前頁  次頁


本編 > 第III部 > 第2章 > 第1節 > 4.地球規模問題への取組 > (3)食 料


(3)食 料

 1996年の世界食料サミットでは、世界の食料安全保障の達成を目的として2015年までに栄養不足人口を半減させることなどを目指して各国が協調行動をとることが宣言されました(ローマ宣言)。同じ目標は、2000年に取りまとめられたミレニアム開発目標にも盛り込まれています。2002年6月に開催された世界食料サミット5年後会合では、ローマ宣言の具体的目標を更新し、その行動計画の実行を強化するとともに、政府、国際機関、市民社会、民間セクターなどすべての関係者がそれぞれ努力することを求めること等を宣言した「飢餓撲滅のための世界的連携」という政治文書が採択されました。
 日本は、このような国際社会による取組を踏まえ、持続可能な食料生産を目指して、農林水産業に対する食料生産性向上に資する支援を中心に実施しています。また、開発途上国における貧困層の大半は、農村地域に居住し、農業を営んでいることから、農業分野への支援は、食料問題だけでなく貧困削減のためにも重要であり、協力の方法としては、緊急的な取組と中長期的な取組の2つの視点が必要であると考えています。

コラムIII-4 マリトボグ・マリダガオ灌漑事業

 緊急的な取組は、依然として深刻な問題である飢餓への対応があげられますが、人道的見地からも必要不可欠な取組です。日本は、2002年8月の持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)において、「持続可能な開発」のための日本政府の具体的行動の1つとして、南部アフリカの食糧危機に対する食糧支援を発表し適切なニーズへの対応を図りました。結果として2002年度においては、サブ・サハラ・アフリカに対し101億3,000万円の食糧援助を実施しています。
 中長期的な取組は、飢餓を含む食料問題を生み出している原因の除去及び予防の観点から重要であり、日本は、以下のような様々な取組を行っています。
 農業分野では、作物の耕作に欠かせない肥料や農業機械、農作物種子等の購入資金の供与、灌漑施設の維持管理や農業普及など農業技術向上のための研修員受入・専門家派遣・青年海外協力隊派遣等の技術協力、さらに灌漑施設整備及び市場へのアクセスを改善するための道路や集荷場等の整備や流通システム強化への協力等を実施しています。特徴的な取組を紹介すれば、日本は農業分野におけるアジアの経験をアフリカに生かす観点から、西アフリカ稲開発協会(WARDA)に対し、アジア稲とアフリカ稲を交配したネリカ米の開発のため専門家の派遣を行うとともに、UNDPや国連食糧農業機関(FAO)等国際機関を通じた支援を行っています。ネリカ米については、西アフリカの稲作に適した地域を中心として、農民自身にネリカ米を含めた各品種から選択させることにより、オーナーシップをもって栽培させる方式を用いて実施しており、国ごとに差はあるものの、今後ネリカ米の普及に期待が持てる報告が届いています。一方で、種子量の不足、土壌の劣化への対応、品質の確保及び適切な栽培基準の必要性・産地適合性など、改善すべき事項も現地より報告されています。日本は、引き続き、ネリカ米の研究開発・普及を推進することにより、アフリカ地域の食料安全保障に貢献するために取り組んでいきます。また、日本は世界食糧計画(WFP)の実施する「Food for Work 」(労働の対価としての食糧)及び学校給食にも積極的な支援を行っています。「Food for Work」は、地元農民の参加により農村インフラ等の整備を実施し、その労働の対価として食糧配布を行う事業であり、地元住民のオーナーシップの促進を目的としています。また学校給食の実施により、児童の出席率及び授業への理解度が向上し、さらに出席した児童、特に女児に対して家に持ち帰るための食糧も併せて配給することで、家族の生活補助を行うとともに、家族の教育に対する理解促進にも役立っています。
 また、従来実施してきた食糧増産援助による農薬の供与については、適切に保管されなければ環境や人体に悪影響を及ぼす危険が大きいことから、2002年12月よりは、しっかりとした保管体制が整わない限り原則として農薬の供与は行わないこととし、途上国の理解及び改善の努力を求めるなど、援助の適切な実施に取り組んでいます。

WFPによるプロジェクト、Food for Workの一環として、農業潅漑整備をしている様子(コートジボワール)
WFPによるプロジェクト、Food for Workの一環として、農業潅漑整備をしている様子(コートジボワール)

 水産分野においては、漁港や水産施設整備・供与等のインフラ整備、漁業職業訓練センターや水産学校への機材供与、漁業技術指導等の技術協力のほか、草の根無償資金協力により地域漁業団体を通じた零細漁民の生活向上のための支援などを実施しています。


前頁  次頁