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2.国民参加の拡大
(1)国民各層の広範な参加

 近年、国民の間において、ボランティア活動等を通じた社会的貢献の活発化や「国際協力活動に参加してみたい」という意欲が急速に高まっています。新しいODA大綱では、「国民各層による援助活動への参加や開発途上国との交流を促進するため、十分な情報を提供する」ことにより、国民の国際協力に対する要求に応えるとしています。また、政府は「国民からの意見に耳を傾け、開発事業に関する提案の募集やボランティア活動への協力などを行う」とし、援助活動に積極的に参加できる体制を作るとしています。

コラムI-10 アフガニスタンにおける医療協力-カブール市冬季緊急医療事業-

 このような国民参加の拡大の取組は、2002年度から策定作業を進めている対ベトナム国別援助計画の見直しと対スリランカ国別援助計画の策定の作業にも見られます。この作業は、ODA総合戦略会議における議論を踏まえ開始されたものであり、国民参加の具体化とODAの透明性の向上に資するものと考えられます。対ベトナム国別援助計画の見直し作業にあたっては、「オープンネットワーク方式」が採用され、「進行状況は、特に外交配慮上問題のあるものを除いてすべて公開する」こととされ、外務省ODAホームページ内に独自のサイトを設けて、広く意見を集約することとしました。また、計画策定作業にあたっては、日本の在ベトナム大使館が中心となり、JICA及びJBICで構成される「現地ODAタスクフォース」に、JETROを加えた通称「4J」が中心となり、ドラフティング作業を進め、その作業過程において、現地企業関係者やNGOから広く意見を聴取しました。東京においては、関係省庁及び日本の関係NGOから計4回にわたる意見交換を実施しました。学識者との意見交換も実施し、最終案についても事前に広くコメントを依頼しました。こうした作業の中で、関係省庁やNGO関係者から、幅広い国民の意見を反映することができた結果、高い透明性を有する「オープンネットワーク方式」を高く評価する声が寄せられました。また、対スリランカ国別援助計画の策定作業においても、2回にわたる関係省庁との意見交換とともに、現地及び本邦でのNGO、企業関係者、学識者、他援助国・国際機関などから、広く意見を聴取しました。さらに、第2次ドラフト案については、約1か月にわたり外務省ODAホームページで公開し、広く国民からの意見・コメントを求めるなど、同計画策定における国民参加の実現に努めました。
 国民各層からのODAへの参加に関しては、シニア海外ボランティア派遣事業があります。幅広い技術、豊かな経験を有する40歳~69歳の中高年で、ボランティア精神に基づき途上国の発展のために貢献したいという方々が行う活動をJICAが支援するという国民参加型事業です。1990年度に「シニア協力専門家」として発足しましたが、1996年度に青年海外協力隊のシニア版であるボランティア事業として位置づけられ、「シニア海外ボランティア」に名称変更されました。2003年11月末現在、51か国に799名が派遣されています。累積派遣シニア海外ボランティア数は、同年同月末現在1,699名です。
 募集・選考は年2回、春と秋に実施されます。第一次試験では、書類審査、技術審査、第一次健康診断、第二次試験では、面接、語学試験、第二次健康診断が行われます。派遣前研修では、オリエンテーション(2週間)及び語学研修(3週間)が行われます。任期は原則として1年または2年で、相手国の政府関係機関に所属し、指導、助言、調査などを通じ途上国の人材に技術移転を行っています。

自動車のエンジン修理の指導をするシニア海外ボランティア(写真提供:国際協力機構(JICA))
自動車のエンジン修理の指導をするシニア海外ボランティア(写真提供:国際協力機構(JICA))


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