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3.中央アジア・コーカサス地域
日本の中央アジア・コーカサス地域に対する2002年の二国間ODAは、約2億9,000万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は4.3%です。
日本は、中央アジア・コーカサス地域に対して、中期政策にもあるとおり、以下の点を重視して支援を行っています。
[1]自立的な経済開発の基礎となる経済・社会インフラ整備への支援
[2]民主化・市場経済化のための人材育成と制度づくりへの支援
[3]旧ソ連時代の負の遺産(環境保全対策、セミパラチンスクの被爆者支援等)の克服や体制移行・改革に伴う社会的困難の緩和
日本は、旧ソ連崩壊後の新たな国際情勢下における中央アジア・コーカサス地域各国の市場経済導入の努力を支援するとともに、2001年9月の米国同時多発テロ事件以降の国際環境の変化に伴い、同地域の果たしうる役割等を考慮し、これらの国の経済社会開発を積極的に支援しています。具体的には、人材育成のための技術協力や経済改革に伴う困難を緩和するための資金協力を中心とした援助を行っています。
中央アジア・コーカサス地域の諸国は、国家計画経済体制から市場経済体制への移行期にある国であり、ソフト面での協力が重要であることから、人材育成と制度づくりへの支援を行っています。2002年度末までにこれら8か国から2,625名の研修員を受け入れています。また、経済運営、法制度整備支援、通信、金融、環境、運輸インフラ、保健医療分野等の専門家派遣、社会セクター、エネルギー、資源開発分野での開発調査等を通じ、同地域の人材育成と制度づくりを支援しています。
例えば、ウズベキスタンでは、保健医療分野における制度の見直し及び人材の育成が急務の課題となっていることから、2002年度には開発調査「保健医療システム改善計画調査」を開始したほか、看護教育に必要な基礎的な機材を無償資金協力によって供与する「看護教育改善計画」の実施を決定しました。また、同国には継続的に保健医療分野の専門家を派遣しており、技術協力と無償資金協力との有機的な連携を通じ効果的な支援を実施していきます。
このほか、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスには人づくり支援の拠点として「人材協力センター(日本センター)」を開設しており、これらセンターには日本から専門家を派遣し、経済・経営等ビジネス講座や日本語講座を実施する等、同地域の人材育成に貢献しています。
また、同地域では、国内における地域格差が顕著な国もあることから、特に保健医療のサービス提供等による地域格差の是正を見据えた援助を実施しています。例えば、カザフスタンでは、基本的な診断活動に用いる医療機材を無償資金協力によって供与する「クジルオルダ市地域病院医療機材整備計画」を実施しています。またキルギスでは、新しい医療サービス体制の構築による母子保健に関連する保健指標の改善及び地域間格差の是正を図っており、このようなキルギスの努力を支援するため、地方3州及び首都ビシュケク市の母子保健医療水準の向上に必要な医療機材等を無償資金協力によって供与する「産科婦人科病院医療機材整備計画」を実施しています。このように、日本は、国内の他地域に比べ貧困層が多く、基本的な医療サービスへのアクセスが悪い地域に対して、医療水準の向上を目的に医療器材を無償資金協力により供与しています。
中央アジア・コーカサス地域への支援の特徴として、草の根・人間の安全保障無償を積極的に活用していることが挙げられ、これらの大半が教育分野及び医療保健分野に向けられています。これらの支援はきめの細かい支援、足の速い支援、地域間格差の是正に直接資する支援として今後とも同地域において重要な役割を果たしていくものと考えています。
図表III-19 中央アジア・コーカサス地域における援助実績
