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8.欧州地域

 日本の欧州地域に対する2002年の二国間援助は、約1億2,000万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は1.8%です。
 日本は、欧州地域に対して、中期政策にもあるとおり、以下の点を重視して支援を行っています。
[1]市場経済移行、環境保全対策及びインフラ復旧・開発への支援
[2]旧ユーゴスラビア地域及び周辺国における難民支援等の人道支援、復旧・復興のための経済・社会インフラ整備、基礎生活分野支援及び選挙実施に関する協力

コラムIII-9 日本のセルビア・モンテネグロ(ユーゴ)復興支援

 日本の欧州地域への援助は1989年の共産主義体制崩壊以降本格的に開始し、現在では18か国を対象に行っています。長期にわたる中央計画経済体制の下にあった同地域では、ボスニア・ヘルツェゴビナやセルビア・モンテネグロなど紛争によって大きな被害を受け、その復旧・復興が必要とされている国や市場経済化が遅れているブルガリアやルーマニアなど援助を必要とする国が存在する一方で、ポーランドやハンガリーのように民主化・市場経済化が進み、2004年のEU加盟が決定されている国もあります。また、多くの国では、経済成長の中で環境対策が取り残されており、公害問題が周辺諸国にも大きな影響を及ぼしていることから、日本としても持続可能な開発を目指して、環境保全対策支援に力を注いでいます。
 市場経済化を促進するための支援では、クロアチアやセルビア・モンテネグロ、ブルガリア、ルーマニア等多数の国に対し、中小企業振興、貿易促進や投資環境整備のための専門家派遣や研修生受入による人材育成を行っています。
 環境保全分野では、大気汚染及び水質汚濁防止、省エネルギー対策等のための専門家派遣のほか、ボスニア・ヘルツェゴビナでは「エコツーリズムと持続可能な開発のための地域づくり」に関する開発調査などを行っています。また、地域協力の観点から、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びセルビア・モンテネグロを対象とした「サバ川水質管理」事業として、広域専門家を派遣しています。
 日本は、旧ユーゴスラビアなど紛争地域であった南東欧地域には、UNHCR等を中心とした国際機関を通じた人道支援のほか、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア・モンテネグロなどにおけるインフラや基礎生活分野に対する復旧・復興を目的とした無償資金協力を実施しています。この他、貧困削減支援の一環として、基礎インフラの整備や未だ不十分な保健・医療体制の確立を目的としたマケドニア、アルバニアなどへの無償資金協力や病院経営に関する研修員受入等を実施しています。
 また、2004年のEU加盟を機に、中・東欧及びバルト3国他10か国が今後援助国となっていきますが、日本としてもこれを支援していくために、これまで行われてきた技術協力により蓄積されたノウハウを第三国へと移転する「三角協力」をポーランドとハンガリーで実施しています。具体的には、これまで技術協力プロジェクトにより専門家派遣や研修員受入、機材供与等を行ってきたポーランド日本情報工科大学、ハンガリー生産性センターを拠点として、ブルガリア、ルーマニア等の周辺国からの研修員を集め技術移転をしていくという第三国研修を行っています。この協力は、援助国としての過程を支援するのみならず、欧州地域全体の発展に貢献するものです。

図表III-24 欧州地域における援助実績

欧州地域における援助実績



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