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7.事前調査、実施段階でのモニタリング及び事後評価

 ODAをより効果的・効率的に実施するためには、その実施状況や効果を適格に把握し、必要に応じて改善することが重要です。このような観点から、外務省を含むODA関係各府省、JICAJBIC等の実施機関では、事前から事後に至るまで一貫して検証を行うため、モニタリングや評価を実施しています。また、個別プロジェクトに加え、セクターや国全体を対象とした戦略的なODAが重視されてきたことを踏まえ、従来行われてきた個別プロジェクトの評価に加え、セクター全体を対象としたプログラムレベル評価や国毎の援助政策等を対象とした政策レベルの評価も実施しています。2002年度に行われた主な評価は以下のとおりです。
 政策レベルでは、スリランカ及びタイにおける日本の援助政策を対象として国別評価が行われ、相手国のニーズとの整合性、援助政策の効果、実施プロセスの適切性などについて検証を行いました。スリランカ、タイとともに、相手国のニーズの反映度や政策の効果については概ね良好であるとの評価結果を得ましたが、日本の援助政策には援助の目標やその達成度を測るための指標が明確に示されていないとの指摘がありました。政府としては、このような評価結果を受けて今後の国別援助計画の策定に際し、目標体系図の作成や指標の採用を検討するなど、更なる改善に努めていきます。また、援助政策の適切な実施を確保するという観点から、評価を制度化する必要性が指摘されましたが、政府としては、国別評価の結果を国別援助計画の策定・見直しに役立てていきます。
 また、政策レベル評価の一環として、途上国の女性支援(WID)イニシアティブを対象とした重点課題別評価を実施しました。この評価調査では、イニシアティブと国際的援助潮流との整合性、援助の効果、実施手続きの適切性などが検証され、その結果、教育分野、保健分野などで成果が出ているとの評価を得ました。一方、実施のプロセスに関しては、有識者や実施機関の知見をさらに活用すべきであるとの提言を受けたことから、政府としては、援助政策の立案・実施課程に有識者、NGO、実施機関の関係者の参加を得て、連携の強化に努めていくこととしています。また、WIDアプローチからジェンダー主流化に発展している国際的潮流を反映し、ジェンダー主流化の視点を強化したWIDイニシアティブに改定するべきであるとの提案を受けました。政府としても、WIDのみならず開発のあらゆる段階及び分野で男女共同参画の視点が求められているとの認識を持って取り組んでおり、今後イニシアティブを改定する場合にはそのような認識の下で見直すことにしています。
 プログラムレベルでは、セクター別やスキーム別に評価を行っていますが、その1つとしてNGO事業補助金制度を対象とした評価を行いました。この評価調査では、主に当該スキームが日本のODA政策の中で果たしている役割、スキームの効果、実施プロセスについて検証を行いました。その結果、当該スキームはNGOに対する幅広い支援を行うためのものとしてODA政策の中で有効な役割を果たしているとの評価がなされました。一方、事業の効果を確実なものにするためには、検証体制を強化する必要があり、この観点からはNGOの自己評価を導入すべきである、との指摘がありました。これを受けて、政府では、事業報告書の中にできる限りNGOの評価を含めるよう指導することにしています。
 プロジェクトレベルでは、個々のプロジェクトを対象に評価を行っていますが、円借款ではすべての完成案件について計画の妥当性、実施の効率性、効果、インパクトなどの観点から事後評価を実施しています。例えば、パキスタンの首都圏給水事業(カンプール第1期給水事業)では、都市開発の進展により増大する水需要に対応するため、カンプールダムを水源とした水道施設の整備を行うプロジェクトですが、第三者による事後評価の結果、1日当たり給水量は2000年の完工以降、計画値を下回っていることが明らかになりました。これは、旱魃によって水源の貯水量が減少し計画どおりの浄水生産ができないことが主な原因であり、加えて円借款対象外のプロジェクトである末端配水管整備が遅れたことも一因であると指摘されています。また、今後も首都圏における人口増加傾向を背景にした水需要の増加が見込まれているため、水資源確保や配水網のリハビリなどが課題であると報告されています。このような課題への対応については、短期・中期・長期からなるアクションプランをパキスタン政府に提示しており、パキスタン側で実現に向けた取組が既に開始されています。
 また、無償資金協力や技術協力についても様々な形で評価が行われていますが、その1つとして実施されたエルサルバドルの「看護教育強化プロジェクト(プロジェクト方式技術協力)」の評価では、当該プロジェクトと現地のニーズとの整合性、プロジェクト目標の達成度、インパクトなどが検証されました。このプロジェクトは質の高い看護人材の育成を目標とするもので、教材開発や講義・実習指導要領の検討などを主な活動内容としていますが、評価の結果、教育技法の向上や看護人材の育成に貢献していることが確認されました。一方、プロジェクトの自立発展性を確実なものにすることが課題として取り上げられ、活動の実施体制の引き継ぎや関係機関の協力の強化などが提案されました。このような評価結果を受け、当該プロジェクトでは追加的に各種のガイド・マニュアルの作成や教材の利用方法などについての研修会を行い、自立発展性の確保に取り組みました。

コラムIII-10 バヌアツ地方電化プロジェクト-プロジェクトの再検討-

 このように、政府では政策から個々のプロジェクトに至るまで幅広く評価を実施し、これらの結果をODAの実施者にフィードバックすることによってODAの改善に努めています。また、政府としては、ODAの取組状況について国民に対して説明する責任を果たすため、これらの評価結果を政府や実施機関のホームページ等で公表しています。


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