本編 > 第III部 > 第2章 > 第2節 > 2.南西アジア地域
2.南西アジア地域
日本の南西アジア地域に対する2002年の二国間ODAは、約11億6,000万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は17.2%です。
日本は、南西アジア地域に対して、中期政策にもあるとおり、以下の点を重視して支援を行っています。
[1]貧困削減と貧困層の生存の確保のための支援(保健医療、初等教育、農業・農村開発等の基礎生活分野)
[2]民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための人材育成、経済・社会インフラ整備等への支援
[3]人口増加や経済成長と関連した環境負荷増大に対応した、環境保全対策のための支援
南西アジア地域は、世界人口の5分の1を占め、4か国が後発開発途上国(LDC)であり、多くの貧困人口を抱えています。こうした貧困、人口問題に加え、初等教育普及率の低さや保健医療の未整備、また、感染症問題なども深刻であり、国際社会がミレニアム開発目標(MDGs)達成を目指す上でもアフリカと並び最大の課題を抱える地域です。また、核不拡散問題及び2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降の「テロとの闘い」という側面からも、同地域は日本を含む国際社会の重要な関心地域です。
日本は、今後もこの地域の抱える貧困問題への対応を重視していくとともに、域内各国の経済自由化や経済面を中心とした地域協力等の地域の安定と発展に向けた望ましい動きを支援していく必要があります。
貧困削減と貧困層の生存確保のための支援としては、特に、後発開発途上国(LDC)であるバングラデシュ、ブータン、ネパール、モルディブに対して、無償資金協力と技術協力の連携をはかりつつ、農業、居住環境、保健・医療等の基礎生活分野に重点を置いた協力を行っています。特に、WHOが定める「2005年までにポリオを世界から根絶する」との目標を支持し、その目標達成のため、西太平洋地域からのポリオ根絶に続く、南西アジア地域のポリオ根絶のため積極的に支援しています。2002年度はインド、パキスタン、バングラデシュに対してそれぞれ「ポリオ撲滅計画」としてUNICEFを通じた無償資金協力を実施しています。また、パキスタンに対しては、2001年11月に教育や保健分野を含む貧困削減支援のために約2年間で3億ドルの無償資金協力の供与を表明し、現在実施中です。
民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための人材育成、経済・社会インフラ整備等への支援では、人材育成については、インド、パキスタン両国が比較的高い技術水準を有していることから、ネパール、バングラデシュ、スリランカを中心に支援を行っています。また、社会・経済インフラ整備に関しては、主に域内のLDC諸国を対象に無償資金協力による基礎インフラ関連案件を行っています。また、円借款により、インドに対してエネルギー分野及び運輸インフラ分野を、スリランカに対して電力分野の改革や貧困削減に貢献する支援として「電力セクター改革支援」、「農村経済開発復興計画」及び「小規模インフラ整備計画」等を供与しています。
人口増加や経済成長と関連した環境負荷増大に対応した環境保全対策のための支援については、2002年度には環境悪化が顕著なインドにおいて森林保全のための協力として「パンジャブ州植林開発計画(II)」及び「ラジャスタン州植林・生物多様性保全計画」を円借款により実施しました。
なお、スリランカの和平プロセスの支援については、第I部2章1節3-(4)-(ハ)を参照してください。
図表III-18 南西アジア地域における援助実績
