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ColumnIII-10 バヌアツ地方電化プロジェクト-プロジェクトの再検討-

 島嶼国であるバヌアツでは、電力供給が慢性的に不足し、家屋電化率が10%に届かない状況にありました。そもそも電力需要が小規模で広範囲に分散している地理的事情から、十分な電力供給を実現することは困難であったことに加え、バヌアツ政府は慢性的な財政赤字に苦しんでいる状況だったことから、日本政府に対して再生可能エネルギーを使った村落電化のための地方電化に関する協力を要請しました。
 日本政府はこの要請を受け、6人の専門家及び3名の研修員受入、機材供与、現地コストの負担などの支援(約5,000万円)を決定しました(1999年6月から2002年5月にかけ実施)。バヌアツにおける継続的な地方電化を目的として、計7村においてSHS(ソーラー・ホーム・システム)を導入し、エネルギー局と対象村の双方に対するSHSの維持管理体制の確立も行いました。しかしながら、本プロジェクトの中間段階で調査を実施したところ、料金未払いの住民が増え、適切なプロジェクトの運営に支障を来すような事態が発生していることが判明しました。これは、初期投資に基づいて算出した固定料金の額が、想定以上に地域住民の生活に負担となっていること、また月極の支払い方法が、月払いよりもまとめて支払う方を好むという現地の慣習と合致していないことを原因とするもので、このままでは料金未払いによって、再生可能エネルギーを使った村落電化の実現が窮地に陥る可能性もありました。
 このような状況を受けて、プロジェクト内で再度協議の場が設けられました。その結果、バヌアツ政府は固定料金制をやめ、各村の電力委員会とも協議し、住民がそれぞれの生活レベルに合った電気料金を選択できる5段階別料金制を採用しました。料金回収率が特に低い村については、料金負担の説明を新たに実施するなど、プロジェクトの状況に応じて、計画の見直しも行いました。その結果、回収率は大幅に上昇し、例えばエムア村における回収率は、49.1%(1999年11月から2000年4月までの平均回収率)から、92.2%(2001年7月から12月までの平均回収率)にまで上昇しました。
 このように、ODAの実施に際しては、当初の計画策定において予想し得なかったことが起因して、結果として事業の振興に困難が生じる例が少なくありません。しかし、それゆえに、本プロジェクトのように検証と問題分析、その結果を適切にフィードバックすることにより、実施状況を改善することが、ますます重要となっているのです。

バヌアツのソーラー・ホーム・システム
バヌアツのソーラー・ホーム・システム


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