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(4)政策協議の強化
日本の援助は長年被援助国からの要請に基づいて援助を実施するという「要請主義」として特徴づけられてきました。しかし、開発支援が十分な効果を上げるためには、開発途上国に対する援助の内容は、援助国及び被援助国どちらかの一方的な取組で決めるのではなく、双方の密接な政策協議を通じて、互いの援助に対する認識や進め方を共有し、開発を実施していくことが必要です。新しいODA大綱においては、自助努力支援という観点から引き続き途上国からの要請を必要としつつも、ODA政策の立案及び実施にあたっては、「要請を受ける前から政策協議を活発に行」い、「その開発政策や援助需要を十分把握する」としています。同時に、開発途上国の開発戦略の中で日本の援助が十分活かされるよう、「途上国の開発政策と我が国の援助政策の調整を図る」ことが目指されています。
政策協議の強化に向けた取組としては、2003年度に大使館及び、JICA、JBIC現地事務所を中心とした現地ODAタスクフォースを立ち上げることによって、ODAの実施過程における現地の役割・体制を強化したことが挙げられます。この現地ODAタスクフォースが現地政府と活発な政策協議を行うことによって、日本の援助政策と途上国の開発政策の調和が図られ、効率的・効果的な援助の実現を可能にすることを目指しています。2003年4月から11月の間に、24か国で政策協議が実施されています。例えば、ベトナムにおける円借款に係る政策協議においては、日本が重視する制度・政策面への支援として、電力分野への環境対策強化を図るため、電力設備の増強と同時に環境方針の策定・環境管理体制の整備を支援することが新たに案件の目標に組み込まれました。また、同じくベトナムで、国道・省道橋梁改修のための有償資金協力を行う際に、世界銀行、アジア開発銀行との協調により、道路セクターの維持管理体制・能力の向上を目指す援助を同時に供与することになりました。
コラムI-9 JICAの独立行政法人化
また、新しいODA大綱では、被援助国による「案件の形成、実施の面も含めて政策及び制度の改善のための努力を支援する」としており、要請を受ける前から積極的に案件の形成を図るとともに、案件の形成、実施の面も含めて政策及び制度の改善努力の支援を行うとしています。具体的には、援助案件を形成する能力が低い途上国に対し、プロジェクト形成調査等を実施することによって優良案件の発掘・形成を行い、当該国政府に協力の方向付けを行うという業務を遂行しています。また、開発途上国の開発重点分野に精通した企画調整員をJICAから現地に派遣し、相手国関係機関との連携の下、優良案件の発掘・形成などを能動的に行っています。その一方でODA大綱は、被援助国の案件の形成等のための努力について、「そのような努力が十分であるかどうかを我が国の支援に当たって考慮する」ともしています。