ColumnIII-4 マリトボグ・マリダガオ灌漑事業
このプロジェクトは、フィリピンで最も貧しい地域の1つであるフィリピン南部のミンダナオ島で実施されました。プロジェクトの目的は、ミンダナオ島中部地域に灌漑施設を建設し、地域の農業生産性を向上させ、地域農民の生活向上を目指すというものです。日本は円借款として1989年に48.6億円をフィリピン政府に対して供与しました。
一方、ミンダナオ島では1970年代から反政府イスラム勢力の活動が活発で、長期にわたって治安が不安定な状態にあります。このプロジェクトにおいても治安問題が原因となって、数度にわたり工期の延期を余儀なくされました。
しかし、関係者の不断の努力によりプロジェクトは着実に前進し、ついに2003年秋に完了しました。この灌漑事業により、雨期だけでなく乾期にも稲作が可能となり、フィリピン国家灌漑庁によれば地域の農業生産性は3倍に増加しました。
また、フィリピン政府と反政府イスラム勢力の間で和平に向けた話し合いは続いていますが、これまでに195人の兵士がプロジェクト地域での新たな農業に希望を見出し、武装解除し農民として帰還したということです。
このようにこのプロジェクトは、キリスト教徒、イスラム教徒双方合わせて約4,500人の地域の農民の生活の向上に寄与するという農業協力としての観点からだけでなく、地域の治安状況の改善にも寄与するなど、平和構築の観点からも大きく評価されています。アロヨ大統領は、このプロジェクトを「中部ミンダナオの平和と開発のショーケース」と意義付けています。

マリトボグ・マリダガオ灌漑事業