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ColumnIII-11 ブータンにおける中古ゴミ収集車供与計画

 ブータンの首都ティンプー市は、近代化の流れの中で農村部からの人口の流入が著しく、それに伴いティンプー市のゴミ量は、最近4年間で1日当たり8トンから20トンと2.5倍になりました。しかしながら、ティンプー市のゴミ収集は、市の至る所に設置されている仮設のゴミ容器から市役所の作業員らが手作業でトラックにゴミを運ぶ方式が主流であり、そのゴミ収集能力の不足から、ゴミ容器がハエや蚊の発生源や野犬の餌漁り場となるなど衛生上の問題とともに、河川へのゴミ投棄による環境汚染が懸念される状況にありました。
 このような状況を敏感に察知したのが、当時シニア海外ボランティア(SV)としてブータンに派遣されていた佐々木義修さんです。環境教育を指導科目としていた彼は、ティンプー市長との懇談を通じて、ゴミ問題の実情と日本に対する要請に耳を傾けました。ティンプー市のゴミ問題はゴミ収集車の不足にあると考え、日本の草の根無償資金協力を利用した中古ゴミ収集車の供与を思い立ちました。そのため彼は、出身地である北海道内の市を対象に、電子メールや、帰国の機会を生かして関係者に働きかけるなど、積極的に活動しました。その甲斐あって、札幌市が5台のゴミ収集車の供与に応じてくれることになりました。同市には、ブータンとの友好促進を目的とするNGOがあり、青年海外協力隊のOBがそこで働いていたことも大きな助けとなりました。
 供与車両の修理点検や、細心の注意を要する陸路などの輸送では、海外活動経験の豊富な(社)日本外交協会が担当しました。
 このプロジェクトは、シニア海外ボランティア、地方公共団体、NGO等の活動が日本の草の根無償資金協力(修理点検輸送費、75,385米ドル:邦貨額 8,066,195円を供与)を通じて実を結んだものとなりました。まさにオールジャパンの取組を見せた案件と言えます。
 ゴミ収集車の導入により、ティンプー市では市役所によるサービスの効率化が図られ、市役所による都市部のdoor-to-doorのゴミ収集は、以前の約10~15%から約80%をカバーするまでになっています。
 ティンプー市長プンツォ・ウォンディは、次のような言葉と共に、日本に対する感謝の意を繰り返し表明しています。「市の急速な拡大とそれに対応したゴミの増加を考えると、この考え抜かれた支援以上に適切で、時宜を得たものはなかったであろう。」

札幌市より供与された5台のゴミ収集車
札幌市より供与された5台のゴミ収集車

SVの佐々木氏と、実情を訴えたティンプー市長ら
SVの佐々木氏と、実情を訴えたティンプー市長ら


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