、この20年の日中両国の変化を十分踏まえる必要があります。近年の経済成長に伴う中国の援助需要の変化、及び中国の軍事支出の動向や日本国内の厳しい経済財政事情などを背景にした国内の厳しい意見等を踏まえ、日本政府は対中国ODA政策を時代に即して大幅に見直しつつあります。2001年10月に対中国経済協力計画を策定し、重点分野を環境保全、人材育成等に絞り込むとともに、金額的にもこの3年間連続して削減させています。
 中国の将来は、隣国日本にとって引き続き重大関心事であり、日中関係の長期的な安定及び発展は日本の安全と繁栄のためにも重要な要素です。日本は対中国ODAがこれまで上げてきた成果を活かしつつ、今後も国民の理解と支持を得るよう時代の変化に即応した形でのODAを実現すべく透明性を確保し、効率的、効果的、戦略的な対中ODAを進めていく考えです。


前頁前頁  次頁次頁