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7.大洋州地域

 日本の大洋州地域に対する2002年の二国間ODAは、約9,000万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は1.4%です。
 日本は、大洋州地域に対し、中期政策にもあるとおり、以下の点を重視して支援を行っています。
[1]経済・社会活動の基盤となり、島嶼国の抱える拡散性・地理的隔絶性を克服するための経済・社会インフラの整備(保健医療を含む)
[2]経済構造改革への支援
[3]民間部門の振興に資する人材育成
[4]環境保全対策への支援
[5]遠隔教育を通ずる人材育成・技術移転等複数の域内国を対象とする広域的な協力の推進

 日本は大洋州地域と伝統的な友好関係にあり、国連など国際的な場においても日本の立場に対する支持を得ています。さらに、この地域は日本の遠洋漁業の重要な漁場とともに海上輸送の要衝でもあり、さらに近年は豊富な海底資源に対する期待が高まっています。このような事情を踏まえ、日本は大洋州諸国を良きパートナーとして支援してきています。
 大洋州地域は、比較的新しい独立国が多く、社会経済的に自立した国家の構築が急務となっています。加えて小規模経済、一次産業依存型経済、国家の地理的拡散性、国際市場へのアクセス困難、自然災害への脆弱性、国土喪失の危機に直面しているなど島嶼国特有の共通問題を有しています。日本は、これらの事情とともに各国の個々の事情を考慮した援助を実施しています。
 大洋州諸国はいずれも若い独立国として国家を担う人材の育成が急務です。日本は、行政分野や公共事業分野における研修員受入や専門家派遣などの技術協力を通じて、こうした国々の人材育成に貢献しています。また人づくりの基礎ともいえる教育分野については、分散した国土全体への教育サービスの提供に困難を抱えています。日本は地域に密着した援助が可能な草の根・人間の安全保障無償や技術協力を通じ、地方における小学校などの施設改修・機材供与及び青年海外協力隊派遣を通じた教育サービスの提供などを行っています。

コラムIII-8 日本・パラオ友好の橋(KB橋)

 第一次産業に依存した大洋州諸国の経済的自立及び持続可能な開発のためには、民間産業の振興が不可欠です。日本は、健全な経済運営に貢献する国際税務行政や金融情報システムなどについての研修の実施や観光分野や輸出振興分野への専門家派遣といった技術協力、また経済・社会活動の基盤となるインフラ整備等を通じて民間部門の育成に貢献し、同時に日本の経済と大洋州諸国経済の結びつきの強化に寄与しています。
 日本は、大洋州地域の地理的拡散性を考慮した効率的・効果的な支援として、国家の枠を超えた広域的協力による、環境保全や教育サービス提供のための支援を行っています。環境保全の支援では、日本が建設した「南太平洋地域環境計画教育センター」への専門家派遣や廃棄物対策研修を行い、島嶼国を対象とした廃棄物対策ガイドラインの作成を実施することによって地域の環境問題解決に貢献しています。教育サービスの提供では、「南太平洋大学」への遠隔教育ネットワーク施設支援を通じて、島嶼国の人々へ広く高等教育を受ける機会を提供しています。
 こうした個別の取組とともに、日本は、大洋州諸国の首脳で構成される地域協力の枠組みである「太平洋諸島フォーラム(PIF)」との協力を進めてきました。1997年及び2000年の2回にわたり、日本とPIF諸国との首脳会議である太平洋島サミットを開催し、2003年5月には、気候や海洋性などの点で大洋州諸国と共通の資質をもつ沖縄において、第3回太平洋・島サミットを開催しました。この首脳会議では、これまでの大洋州諸国との協力に加え、2002年9月の「持続可能な開発のための世界首脳会議(WSSD)」における議論やその具体的取組に関する小泉構想を踏まえた「沖縄イニシアティブ」を採択しました。これは、日本と大洋州諸国が地域の開発について共に考え、共に取り組んでいくための指針と行動計画です。安全保障、貿易、保健、教育、環境という5つの重点分野について、それぞれが責任をもって取り組んでいくことになります。

図表III-23 大洋州地域における援助実績

大洋州地域における援助実績



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