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(5)現地機能の強化

 ODAの戦略性・透明性・効率性の向上や説明責任の徹底を図るためには、国別の援助戦略構築における現地の役割の強化が必要であるとの考えのもと、新しいODA大綱では「現地機能の強化」の方針が打ち出されました。新しいODA大綱は、「援助政策の決定過程・実施において在外公館及び実施機関現地事務所などが一体となって主導的な役割を果たすよう、その機能を強化する」としています。そして、そのような努力とともに、現地を中心として、被援助国にとって何が開発上の優先課題になっているのか、その中でもどのようなことに日本の貢献が求められているのかを総合的かつ的確に把握するとしています。その手法として、在外公館や実施機関の現地事務所などにその国についての知見や経験をもつ「外部人材」を登用したり、現地に精通した現地関係者と連携したりすることを通じて現地の経済社会状況などを十分把握すること、そして、そのような仕組みを作ることの重要性が新しいODA大綱において述べられています。
 このような現地機能の強化により日本は援助協調においても積極的な貢献を行いつつあります。近年、被援助国政府のオーナーシップの下に、援助を含む関係機関が協力し策定・実施されるPRSPが、ベトナム、カンボジア、モンゴル、スリランカ、ネパールにおいて完成したほか、他のアジア諸国においてもPRSPの策定が進められています。このようなPRSP策定に併せて、アジアにおいても援助協調の動きが本格化してきました。日本は、こうした援助協調の動きに関して、例えば、ベトナムで政府とPRSPの経済成長戦略拡充における援助協議をリードするなどの積極的な貢献を行ってきており、援助の効率化を目指し従来以上に活発に議論に参加しています。 

■現地ODAタスクフォース
 既に政策協議の強化の説明にて触れたとおり、2003年度より、現地における日本の限られた人的リソースを効率的に活用するため、現地ODAタスクフォースを援助の重要性の高い国を中心として立ち上げることになりました。現地ODAタスクフォースは、大使館で経済協力に携わる者のみならず、JICA及びJBICの現地事務所の所員を主要な構成メンバーとして、当該国に派遣されているJICA専門家、JETRO(日本貿易振興機構:Japan External Trade Organization)や国際交流基金等の政府関係者機関の現地事務所にも必要に応じて参加を求めることとなっています。これまでに、54か国(注)で現地ODAタスクフォースが立ち上がり、主に次のような活動を行っています。

図表I-18 現地ODAタスクフォース

現地ODAタスクフォース


[1]被援助国の開発を巡る動向の把握・分析
 関係者が協力して、被援助国の開発計画やマクロ経済情勢等の分析、重点セクターに関する情報の蓄積・分析、援助アプローチの検討、さらには過去の経済協力に関する評価等を行います。多くの現地ODAタスクフォースでは、月に1~4回程度全体会合を開催し、他に分科会会合を別途開催しているほか、より効果的な援助に向け、日系企業、NGO、国際機関職員を含む邦人関係者との意見交換等も実施しています。
[2]被援助国政府との現地ベースの政策協議の実施
 日頃の情報収集・分析をもとに、各現地ODAタスクフォースは、被援助国政府と政策協議を行います。
[3]国別援助計画の策定・見直しのプロセスへの関与
 2003年度は、スリランカの国別援助計画の策定作業を行うとともに、モンゴル、インドネシア、インド、パキスタンの国別援助計画を策定作業中です。また、ベトナムの国別援助計画については、現在の実情を踏まえ必要な改定作業を行いました。この中で、現地ODAタスクフォースは、骨子案あるいは原案の作成等の作業を行うとともに、作業プロセスを通じて現地の視点からのインプットを行いました。さらに、バングラデシュでは、重点セクター毎の支援プログラムの構築を行っております。
[4]現地援助コミュニティとの連携
 現在、低所得国を中心に、多援助間の援助協調が活発化しています。このような動きに対し、日本は各種援助会合等へ、現地ODAタスクフォース関係者で分担して積極的に参加し、政策提言を行うとともに、日本が重点とするセクターでは、必要に応じて援助会合をリードすることとしています。さらに、これら援助会合における議論を、日本の援助戦略に反映させます。


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