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4.中東地域
日本の中東地域に対する2002年の二国間ODAは、約2億1,000万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は3.1%です。
日本は、中東地域に対して、中期政策にもあるとおり、以下の点を重視して支援を行っています。
[1]中東和平プロセス支援のための協力(対パレスチナ支援、周辺アラブ諸国支援、多国間協議関連案件の支援等)
[2]比較的低所得の国における農業、水資源開発等の経済・社会インフラ整備支援
[3]比較的高所得の湾岸諸国における脱石油のための経済多角化に向けた国内技術者層の育成、教育等に資する技術協力による支援及び海外からの投資促進のための環境整備への適切な支援
[4]比較的高所得の国等における環境保全対策への支援
日本は、原油の約86%を中東地域から輸入し、域内の多くの国にとっても日本が最も重要な貿易相手国の1つであるなど、同地域とは極めて高い相互依存関係にあります。しかしながら、中東地域は、中東和平やアフガニスタン、イラク等をめぐり不安定要因を抱えているほか、非産油国の中には国際収支赤字、累積債務問題などの経済的困難に直面している国もあります。また、2001年9月の同時多発テロ以降、同地域の不安定化を避けることの重要性がより一層高まっています。こうした点を踏まえ、日本は、ODAを通じ、この地域との円滑な通商関係の維持、社会的安定と平和の実現に向けた支援を重点的に行っていきます。
比較的開発が遅れている国に対しては、医療施設・器材の整備、教育施設の整備、農村開発及び水資源開発等の経済社会インフラ整備のため、例えばイエメンの「南部イエメン結核対策拡充計画」やヨルダンの「ザルカ地区上水道施設改善計画」などの無償資金協力を中心とした支援を行っています。また、ヨルダンの「家族計画・WIDプロジェクトフェーズ2(2001~2003年、技術協力プロジェクト)」といった技術協力を中心とした支援を通じ、農林水産業、保健・医療、水資源開発における人材育成を通じた貧困対策にも積極的に取り組んでいます。
比較的開発が進んでいる国に対しては、貧困対策や格差是正のための経済社会インフラ整備に加え、ITや産業振興等による経済多角化への支援及び環境保全等の分野における人材育成に取り組んでいます。
2002年度の円借款では、モロッコ及びチュニジアに対して実施していますが、その事業内容は社会インフラ整備による直接的な貧困削減を考慮した支援となっています。モロッコに対しては、「地方電化計画(II)」への資金供与を決定し、これにより特に貧困層の多い7県における約8万8,000世帯を対象に配電網整備を行い、生活環境の改善、村落部経済の活性化等とともに地域格差の是正が期待されます。チュニジアに対しては、「地方給水計画(II)」への資金供与を決定し、約100の貧困郡を対象とした地方給水施設建設及びポンプ・配水管等の調達を支援しています。
なお、アフガニスタンへの支援については、第I部2章1節3-(4)-(ロ)を参照してください。
■中東和平への支援
2002年6月、川口外務大臣がイスラエル・パレスチナ自治区を訪問した際、パレスチナ自治政府に対し、和平の進展に応じて支援を進めていくとの考えに基づき、「パレスチナ支援のロードマップ」を提示しました。日本は、この「ロードマップ」に基づき、和平に向けた取組を励ましつつ、パレスチナ独立国家に向けた「国づくり」と自治政府の改革に向けたガバナンス分野での支援を行いました。この結果、日本のパレスチナに対する2002年の二国間ODA及び国際機関を通じた支援総額は、約1,853万ドルになりました。また、日本は、パレスチナに対して1993年以降2002年12月までに6億3,000万ドル以上の支援を行いました。さらに、中東地域の安定の観点からも、日本は中東和平プロセスのアラブ側関係当事国であるエジプト、シリア、ヨルダン、レバノンについても、様々な分野で資金協力、技術協力を通じた支援を行いました。
図表III-20 中東地域における援助実績
