前頁  次頁


本編 > 第III部 > 第2章 > 第1節 > 3.人材育成・知的支援 > (2)知的支援


(2)知的支援

 開発途上国では、経済のグローバル化に伴い日々変化する経済的・社会的環境に自国の体制を適応させつつ経済社会開発を推進するため、各種制度・政策形成支援や諸制度の整備支援といったソフト面での援助需要が高まっています。
 日本は、これらソフト面での高度な援助需要に応えるべく、政策アドバイザーの派遣や法制度整備支援など様々な支援を実施しています。この関連で、貿易・投資、経済・法律など様々な分野における日本の専門家が経済改革等の政策立案を担当する途上国政府関係者との粘り強い対話を積み重ねることで相互に信頼関係を築きながら、途上国の長期的な開発戦略についてその国の実状を十分に踏まえた提言を行うという政策支援型のプロジェクトが進められており、これに併せてワークショップやセミナーを開催し、相手国関係者の行政能力向上と人材育成を図っています。このようなソフト面の支援は、近年、日本独自の知的支援として注目を集めており、日本としても国内体制を構築しつつ積極的に取り組んでいます。
 ASEAN諸国では、1997年7月のアジア経済危機からの完全脱却とともに、域内経済自由化のためのASEAN自由貿易地域(AFTA)における国際競争力の強化が課題となっており、日本は各国の開発状況に応じた政策支援型のプロジェクトを展開しています。例えば、ラオスでは、2002年度までに財政、金融、産業開発、農業・農村開発、貧困削減等幅広い分野において、日本の有識者とラオスの政策当局者の協力により提言を策定するとともに、ラオス側の政策立案能力の向上などを目指して人材育成を実施しました。ミャンマーでは、経済構造調整政策支援として、財政・金融、産業・貿易、情報通信技術(IT)、農業・農村開発の4分野において提言を行っています。その他、インドネシアでも経済政策支援を実施しています(第I部2章1節3-(2)参照)。これらの政策支援型のプロジェクトは、過去にもタイ、ベトナムやチリなどにおいて実施していますが、被援助国の開発に貢献するとともに、両国間の新たな次元における関係構築にも重要な役割を果たしています。
 これら政策支援型のプロジェクトに加え、途上国における財政、金融、産業といった重要政策の立案・策定や制度づくりに携わる人材の育成を目的として、研修員受入、専門家派遣、機材供与及びワークショップの開催などの協力を行っています。2002年度は、JICAを通じ、ベトナム、カンボジアにおいて法整備支援に関する技術協力プロジェクトを実施するとともに、政策支援型専門家を派遣するなど、様々な形で途上国の知的支援を進めています。
 また、貿易関連技術の支援は、貿易投資分野での相互依存関係の高まりの中でWTOを中心とした多角的貿易体制への途上国の参画を支えるために重要です。日本は、2000年の国連貿易開発会議第10回総会(UNCTAD X)において2000年度から5年間で2,500人の貿易関連の人材育成を行うことを表明しましたが、2002年8月のヨハネスブルグ・サミットでは、これを更に拡充し、同期間(2000年度から5年間)で4,500人とすることを表明しています。この関連で、アフリカ諸国を対象としたワークショップをWTOと共催するとともに、エジプトにおいて第三国研修を活用したセミナーを開催しました。
 この他にも、WTOルールの確立と自由貿易の推進を目的としてAPECに加盟する途上国に対するWTO協定への理解促進のための人材育成を行っています。また、2000年に日本の主導でとりまとめた「戦略的APEC計画」に基づき、JICAは、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンにおいて、WTO協定実施能力の開発支援等を目的とした、開発調査「APEC地域WTOキャパシティー・ビルディング協力プログラム」を実施し、分野ごとのセミナーを開催しました。また、日本として特に重視している投資ルールの理解促進のためのセミナーをアジア、アフリカ各国で行っています。


前頁  次頁